[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第28回 錯体合成から人工イオンチャンネルへ – Peter Cragg教授

[スポンサーリンク]

3年以上本コンテンツは更新が滞っていましたが、ゆっくりと再開いたします。第28回はブライトン大学、薬学/生命分子学科のピーター・クラッグ教授です。クラッグ教授は有機金属化学と計算化学のバックグラウンドを持ち、近年はカリックスアレーン類を人工ナトリウムチャンネルとして用いてその作用機構を解明するなど、超分子化学および生命無機化学の分野において広くご研究されています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

遺伝子レベルで相続された条件―すなわち、私の父が理由です。私が子供の頃、父はさまざまに色づいた試験管内の溶液が混ざり合って起こる変化を見せてくれました。明るいピンク色の溶液を、無色液体を加えることによって「消して」しまいました。酸塩基化学がこんなにも楽しいものだとは!これらすべての体験が私に(能力があるかどうかはさておき)化学に対する強い興味をもたらしました。ノッティンガム大学の学位を取得後、私はアラバマ州タスカルーサにあるJerry Atwoodのグループで学びました。超分子化学の優れた訓練場で、私は化学研究と発見に初めて心から興奮を覚えたのです。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

フィクション作家です―とはいえ、これで収入を得ていくことを私の家族が喜ぶとは思いませんが。私は2冊目の科学書籍の執筆を始め、このプロセスを大いに楽しんでいます。ただ、複雑な分子を平面的に見栄え良くしたり、適切な論文を引いたりする必要がなければ、もっと楽なのですが。

Q.概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

明らかに、最善を尽くすこと――分子レベルの発見を通じて、最終的に全ての人類に良い影響を与えること――によってです。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

錬金術師――特にルドルフ2世裁判所で働くプラハの錬金術士とです。ヨーロッパにおけるルネサンスの間に、哲学的で神秘的な側面を残しつつ錬金術/冶金学から分析科学が勃興しました。この時期に生じた精神に魅力を感じています。しかし、パラケルススは食卓に歓迎しないですね。 「化学の真の活用法は、金ではなく薬をつくることだ」と信じている人は、現代の大学に資金をもたらす第3の潮流を完全に見逃しています。彼らの話に十分慎重に耳を傾ければ、卑金属を金に変える方法を学べるかもしれないわけで、自分の研究資金のためにこれ以上のグラントプロポーザルを書く必要がなくなるのです。実際もし興味があるなら、「Wilson’s Chemistry(1709年版)」の付録を見るといいでしょう。この偉業を達成する方法が沢山載っています。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

私は化合物をほしがっている同僚と、お金のやりとりなしに興味深い共同研究をしています。数日前に、オキサカリックス[3]アレーンの合成反応をいちから仕込み、昨日それを濾過しました。まだまだ自分でもラボワークができることがわかり、大変満足しています。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

ジョイスの「ユリシーズ」がいいです。というのも、今のところ半分ほど読んであるのですが、そんなに頻繁に読めないからです。もしくはC. P.スノウの「The New Men」でしょうか?いや、トーマス・ウォートンの「サラマンダー」かも。「無限の書」の創造が物語の核心なので、しばらくの間読書を続けられるでしょう。

私はグレイトフル・デッド(そう、Dalton Transaction誌1月号の表紙を飾った、私の絞り染めTシャツです)をライブで聴いていましたが、休憩なしに何時間も演奏していたので、シングルCDに収まらないでしょうね。その代わりに、フィルモア・ウエストで1969年に演奏された4夜分の完全版、そして1973年のジャズ・マテリアルから、おそらくはmp3プレーヤーの再生を始めるでしょう。空白時間を埋めるべく、ジョン・コルトレーン(ヴィレッジ・ヴァンガードレコーディング製の「India」と「Spiritual」)と、適切な「本物の」楽器で演奏されたJ・S・バッハのBマイナーなども追加しておくでしょうね。

原文:Reactions – Peter Cragg
※このインタビューは2007年8月31日に公開されたものです。

The following two tabs change content below.
せきとも

せきとも

他人のお金で海外旅行もとい留学を重ね、現在カナダの某五大湖畔で院生。かつては専ら有機化学がテーマであったが、現在は有機無機ハイブリッドのシリカ材料を扱いつつ、高分子化学に

関連記事

  1. 第41回―「クロム錯体のユニークな触媒活性と反応性を解明する」K…
  2. 第13回 次世代につながる新たな「知」を創造するー相田卓三教授
  3. 第18回 出版業務が天職 – Catherine G…
  4. 第10回 ナノ構造/超分子を操る Jonathan Steed教…
  5. 第四回 分子エレクトロニクスへの展開 – AP de…
  6. 第29回 適応システムの創製を目指したペプチドナノ化学 ― R…
  7. 第二回 伊丹健一郎教授ー合成化学はひとつである
  8. 第16回 結晶から結晶への化学変換 – Miguel…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 春日大社
  2. カニッツァロ反応 Cannizzaro Reaction
  3. あなたの分子を特別なカタチに―「CrystalProtein.com」
  4. システインの位置選択的修飾を実現する「π-クランプ法」
  5. 光線力学療法 Photo Dynamic Therapy (PDT)
  6. 化学系企業の採用活動 ~現場の研究員視点で見ると~
  7. アンドレアス ファルツ Andreas Pfaltz
  8. インフルエンザ治療薬「CS‐8958」、09年度中にも国内申請へ
  9. 超高性能プラスチック、微生物で原料を生産
  10. (S,S)-DACH-phenyl Trost ligand

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

第46回―「分子レベルの情報操作を目指す」Howard Colquhoun教授

第46回の海外化学者インタビューは、ハワード・コルクホーン教授です。英国レディング大学の化学科に所属…

長期海外出張のお役立ちアイテム

ぼちぼち中堅と呼ばれる年齢にさしかかってきたcosineです。そんなお年頃のせいでしょうか、…

使っては・合成してはイケナイ化合物 |第3回「有機合成実験テクニック」(リケラボコラボレーション)

理系の理想の働き方を考える研究所「リケラボ」とコラボレーションとして「有機合成実験テクニック」の特集…

有機合成化学協会誌2020年1月号:ドルテグラビルナトリウム・次亜塩素酸ナトリウム5水和物・面性不斉含窒素複素環カルベン配位子・光酸発生分子・海産天然物ageladine A

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2020年1月号がオンライン公開されました。オ…

【日産化学】新卒採用情報(2021卒)

―ぶれずに価値創造。私たちは、生み出し続ける新たな価値で、ライフサイエンス・情報通信・環境エ…

Carl Boschの人生 その5

Tshozoです。だいぶ間が空いてしまいましたが訳すべき文章量が多すぎて泣きそうになっていたためです…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP