[スポンサーリンク]

身のまわりの分子

ディスコデルモライド /Discodermolide

[スポンサーリンク]

discodermolide.gif 

ディスコデルモライド(discodermolide)は、海綿Discodermia dissolutaから単離された、抗ガン作用を示すポリケタイド天然物です。

  • 用途・歴史

1990年にGunasekera、Longleyらによって単離・構造決定されました。[1]

エポチロンやタキソール耐性の細胞にも効果のある抗ガン剤候補の一つとして注目を浴びています。

約400グラムの海綿から7mg(収率0.002%)しかとれないことが最大のネックでした。2004年、ライセンスを譲りうけた米ノバルティス社は臨床試験に供するために、総工程数39、60グラムスケールで人工化学合成を行いました。[2]現在はこの合成品を用いて臨床試験が進められています。

これほどの複雑さをもつ天然物を60グラムもの量、人工合成したということは化学有史以来知られていません。合成化学研究におけるマイルストーン的な出来事です。鎖状化合物の立体化学制御法が実用に耐えうるレベルまで進展しえたことの証明でもあります。

  • 関連文献
[1] Gunasekera, S. P.; Gunasekera, M.; Longley, R. E.; Schulte, G. K. J. Org. Chem. 1990, 55, 4912. DOI:10.1021/jo00303a029
[2] Mitchel, S. J. et al. Org. Process. Res. Dev. 2004, 8, 92, 101, 107, 113, 22. DOI: 10.1021/op034130e

  • 関連書籍
  • 関連リンク

続・天然物のルネサンス (有機化学美術館・分館)

Discodermolide – Wikipedia

Large-Scale Synthesis of (+)-Discodermolide (PDF)

Scaled-Up Synthesis of Discodermolide (C&EN)

The Chemistry and Biology of Discodermolide (PDF)

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. アコニチン (aconitine)
  2. グリチルリチン酸 (glycyrrhizic acid)
  3. フルオキセチン(プロザック) / Fluoxetine (Pro…
  4. トリニトロトルエン / Trinitrotoluene (TNT…
  5. バイアグラ /viagra
  6. フラーレン /Fullerene
  7. 18F-FDG(フルオロデオキシグルコース)
  8. 亜鉛クロロフィル zinc chlorophyll

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 有機半導体の界面を舞台にした高効率光アップコンバージョン
  2. 韓国へ輸出される半導体材料とその優遇除外措置について
  3. ジアルキル基のC–H結合をつないで三員環を作る
  4. Dead Endを回避せよ!「全合成・極限からの一手」⑤(解答編)
  5. 「リチウムイオン電池用3D炭素電極の開発」–Caltech・Greer研より
  6. プレヴォスト/ウッドワード ジヒドロキシル化反応 Prevost/Woodward Dihydroxylation
  7. 米デュポン株、来年急上昇する可能性
  8. 微小な前立腺がんを迅速・高感度に蛍光検出する
  9. 化学反応を自動サンプリング! EasySampler 1210
  10. ガ求愛行動:性フェロモンを解明 東大など

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2007年12月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

カルボン酸β位のC–Hをベターに臭素化できる配位子さん!

カルボン酸のb位C(sp3)–H結合を直接臭素化できるイソキノリン配位子が開発された。イソキノリンに…

【12月開催】第十四回 マツモトファインケミカル技術セミナー   有機金属化合物 オルガチックスの性状、反応性とその用途

■セミナー概要当社ではチタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素等の有機金属化合物を“オルガチッ…

保護基の使用を最小限に抑えたペプチド伸長反応の開発

第584回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 薬学系研究科 有機合成化学教室(金井研究室)の…

【ナード研究所】新卒採用情報(2025年卒)

NARDでの業務は、「研究すること」。入社から、30代・40代・50代……

書類選考は3分で決まる!面接に進める人、進めない人

人事担当者は面接に進む人、進まない人をどう判断しているのか?転職活動中の方から、…

期待度⭘!サンドイッチ化合物の新顔「シクロセン」

π共役系配位子と金属が交互に配位しながら環を形成したサンドイッチ化合物の合成が達成された。嵩高い置換…

塩基が肝!シクロヘキセンのcis-1,3-カルボホウ素化反応

ニッケル触媒を用いたシクロヘキセンの位置および立体選択的なカルボホウ素化反応が開発された。用いる塩基…

中国へ行ってきました 西安・上海・北京編①

2015年(もう8年前ですね)、中国に講演旅行に行った際に記事を書きました(実は途中で断念し最後まで…

アゾ重合開始剤の特徴と選び方

ラジカル重合はビニルモノマーなどの重合に用いられる方法で、開始反応、成長反応、停止反応を素反応とする…

先端事例から深掘りする、マテリアルズ・インフォマティクスと計算科学の融合

開催日:2023/12/20 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の影…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP