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2007年秋の褒章

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政府は2日付で、秋の褒章の受章者778人(うち女性144人)と17団体を発表した。3日に発令される。

芸術文化やスポーツ、学術研究の分野で活躍した人を対象にした紫綬褒章は25人に贈られる。(引用:asahi.com)

日本政府は4月29日(みどりの日)、11月3日(文化の日)を機会に、国家・公共に対して優れた功績を残した人たちに毎年2回叙勲・褒章を与えています。

いくつか種類がありますが、科学技術領域で卓抜した業績をあげた学者に与えられるものは、紫綬褒章(しじゅほうしょう)と呼ばれるものです(Wikipediaへリンク)。2007年紫綬褒章には、2名の化学者が選ばれました。おめでとうございます!以下簡単に紹介したいと思います。

東北大名誉教授(有機ケイ素化学研究)吉良満夫(64)

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(写真:東北大学ウェブマガジン)

 特異な構造をもつ様々な有機ケイ素化合物の合成・物性解明で世界的に著名な教授の一人です。
最近の業績では、Nature誌に報告されたトリシラアレン分子(下図)の合成・結晶構造解析がインパクトのあるものでしょう。炭素からなるアレン分子が直線状分子であるのに対し、シラアレンは幾分折れ曲がった構造を取るそうです。実際つくって分析してみないと、こういうコトは全く分かりません。有機ELなどへの応用が注目されるケイ素ですが、詳細な物性を理解するうえでこのような基礎研究は欠くことのできない位置を占めています。

silaallene.gif
トリシラアレン分子

九州大名誉教授(分子光化学研究)入江正浩(63)

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(写真:Japan Nanonet Bulletin)

 ジアリールエテンという、光によって駆動する分子(下図)を開発されたことで世界的に有名な方です。フォトクロミック材料(有機って面白いよね!色の変わる分子~クロミック分子~もご参照ください)や分子アクチュエーターなど、既存の有機化合物では達成し得ないような、幅広い機能性材料への応用展開が可能とされています。世界中の研究者から注目を集めている、最もホットな分子の一つです。

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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