[スポンサーリンク]

天然物

ユーコミン酸 (eucomic acid)

[スポンサーリンク]

GREEN2013eucomic9.png

ユーコミン酸オイコム酸とも)は、就眠運動するマメ科植物のひとつ、ミヤコグサの葉を開かせる生理活性を持った天然化合物。41グラムのミヤコグサ植物体から136マイクログラムが単離されました。

 

おはようございます

マメ科の他、カタバミ科をはじめ、いくつかの植物は、24時間の周期を持って、夜になると葉を閉じ、昼になると葉を開く、就眠運動をします。この就眠運動は生物時計で制御されており、例えば、大きく経度が異なる地域へ飛行機で鉢植えを移動させれば、わたしたちと同じように時差ボケします。この就眠運動は、種ないし属特異的なシグナル分子によって制御されていると考えられており[2]、いくつかの植物で正体が解明されています。ただし、2013年現在、その作用機構はまだ分子レベルでは解明されていません[3]。

 GREEN2013eucomic.png

ミヤコグサにユーコミン酸(オイコム酸)を投与すると夜でも眠らない

 

ゲノム解読済で変異体資源の豊富なミヤコグサ(Lotus japonicus )でも、葉を開く物質が単離されています。これがユーコミン酸です[1]。本来は葉が閉じるべき夜中に投与すれば葉が開いたままになり、ミヤコグサにとって「眠ってはダメだ」と目覚ましになります。ユーコミン酸は不斉点をひとつ持ち、立体異性体にはこの生理活性がありません[1]。一方、葉を閉じる物質の存在もまた示唆されているものの、ミヤコグサではまだ単離されてはいません。

 

  • ユーコミン酸の分子モデル

GREEN2013eucomic.gif

 

  • 参考文献

[1] "(R)-Eucomic acid, a leaf-opening factor of the model organism, Lotus japonicus." Masahiro Okada et al. Tetrahedron 2009 DOI: 10.1016/j.tet.2008.11.097

[2] "Chemical Basis of Plant Leaf Movement." Minoru Ueda et al. Plant Cell Physiol. 2007 DOI: 10.1093/pcp/pcm060

[3] "Enantiodifferential Approach for the Detection of the Target Membrane Protein of the Jasmonate Glycoside that Controls the Leaf Movement of Albizzia saman." Yoko Nakamura et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2008 DOI: 10.1002/anie.200801820

Avatar photo

Green

投稿者の記事一覧

静岡で化学を教えています。よろしくお願いします。

関連記事

  1. ルテイン / lutein
  2. シスプラチン しすぷらちん cisplatin
  3. 虫歯とフッ素のお話② ~歯磨き粉のフッ素~
  4. ペラミビル / Peramivir
  5. カフェイン caffeine
  6. アピオース apiose
  7. フルオキセチン(プロザック) / Fluoxetine (Pro…
  8. ブラシノステロイド (brassinosteroid)

注目情報

ピックアップ記事

  1. 研究助成情報サイト:コラボリー/Grants
  2. 官能基化オレフィンのクロスカップリング
  3. リッター反応 Ritter Reaction
  4. ケムステ海外研究記 まとめ【地域別/目的別】
  5. 13族元素含有ベンゼンの合成と性質の解明
  6. ブレデレック試薬 Bredereck’s Reagent
  7. ノーベル化学賞を受けた企業人たち
  8. 一次元の欠陥が整列した新しい有機−無機ハイブリッド化合物 -ペロブスカイト太陽電池の耐久性向上に期待-
  9. 微少試料(1 mg)に含まれる極微量レベル(1 アトグラム)の放射性ストロンチウムを正確に定量する分析技術開発!
  10. 蛍光異方性 Fluorescence Anisotropy

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2013年7月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

MDSのはなし 骨髄異形成症候群とそのお薬の開発状況 その1

Tshozoです。今回はかなり限定した疾患とそれに対するお薬の開発の中身をまとめておこうと思いま…

第42回メディシナルケミストリーシンポジウム

テーマAI×創薬 無限能可能性!? ノーベル賞研究が拓く創薬の未来を探る…

山口 潤一郎 Junichiro Yamaguchi

山口潤一郎(やまぐちじゅんいちろう、1979年1月4日–)は日本の有機化学者である。早稲田大学教授 …

ナノグラフェンの高速水素化に成功!メカノケミカル法を用いた芳香環の水素化

第660回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院理学研究科(有機化学研究室)博士後期課程3年の…

第32回光学活性化合物シンポジウム

第32回光学活性化合物シンポジウムのご案内光学活性化合物の合成および機能創出に関する研究で顕著な…

位置・立体選択的に糖を重水素化するフロー合成法を確立 ― Ru/C触媒カートリッジで150時間以上の連続運転を実証 ―

第 659回のスポットライトリサーチは、岐阜薬科大学大学院 アドバンストケミストリー…

【JAICI Science Dictionary Pro (JSD Pro)】CAS SciFinder®と一緒に活用したいサイエンス辞書サービス

ケムステ読者の皆様には、CAS が提供する科学情報検索ツール CAS SciFind…

有機合成化学協会誌2025年5月号:特集号 有機合成化学の力量を活かした構造有機化学のフロンティア

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年5月号がオンラインで公開されています!…

ジョセップ・コルネラ Josep Cornella

ジョセップ・コルネラ(Josep Cornella、1985年2月2日–)はスペイン出身の有機・無機…

電気化学と数理モデルを活用して、複雑な酵素反応の解析に成功

第658回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院 農学研究科(生体機能化学研究室)修士2年の市川…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP