[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

ワインのコルク臭の原因は?

[スポンサーリンク]

 最近ワイン飲んでますか?筆者は全く飲んでません。嫌いなわけでなく、どちらかというと好きなのですが、最近あまり飲む機会がないので。とはいえどワインはヨーロッパはもちろん米国でも非常に人気で、筆者の住んでいる地域もワインが有名であるので、様々なワインがスーパにも並んでいます。

さて、ワインと言えばコルク、この2つはセットですよね。もちろん長期間の保存に密封するものとして適切であるだけでなく、ワインの豪華さを際立たせる、また、芸術的なパフォーマンスを披露するための大事な小道具でもあります。先日ふらりとニュースを見ていたら、その事実が変わってきているようなのです。

その原因としてはコルクによりワインがカビ臭くなる場合があるからだそうです。これをブジョネ(コルク臭)と呼び、おいしいはずのワインを一転してひどい飲み物にします。どうやらコルクで打栓したボトルの5~6%に発生していると言われており、コルク業者は良質なコルクを選んでいるのですが、完全には防げないということなのです。

ところで、そのコルク臭どうして発生するのでしょうか?どうやら、以下に示す化合物A及びその類縁体が問題であることは明らかであるようですが、以下のようないくつかの説があるようです。

  1.  収穫したコルクの表層部分をコルク栓に成形後、雑菌と漂白の目的で次亜塩素酸ナトリウム水溶液で処理することで、コルク栓に残留した塩素が、瓶熟成期間中、ある種のカビによって一部ある化合物Aに変換する
  2. ある化合物Bが微生物によってメチル化されて出来た物質A。その化合物Bは以前は木材の保存のためによく利用されていた。コルク樫の森でも散布や塗布が盛んに行われ、それが残存してコルク中に化合物Aとして存在するというのが最も大きな原因
  3. コルク中に含まれるリグニンが分解されて化合物フェノールとなり、次亜塩素酸で漂白をする際にクロロ化されて化合物Bが生成する。コルク製造、貯蔵、輸送の過程で汚染された微生物によってメチル化されて化合物Aとなると考えられています。
  4. 輸送に用いられる船倉内で、壁や床に塗料として利用したBやAがコルクに移行した。

コルク集の原因である化合物Aは2,4,6-トリクロロアニソール(TCA)、化合物Bは 2,4,6-トリクロロフェノールです。それでは、これらの生成を抑えるためにはどうしたらよいでしょうか?

TCA.gif

答えは簡単です。コルクの使用をやめればよいわけです。そのため、最近疑似コルクやスクリューキャップ制のワインがかなり広まっています。ただコルクから得られるワインの高価や豪華であるというイメージを損なう可能性があるのでいまままで積極的に用いられることはありませんでした。しかし、2000年にある高級ワイン製造会社が一斉にあるワインをスクリューキャップに変えたことで、現在その様子がかわりかなりの量のワインがスクリューキャップに変わってきているようです。

いままで高級といわれるワインを変えればイメージはおのずと変わっていくという単純な発想のおかげで、コルク臭の発生割合は減少してきているようです。

さて、あなたはそれでもコルク派でしょうか、それともスクリューキャップ派?

関連リンク

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. アンモニアを用いた環境調和型2級アミド合成
  2. 特許の効力と侵害
  3. as well asの使い方
  4. ゴールドエクスペリエンスが最長のラダーフェニレンを産み出す
  5. 「鍛えて成長する材料」:力で共有結合を切断するとどうなる?そして…
  6. 有機光触媒を用いたポリマー合成
  7. ポンコツ博士の海外奮闘録⑪ 〜博士,データをとる〜
  8. 芳香環交換反応を利用したスルフィド合成法の開発: 悪臭問題に解決…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 「日本研究留学記: オレフィンの内部選択的ヒドロホルミル化触媒」ー東京大学, 野崎研より
  2. 私がケムステスタッフになったワケ(5)
  3. 書物から学ぶ有機化学 2
  4. ケムステ版・ノーベル化学賞候補者リスト【2016年版】
  5. 1-ヒドロキシタキシニンの不斉全合成
  6. 第47回「目指すは究極の“物質使い”」前田和彦 准教授
  7. 半導体領域におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用-レジスト材料の探索、CMPの条件最適化編-
  8. 根岸クロスカップリング Negishi Cross Coupling
  9. 化学研究で役に立つデータ解析入門:回帰分析の応用編
  10. 牛糞からプラスチック原料 水素とベンゼン、北大が成功

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2007年8月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

大正製薬ってどんな会社?

大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

光と水で還元的環化反応をリノベーション

第609回のスポットライトリサーチは、北海道大学 大学院薬学研究院(精密合成化学研究室)の中村顕斗 …

ブーゲ-ランベルト-ベールの法則(Bouguer-Lambert-Beer’s law)

概要分子が溶けた溶液に光を通したとき,そこから出てくる光の強さは,入る前の強さと比べて小さくなる…

活性酸素種はどれでしょう? 〜三重項酸素と一重項酸素、そのほか〜

第109回薬剤師国家試験 (2024年実施) にて、以下のような問題が出題されま…

産総研がすごい!〜修士卒研究職の新育成制度を開始〜

2023年より全研究領域で修士卒研究職の採用を開始した産業技術総合研究所(以下 産総研)ですが、20…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP