[スポンサーリンク]

一般的な話題

2つのアシロイン縮合

[スポンサーリンク]

 

  アシロイン縮合といえば2つのエステルが金属ナトリウム存在下,縮合してアシロインが生成することはよく知られています。かの有名な有機人名反応をまとめた著書 “Strategic Applications of Named Reactions in Organic Synthesis” においてもこの反応がアシロイン縮合として紹介されています。

2015-06-20_00-22-40

 [amazonjs asin=”0124297854″ locale=”JP” title=”Strategic Applications of Named Reactions in Organic Synthesis”]

 そんなアシロイン縮合ですが,StetterらがOrganic Synthesis誌で紹介しているアシロイン縮合1) は少し変わっています。それによると,2つの脂肪族アルデヒドを塩基存在下,チアゾリウム塩で処理することでアシロインを合成しています。論文タイトルもズバリ

Acyloin Condensation by Thiazolium Ion Catalysis: Butyroin

であり,しっかり “アシロイン縮合” と記載されています。

2015-06-20_00-19-42

 

Stetterらが報告したこのアシロイン縮合,もともとはベンゾイン縮合の改良版ですが,従来のシアン化物イオンやチアミンを触媒とする方法では,ベンズアルデヒドなどの芳香族アルデヒドにしか適用できなかったのです。それを触媒量のチアゾリウム塩をもちいて、脂肪族アルデヒドの縮合に適用させたことで,拡張型ベンゾイン縮合,すなわちアシロイン縮合となりました。

縮合させる方法も原料もまったく異なる2つのアシロイン縮合,いずれの方法も「生成物がアシロイン」なのでアシロイン縮合ということですが,少し紛らわしいですね。そんな”アバウトな”アシロイン縮合,そのアバウトさを象徴するエピソードがもう1つ… [続きを読む

 

*本記事は東京化成工業様からの寄稿記事(一部改変)です。続きは[続きを読む]をクリックしてお読みください。

 

関連文献

1) H. Stetter, H. Kuhlmann, Org. Synth. 1984, 62, 170. DOI: 10.15227/orgsyn.062.0170

 

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 水素原子一個で強力な触媒をケージング ――アルツハイマー病関連…
  2. 大学の講義を無料聴講! Academic Earth & You…
  3. いざ、低温反応!さて、バスはどうする?〜水/メタノール混合系で、…
  4. ポルフィリン化学100年の謎を解明:calix[3]pyrrol…
  5. 2017年ケムステ人気記事ランキング
  6. Reaxys Prize 2011発表!
  7. アルツハイマー病の大型新薬「レカネマブ」のはなし
  8. 計算化学:基底関数って何?

注目情報

ピックアップ記事

  1. CASがSciFinder-nの新しい予測逆合成機能を発表
  2. ウルマンエーテル合成 Ullmann Ether Synthesis
  3. 赤外線の化学利用:近赤外からテラヘルツまで
  4. ジョン・ハートウィグ John F. Hartwig
  5. 研究テーマ変更奮闘記 – PhD留学(前編)
  6. 第18回次世代を担う有機化学シンポジウム
  7. アメリカで Ph.D. を取る -Visiting Weekend 参加報告 (後編)-
  8. ジャン=マリー・レーン Jean-Marie Lehn
  9. イナミドを縮合剤とする新規アミド形成法
  10. 島津製作所、純利益325億円 過去最高、4年連続で更新

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2013年10月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP