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Communications Chemistry創刊!:ネイチャー・リサーチ提供の新しい化学ジャーナル

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怒涛の勢いでジャーナル業界を席巻しているネイチャー・リサーチ。ほとんどのジャーナルで成功を収め、化学分野でもとっておきの論文はNature Nature Chemistry Nature Communications (or J. Am .Chem. Soc.) といった1つの流れがあることは事実です。

さて、2018年にまた新たな化学分野のオープンアクセスジャーナルがネイチャー・リサーチから創刊されました。

タイトル名は「Communications Chemistry」。

王立化学会のChemical Communications (Chem Commun)と完全に間違えそうな名前ですが’(略称は Commun Chem??)、化学全分野を対象とした専門誌です。

今回はこの新ジャーナルについて少し説明してみましょう。

Communications Chemistryとは

ジャーナルのウェブサイト(日本語版はこちら)によると本誌は

Communications Chemistry Nature Researchが提供するオープンアクセス・ジャーナルで、化学の全分野における高品質な論文・総説・論評を出版します。本ジャーナルで出版される論文は、特定の研究分野に新たな化学的知見をもたらす重要な進展情報です。また、専門分野にかかわらず、全ての化学者にとって重要な課題を審議するフォーラムを提供することを目指しています。(引用:Communications Chemistry日本語サイト)

とのこと。つまり化学専門誌です。「Nature」がタイトルから消えてしまいましたが、1月創刊のCommunications Biology, 2月創刊のCommunications PhysicsがあることからNature Coomunicationsの各分野の専門誌であることが伺えます。Natureに対するNature Chemistryみたいなものですね。

他のNature Research出版誌との関係

同社から出版されている2つのオープンアクセスジャーナル・フラッグシップであるNature CommunicationsならびにScientific Reportsとの関係性に関して、ジャーナルのウェブサイトに記載がありました。

Communications Chemistry は、Nature Communications を補完する役割を担っています。すなわち、化学において比較的専門性の高いコミュニティーが注目する可能性のある重要な進展情報を出版する一方、広範な影響度・重要性を考慮したNature 関連誌(Nature Communications を含む)の高度な編集基準を満たさない進展情報を提供しています。”

Nature Communicationsを含む、Nature およびNature 関連誌はその編集過程において、影響度と重要度に関する最高レベルの審査基準を採用しており、特定分野の専門家にとって重要な進展情報を出版します。

Scientific Reportsは、厳密な査読プロセスで裏付けられた、方法論、分析、倫理面で信頼性のあるオリジナル研究を出版するものです。

Communications ジャーナルは、比較的専門性の高いコミュニティーが注目する可能性のある重要な進展情報を出版する一方、広範な影響度・重要性を考慮したNature 関連誌の高度な編集基準を満たさない進展情報を出版します。(引用:Communications Chemistry日本語サイト

Nature Communications を補完する役割」というのが目的ですね。今までの流れからすると、科学的にはもう一息だけど、化学的には面白いという論文をはじかないで、取り込もうとする流れになのでしょう。実際に、

論文が1つのNature・Nature 関連誌により不受理となった場合、自動原稿転送サービスを利用して、Communications Chemistry に投稿することができます

とあります。対抗馬はIF云々はおいておいて、化学総合誌(J. Am. Chem. Soc.; Angew. Chem. Int. Ed.; Chem. Commun. Chem Eur. J. )ということになります。ただし異なるのは完全オープン・アクセスだということ。そうなるとやっぱり価格が気になります。

気になる価格は?

ずばり、2570 USドルだそうです。日本円にすると(1ドル=106円計算)、272,420円

これを高いとするか安いとするかは人それぞれだと思いますが、やっぱりオープンアクセスは高いですね。Nature Communications約60万円(これはめちゃ高い)に比べると安いですが、オープンアクセス全盛の時代になったら、研究費でも論文投稿料をかなり計上しないといけなくなります。ちなみに上記価格は、「2018年末までにアクセプトされた論文に適用」とあるため、割引価格であると思われます。はあ、高い。

閉架休題。折角なので肝心の掲載されている論文をみてみましょう。2018年3月8日に掲載されたばかりのようです。オープンアクセスのいいところは、当たり前のことですが、創刊時期しかみられないということはなく、いつでも読めることです。読者には優しい。

創刊号を覗いてみる

折角なので日本人著者のものをみてみましょう。現在掲載されている日本人著者の論文は2つとなります。

1つめは、東大の山内薫教授らによる論文。

  • Coherent vibrations in methanol cation probed by periodic H3+ ejection after double ionization
    二重イオン化後の周期的H3+放出によってプローブされたメタノールカチオンにおけるコヒーレント振動 DOI:10.1038/s42004-017-0006-7

炭化水素分子が強いレーザー場にさらされると、3原子水素分子イオンH3+が放出されます。今回彼らは、数サイクル強レーザーパルスを用いたポンプ–プローブ法によって、メタノールジカチオンからのH3+放出を高い時間分解能で観測し、H3+の収量が長い時間にわたって周期的に増加することを見いだしたそうです。

メタノールジカチオンから放出されたH3+の収量の38 fs 毎の周期的な増加 (出典:Communication Chemistry)

 

もう一つは、大阪大学の原田明特任教授。

  • Visible chiral discrimination via macroscopic selective assembly
    巨視的な選択的集合化による可視的キラル識別 DOI: 10.1038/s42004-017-0003-x

個々の分子から巨視的物体へのキラリティー転写や巨視的スケールでのキラリティー認識は、多くの実際的応用が見込まれており、キラル研究界にとって重要な課題です。今回彼らは、β-シクロデキストリンで修飾したポリアクリルアミド系ゲル(βCD-ゲル)とDまたはL-トリプトファンで修飾したポリアクリルアミド系ゲル(ホモキラルなD-またはL- Trp-ゲル)を用いた巨視的な集合化による可視的キラル認識方法について報告しています。

巨視的な選択的集合化による可視的キラル識別 (出典:Communication Chemistry)

 

創刊号で気合の入った論文が多いと思うので、ぜひ閲覧してみることをおすすめします(論文一覧はこちら)。

Nature Researchの化学関連ジャーナルのケムステ記事

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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