紫外線に迅速応答するフォトクロミック分子

May
11
2009
Author: cosine[Edit ] View: [4626]  
Category:論文
はてなブックマーク - 紫外線に迅速応答するフォトクロミック分子 このエントリーを含むはてなブックマーク この記事をGoogle Bookmarksに登録する この記事をYahoo!ブックマークに登録する この記事を含むlivedoorクリップ この記事をnewsingに登録する この記事をChoixに登録する この記事をBuzzurlに登録する この記事をイザ!ブックマークに登録する この記事をFC2ブックマークに登録する この記事をニフティクリップに登録する この記事をdel.icio.usに登録する






UV_photochromic_1.gif
A Fast Photochromic Molecule That Colors Only under UV Light
Kishimoto, Y.; Abe, J. J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 4227. doi:10.1021/ja810032t 

既にあちこちで話題になって久しいですが、青山学院大学・阿部二郎准教授らによって開発された分子です。この分子は紫外線(UV)を照射することで呈色し、照射を止めると色が消えるというフォトクロミズム現象を示します。


 


【スポンサード広告】


 原理は1960年に報告されていた分子[1]ヘキサアリールビイミダゾール(hexaarylbiimidazole;HABI)が、2,4,5-トリフェニルイミダゾリル(2,4,5-triphenylimidazolyl; TPI)ラジカルへと変換する過程でおきるフォトクロミズムに基づいています。すなわちUV照射によりHABIの結合が切断され、2分子のTPIラジカルが生成し、溶液中で紫色を示します。これらは熱的条件で逆反応を起こし、もとのHABIに戻ることができます。しかしこの再結合過程は相当に遅い(t1/2  ~ 数分)ことが知られています。立体反発ゆえ反応点同士が近づきにくいためです。結局ラジカルという高反応性化学種が引き起こす分解過程がメインとなってしまい、繰り返し用いることは困難とされていました。

UV_photochromic_2.gif


 阿部らはナフタレン骨格にHABI分子を縛り付けた冒頭のような1st generation分子を設計し、再結合過程を加速させる(t1/2 = 179 msec)ことに成功しました。またこれにより、繰り返しのUV照射にも耐える分子にもなりました。

 この1st generation分子は、2008年にOrg. Lett.誌に報告[2]されてすぐさま、多方面から大変な反響を呼びおこしました。その火付けとなったのが以下の動画です。分子溶液が紫外線照射によって緑色に変化し、照射を止めると即座に無色になる様子がクリアに分かります。ビジュアル的に相当なインパクトのある、分野内外・研究者かどうかを問わずに目を引くムービーです。





 最近になって彼らは、更なるチューニングを施した2nd generation分子をJ. Am. Chem. Soc.誌に報告しました。今度はナフタレン骨格ではなく、より強固なシクロファン骨格にHABIを縛り付けてあります。

 これにより再結合過程がさらに加速され(t1/2 = 33 msec)、1st generation分子での実験時に見えていた残像が、全く見えなくなりました。動画を見れば分かりますが、かなりくっきりとした形でスポットが観測されており、明らかに改善されていることが見てとれます。


UV_photochromic_3.gif


 


 彼らはさらに実験を重ね、この分子が固体状態、ポリマーフィルムにドープした状態、結晶状態でもフォトクロミズム挙動を示すことを明らかにしています。フィルム状にしたものは10000回の光照射を経た後でも変わらず機能したそうで、この分子が優れた安定性を誇ることが実証されています。

 こういった化合物は、ディスプレイや光学ストレージデバイス、太陽光に応答して色が変わるサングラス、カーテンなどへの塗布による自動調光家具など、無数の応用範囲が期待されています。この日本発の画期的技術が、今後どういう進展を見せていくのか、期待は膨らむばかりですね。

【追記2010.7.2】 新たなデモムービーが阿部研究室より先日公開されました。フィルムドープ型の光応答は必見です! さらに最近、関東化学より本化合物の市販が始まったそうです。(カタログPDF)


  • 関連論文

[1] Hayashi, T.; Maeda, K. Bull. Chem. Soc. Jpn. 1960, 33, 565.
[2] Fujita, K.; Hatano, S.; Kato, D.; Abe, J. Org. Lett. 2008, 10, 3105. doi:10.1021/ol801135g

  • 関連リンク

 色の変わる分子~クロミック分子~ (有機っておもしろいよね!)

紫外線で素早く変色する分子 (有機化学美術館)

動画付きの有機化学系論文3報 (気ままに有機化学)

紫外線に反応して高速に発消色する分子を開発 (photochromism)

青山学院大チームによる「紫外線に即座に反応する化合物」動画 (WIRED VISION)

紫外線に反応して色が変化する物質、将来は光学ストレージのスイッチに? (slashdot.jp)

紫外線に反応して高速に発消色する有機分子を開発 (青山学院大学トピックス) 阿部准教授のインタビューあり

高速発消色フォトクロミック化合物 (関東化学:PDF) 阿部准教授の開発したフォトクロミック化合物の市販品

青山学院大学 阿部研究室


関連記事

化学者のつぶやき -Chem-Station-内の関連する記事:2件

このページをTwitterでつぶやくもしくはReTweetする

つぶやく場合は青、ReTweetしていただける場合は赤をクリックしてください!
Twitter-blue-32 Twitter-red-32

この記事のTwitterでのつぶやかれ


この記事を評価してくださいませんか?皆さんのコメントもお待ちしております!!

評価は下の星にマウスをあわせてドラッグしてください。1~5段階です。コメントはWrite a reviewをクリックして入力してください。ユーザー登録不要です。






ホーム > 論文 > 紫外線に迅速応答するフォトクロミック分子


« ベンゼン環記法マニアックス | トップページ | "匂いのゴジラ"の無効化 »

サイト内検索


RSSを直接登録

はてなRSSに追加

Add to Google

Subscribe with livedoor Reader

Bloglinesで閲読登録

My Yahoo!に追加

新着記事


カテゴリ

CSツイッター


化学セミナー情報

リチウムイオン電池の特許動向から見た今後の開発と展望

化合物太陽電池の開発・作製プロセスと 市場展開の可能性

低分子ゲル化剤の分子設計、合成法と応用技術



おすすめ書籍

2009年10月人気化学書籍ランキング

2009年10月人気化学書籍ランキングの続きを読む