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ケムステしごと

これからの研究開発状況下を生き抜くための3つの資質

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技術コンサルティングを手掛ける会社の社長とお話した際、その会社のクライアントのであるメーカーの研究開発部門が抱えている課題について興味深い話を聞いた。社長いわく、日本の技術者は「技術の横展開」について軽視せずに取り組むべきだという。

たとえば、ある老舗の機械部品メーカーは主に自動車や航空機用の部品においてニッチトップを誇るが、既にその分野での技術レベルは成熟期を迎えている。

そのため「とにかく技術を深化させていきたい」という研究開発部門と、「これまでの技術を応用してビジネスにしたい」という経営サイドで深刻な対立があったそうだ。

そこでこの社長は経営サイドと共に策を講じ、成長産業への技術応用の具体的な提案を行うことになった。研究開発部門にその必要性と意義を理解してもらうためだ。

『技術応用』も立派な『研究開発』だという意識が技術者にも求められています。たとえば宇宙開発技術。国も企業も多額の資金を費やして研究した技術を、どうしたら横展開できるか知恵を絞りました。その結果、衛星搭載の光学機器技術を精密手術用の高解像度の立体視顕微鏡に応用したり、衛星の揺れの制御技術を海上でパーティーを行うクルーザー向けの波の揺れ制御に応用したりと、ビジネスとして好例が多くあります。技術者がただ自らの知的好奇心のままマーケットニーズがない方向へ技術を深堀りしていくと、企業は次の時代を生き残れません。技術応用の方向に目を向け、アイデアを出して舵取りをしていくというのは、今後の技術者に求められる資質でないでしょうか」。

製品のライフサイクルが短くなり、著しい技術革新が進んでいる今、何十年も1つの技術や研究をし続けるというのは、現実的ではない。劇的に変化している研究開発状況の中、上記のような「ビジネス感覚を備えた技術者」へのニーズは高い。

実際にそうした能力のある方は、研究推進やプロジェクトリーダーなどで活躍されているが、彼らの話を参考にしながら、その習慣についてまとめてみた。

1.別分野の研究者や、別部署との接点を積極的に持っている

私たちは同じような価値観やバックグラウンドを持つ人たちと話すと心地よさを感じ、そのコミュニティの常識がスタンダードであるかのように感じてしまう。研究者でいうと、同じ研究室、近い研究分野だと知っている教授や、関心のあるテーマで盛り上がり、共感しやすい。

ただ、技術の応用やビジネスを考えたときに、新しいインスピレーションやアイデアを得るには、積極的に全く別のジャンルの人と会うことをオススメしたい。

学生であれば他学部の講義で面白いと思った教授や友人にアイデアを見てもらうとか、気になる企業の研究職以外で働いているOBを紹介してもらうとか、方法はいくらでもある。

社会人であれば経営戦略や営業などを担当する別職種でこれはと思う人と接点を持ち、定期的にランチに行く機会があれば十分に実現可能だと思う。異なる種類の価値観に日常的に触れ、アイデアをブラッシュアップしている人は、企業にとって非常に魅力的であると思う。

2.自分のアイデアへの意見を、積極的に受け入れられる

一生懸命考えた提案を否定されるのは面白くない。あの人は分かってない、レベルが低い、こんな会社でやっていられない云々・・・、負の感情が抑えられず、同僚とやけ酒というのはどの会社でもある光景な気がする。

その中で意固地にならず、成長している人は、何が具体的に良くないと思ったかを徹底的にヒアリングする。自分の考えのどこに不足があったのか、考え方に偏りはないか、伝え方に問題があるのか、納得するまで聞いている。

そうした繰り返しがいずれ人を動かすビジネスに繋がっていくように思う。活躍している人を見ていると、年下であっても別部門の人であっても、「こういうことを考えているのだけれど、どう思う?」と、ごく自然に異なる意見や批判を聞きにいっているのだ。

その方いわく、「自分の中で温めすぎるとアイデアが腐る」のだそうで、「思いついたことはどんどん話す」ようにしているという。

彼らは習慣的に自分の盲点を指摘する相手をリスペクトし、前向きな批判を求めている。

3.迷った時は、苦労をする方の道を選ぶ

世界的な技術革新のスピードが速さ、資金面の課題解決のため、外部と連帯して研究開発を行うというのは今後ますます増えていくと予測される。技術応用や新規事業など、これまで社内では取り組まなかった分野や業界への進出することもある。

大企業がベンチャー・スタートアップに投資したり、大学との連携、複数企業がコンソーシアムを組んで開発をしたり、社外の複数の関係者を巻き込んだプロジェクトを推進していく必要がある。

全てが社内で完結していれば、上層部の反応、稟議にかかる時間、キーマンの特性など、ある程度の障壁は予測がつくだろう。しかし、社外となると不測の事態もさらに増える。

たとえば、共同開発契約を進めていた大学と知財関係ではなしがまとまらず、研究の着手が大幅に遅れるとか、提携先の企業に外部資金の運用に詳しい人材がおらず、予算関係の書類の不備で思わぬストップがかかるとか、大規模なプロジェクトの推進は本当に骨が折れる。

ただ、このような流れは今後も続くため、一通りの苦労や失敗を経験し、そこから学ぶことができれば、他の企業にとっても欲しい人材になることは間違いない。迷ったら苦労する方の道を選べというが、楽して何かを成し遂げた人を見たことがない。

まとめ

これからの研究開発状況下を生き抜くための3つの資質

1.別分野の研究者や、別部署との接点を積極的に持っている

2.自分のアイデアへの意見を、積極的に受け入れられる

3.迷った時は、苦労をする方の道を選ぶ

[文]太田 裕子(おおた ひろこ) [編集] LHH転職エージェント(アデコ株会社)

「井の中の蛙大海を知らず」「良薬は口に苦し」「損して得取れ」ということでしょうか。

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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