[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

化学反応を自動サンプリング! EasySampler 1210

[スポンサーリンク]

 

自動でサンプリングして化学反応を追跡できる装置 EasySampler 1210を紹介します。無人化促進のみならず、この装置でないとできない化学反応のユニークな追跡法に注目です。

 

「どんな条件で最も効率よく目的の化学反応が進行するか?」

化学によるものづくりの基本ですね。例えば、ある条件では反応が早く途中から副生成物が生じてしまうかもしれない。ある反応は非常に遅くいつ終わるのかわからない。温度をかけると反応が効率よく進行するが、生成物の分解も進行する。

などよくある話です。望みの反応を最も効率よく進行させるために、すなわち最適反応条件をみつけるためには、化学反応のインライン・オフライン分析が必須となります。

そこのあなたはどんな分析を行っていますか? もっとも簡単なチェック法はやはりTLCですよね。大変便利ですが、定性的な分析法であり、定量は困難です。React IRなどでモニタリングをしてインライン分析する手法もあります。すべての反応に用いることができるわけではないですが、便利ですよね(高価ですが)。

ただやっぱり反応容器から少しサンプルを採取して、それをHPLCなりGCをつかいオフライン分析で定量するというのが現実的だと思います。ある一定時間でのサンプリングめんどくさいですね。忘れてしまうかもしれません。サンプル採取で半奥羽容器を開放することで、問題がでる反応があるかもしれません。

そんなときに便利なのが、メトラー・トレドから発売されているEasy Sampler 1210。大変単純な装置ですが、化学反応の無人かつ定期的なサンプリング(オフライン分析)を実現してくれます

今回はこの装置について、デモを行ってみたのでそのデモ動画とともにこの装置を紹介したいと思います。

デモ動画を御覧ください

いつもながらオンラインデモをおこなってみました。こういうのが簡単にできるようになったは新型コロナのおかげですね。非常に簡潔かつ丁寧に説明していただきました。動画をみればどんな装置か一目瞭然だと思います。

Easy Samplerの構成・プローブ形状・特徴まとめ

動画をみてわかっていただけたと思いますが、一定時間にサンプルを取り続けるだけの装置です。だけというとマイナスの意味があるかもしれないですが、反応を阻害せずにサンプルを採取できる装置は他にはありません

装置の構成は以下のとおりです。3本の溶媒ボトルにそれぞえれ、反応溶媒、クエンチ溶媒、希釈溶媒をいれ、サンプリングプローブを使ってサンプルを採取します。サンプリングの間隔の指定や制御はタッチスクリーンで行います。

 

このサンプリングプローブが秀逸。反応溶液をサンプリングするので、「吸う」かと思いきや、どちらかというと「すくう」に近いです。サンプリング時間になるとプローブの先から下図のようなポケットが登場します。ここにサンプルを「すくい」、ポケットがまたプローブに内蔵されます。ここで、クエンチ溶媒によってクエンチされて、希釈溶媒で、バイアルに押し出されます。その後、また反応溶媒で置換されるので、コンタミの心配がありません。この部分が実はかなり先端技術でして、特許を多数取得しているところだそうです。

ここでEasy Samplerの特徴をまとめてみました。

  • 再現性高くサンプルをとれる:嫌気実験や毒性が高い反応、加圧下でも懸濁溶液でも問題なし
  • 自動的に無人でサンプリングしてくれる
  • HPLC用前処理を高品質にできる(同じ濃度で調整もできる)
  • 高品質で完全な不純物の追跡データを取得できる 

詳しくは動画をみていただければわかると思いますので、ぜひ動画を御覧ください。

こんなとき使えるのでは?

反応例を紹介してくれました(ファイザー社提供)。いまでもエーテルの合成法によく使われるウルマン反応です。アリールブロミドと、フェノール誘導体を、ヨウ化銅、配位子、炭酸セシウムをいれて、85℃、トルエン中で撹拌します。以下の図のように、懸濁した溶液になるんですね。これを「吸う」のはなかなか難しい。真っ黒の溶液なので何が起こっているかわからず、反応終了までに30時間ほどかかるので、終夜反応させ、最適時間がわからない状態でした。

そこで、登場したのがEasy Sampler。この装置をセットし終夜、1時間ごとにサンプルを採取し、その結果をUPLCで確認しました。その結果、徐々に反応が進行していき、おおよそ18時間ぐらいで反応が頭打ちになること。さらにそこから副生成物が増えていくことがわかりました(下図)。この1回の実験で反応の最適時間とその理由を決定することができたわけです。

興味があったら問い合わせてみよう

というわけで、今回は自動サンプリング装置Easy Sampler 1210を紹介しました。新型コロナの影響で、実験環境の無人化、自動化の環境づくりがより求められるようになりました。しかし、そういった意味ではなくこの装置しかできない、反応の解析で研究を加速してほしいとのこと。筆者自身の研究室ではより小さスケールで条件検討を行っているので、なかなか使用は難しいですが、創薬現場や化学企業において将来的に大量合成したい重要化合物合成の反応条件検討において、十分活躍できるのではないでしょうか。

興味があればメトラー・トレド社にお問い合わせください。

お問い合わせはこちら

関連記事

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 金属-金属結合をもつ二核ランタノイド錯体 -単分子磁石の記録を次…
  2. ワイリー・サイエンスカフェ開設記念クイズ・キャンペーン
  3. 酵素の分子個性のダイバーシティは酵素進化のバロメーターとなる
  4. 文具に凝るといふことを化学者もしてみむとてするなり⑯:骨伝導ヘッ…
  5. ライトケミカル工業株式会社ってどんな会社?
  6. 11/16(土)Zoom開催 【10:30~博士課程×女性のキャ…
  7. ノルゾアンタミンの全合成
  8. 2009年イグノーベル賞決定!

注目情報

ピックアップ記事

  1. 第34回 生物学と合成化学のハイブリッド高分子材料を開発する―Jeroen Cornelissen教授
  2. 超分子カプセル内包型発光性金属錯体の創製
  3. 化学者のためのエレクトロニクス入門② ~電子回路の製造工程編~
  4. 世界最小電圧の乾電池1本で光る青色有機EL
  5. 酵母還元 Reduction with Yeast
  6. ブラッドリー・ムーアBradley Moore
  7. ルイス塩基触媒によるボロン酸の活性化:可視光レドックス触媒系への適用
  8. 手で解く量子化学I
  9. 住友チタニウム、スポンジチタン生産能力を3割増強
  10. CAS番号の登録が1億個突破!

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2021年11月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

第58回Vシンポ「天然物フィロソフィ2」を開催します!

第58回ケムステVシンポジウムの開催告知をさせて頂きます!今回のVシンポは、コロナ蔓延の年202…

第76回「目指すは生涯現役!ロマンを追い求めて」櫛田 創 助教

第76回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第75回「デジタル技術は化学研究を革新できるのか?」熊田佳菜子 主任研究員

第75回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第74回「理想的な医薬品原薬の製造法を目指して」細谷 昌弘 サブグループ長

第74回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第57回ケムステVシンポ「祝ノーベル化学賞!金属有機構造体–MOF」を開催します!

第57回ケムステVシンポは、北川 進 先生らの2025年ノーベル化学賞受賞を記念して…

櫛田 創 Soh Kushida

櫛田 創(くしだそう)は日本の化学者である。筑波大学 数理物質系 物質工学域・助教。専門は物理化学、…

細谷 昌弘 Masahiro HOSOYA

細谷 昌弘(ほそや まさひろ, 19xx年xx月xx日-)は、日本の創薬科学者である。塩野義製薬株式…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP