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有機合成化学協会誌2025年5月号:特集号 有機合成化学の力量を活かした構造有機化学のフロンティア

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有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年5月号がオンラインで公開されています!

5月は恒例の特集号です。今年は「構造有機化学」にフォーカスしており、毎年のことながらとても読み応えある内容になっています。

昨年までの特集号も含め、分野を学ぶ良い機会としていただければと思います(過去の紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズをご参照ください)。

会員の方は、それぞれの画像をクリックすると、J-STAGEを通じてすべて閲覧できます。

巻頭言:UnusualとUsefulをつなぐ

今月号の巻頭言は、名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所 山口茂弘 教授による寄稿記事です。

学術的に面白いという価値観は大事にしつつ、科学技術へつながることへの意識を提案されている寄稿です。構造有機化学分野に限らず、多くの化学者にとって意識すべき重要な提言といえるでしょう。オープンアクセスです、ぜひお読みください。

軸不斉,面不斉をもつキラルなπ共役系環状化合物の合成とキラル光学特性

長谷川真士*

*北里大学理学部化学科

美しさと機能を兼ね備えたキラルπ共役系環状化合物に関する論文です。ビナフチルがもつ軸不斉、[2,2]パラシクロファンがもつ面不斉を巧みに利用し、分子全体をひねりました。Ni触媒によるカップリング反応によってエレガントに不斉合成し、円偏光二色性(CD)や円偏光発光(CPL)など、優れた光学特性を解明しました。

キノリンを構成単位とする大環状システムの創出と多彩な化学への展開

小林透威、Wei Xu、熊谷直哉*

*慶應義塾大学薬学部

これまで地球上に存在しなかった分子を設計し,自らの手で創り出す。そして時に,予想外の性質や機能に驚かされる。熊谷先生らの,キノリンを基盤とした新たな大環状化合物の合成とその機能の探索について述べた本論文は,そのような有機合成化学の根源的な魅力と未知の可能性を存分に堪能させてくれる内容です。

ラダー化による合成高分子の二次構造制御と機能化

井改知幸*

*名古屋大学大学院工学研究科有機・高分子化学専攻

著者らの開発した「無欠陥ラダー化」という手法によりラセン構造をもつ様々な高分子などの有機分子の創製、ならびにそれらを用いた多様な機能発現についてまとめられています。高効率的かつ強力なラダー化手法が自在な分子設計・構築ならびに機能化にどのように活かされるかがわかる論文です。

動的機能をもつπ拡張COTの合成

須賀健介、齊藤尚平*

*大阪大学大学院理学研究科化学専攻

著者らが開発を進める剛柔部位を合わせ持つ羽ばたく分子「FLAP」のなかで、シクロオクタテトラエン誘導体の開発に焦点を当てた総合論文となっており、著者らが試行錯誤を重ねて確立した高効率的な合成ルートに至る過程が端的に記載されています。π電子系化合物による機能性材料開発の始点となる合成化学の重要性が強調された、若手の有機化学分野の研究者には必読の内容となっています。

ピロールのNHサイトの特性を活かしたアザヘリセン類の合成

松尾悠佑、田中隆行*

*京都大学大学院工学研究科分子工学専攻

ピロール骨格を含むアザヘリセン類の合成に関する総合論文です。合成面では、適切にデザインされた前駆体に対して環化反応を用いて複数のアザヘリセンを作り分けており、本法が強力なアザヘリセン合成法であることを示しています。また、合成した複数のアザヘリセンの各種物性評価を実施し、実験より得られた考察も興味深く、重厚な内容となっています。ぜひご一読ください。

π拡張型ヘリセン誘導体の合成とらせん構造に由来する物性探索

廣瀬崇至*

*京都大学化学研究所

本論文では、均一にπ拡張されたヘリセン誘導体の合成と、その電子状態に関する研究をまとめています。π拡張型[5][7][9]ヘリセンを合成し、らせん構造の内側リムに形成されるポリエン様の電子状態が、長波長光応答性や優れた円偏光特性に寄与することを明らかにしました。さらに、π拡張が励起状態の超高速な失活を引き起こし、発光を抑制することを過渡吸収分光測定により実証しました。

分子設計および有機合成を駆使した応答性分子開発:準安定構造の利用を鍵とする機能創出

石垣侑祐*

*北海道大学大学院理学研究院化学部門

外部環境や電子授受により立体配座、電子状態および芳香族性が変調する、精密な設計が施されて合成されたπ電子共役化合物による機能性制御に関する、構造有機分野におけるフロントラインを紹介している必読の論文です。

メチレン架橋シクロパラフェニレンの化学と展開

八木亜樹子*,1,2、河野英也2天池一真3、伊丹健一郎*,1,3

1名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所, 2名古屋大学大学院理学研究科, 3理化学研究所開拓研究本部

カーボンナノリングの化学は現在、大きな注目を集めている。著者らは、カーボンナノリングの一種として、芳香環をメチレン架橋によって固定した剛直なナノベルトの実用的な合成法を開発した。本稿では、その構造と光電子物性を明らかにするとともに、機能性材料としての可能性について論じている。

狭いHOMO–LUMOギャップと安定性を兼ね備えたπ共役炭化水素の創出

福井識人*、忍久保洋*

*名古屋大学大学院工学研究科

π電子系化合物の特性を変える場合、置換基導入やヘテロ原子の組み込みを行うのが主流ですが、著者らは炭化水素骨格の設計で勝負しています。本論文は、伝統的でありながら新しく、π電子系化合物の奥深さと可能性を感じとれる内容が詰まっています。感動の瞬間に関する記載もあり、ワクワクしたい方には必読の論文です。

多フッ素化キュバンの合成および構造・機能の開拓

秋山みどり*

*京都大学大学院工学研究科分子工学専攻

本論文は、フッ素の特異な性質を活かした多フッ素化キュバンの合成、構造、機能を紹介しています。著者らはPERFECT法を用いて全フッ素化キュバンとヘキサフルオロジハロキュバンの合成に成功しました。さらに、X線結晶構造解析やNBO解析により、C-X結合が特異的に短くなる原因を解明し、新規電子受容体としての可能性を示しています。本研究は、フッ素化学の新たな展開を切り開く重要な成果です。

 

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大学教員→企業研究者。自分の知らない化学に触れ、学び、楽しみ続けたいです。

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