[スポンサーリンク]

一般的な話題

Goodenough教授の素晴らしすぎる研究人生

[スポンサーリンク]

本日ノーベル化学賞発表です。
今年は無機化学分野ではないかということで、MOFも有力ですが、実用化という面ではリチウムイオン電池も有力な候補と思われます。
本稿ではリチウムイオン電池を語る上で忘れてはならない人物、John B. Goodenoughについて調べたことをまとめました。

Goodenough教授はリチウムイオン電池の創始者として有名ですが、生まれはなんと1922年、現在96歳という大御所です。エール大で学生時代を過ごしたのはなんと太平洋戦争末期、ジョージ・H・W・ブッシュ(父ブッシュ)の入学と入れ違いで大学を卒業します。学部を卒業後第二次世界大戦に参加し、戻ってきてからシカゴ大で物理学の学位を取得しています。ツェナーダイオードで有名なGlarence Zener研でのものです。

その後MITにて磁性化合物の研究を行います。彼の初期の仕事は「磁石がどのようにして磁石になるのか」を解明する研究です。A-B-Cという3つの原子が並んでいるとき、A-B、B-Cという結合を考えるだけでなく、AとCの間に働く相互作用がどうなるかを説明し、AとCの電子状態が影響を及ぼしあっていると考えると磁石の性質を見事に解明できるというものです。

これは今では二重交換相互作用、あるいは超交換相互作用と呼ばれています。化学結合を考えるのに隣の原子との結合だけを考えるのではなく、磁性を持つ物質がどのような状態にあるかを調べるという、いわば化学結合の基盤の一つを創り出した研究であると言えます。これが1955年ごろのことです。

この仕事は金森先生の仕事を合わせて、現在ではGoodenough-Kanamori則という化学結合の基本法則となっています。

その後金属酸化物の研究(1950年代~1960年代)を経て、1970年代に固体中でナトリウムイオンが動く酸化物があるらしいと言うことを発見します。これは後にNASICON (NAtrium ion Super Ionic CONductor)と呼ばれる材料になります。その後80年代に入ってコバルト酸リチウム(水島教授と同時期)、マンガンスピネル、オリビン型リン酸鉄といった、現在のリチウムイオン電池の正極材料に使われる酸化物を用いた電池を次々に提案していきます。

理論から材料開発、そして電池作りまでを一人でやってのけたという巨人です。

化学の根本となる量子力学や結合論について深く勉強しながらモノづくりへとつなげるというGoodenough教授の姿勢は、我々にとっても示唆に富んでいるように思います。

何年も前からリチウム電池の開発者であるJohn B. Goodenough教授にはノーベル賞の噂があり、今年ももしかしたら受賞されるかもしれません。

しかしながら、リチウムイオン電池が世に広まったのは、SONY、東芝、NTT、旭化成、三洋などの日本の企業やそこに勤めていた研究者たちの努力が必須であったことを忘れてはなりません。美しい正極材料の開発だけで無く、炭素負極の発明、安全装置の開発、爆発事件への対処と安全な電池の開発など、日本企業の研究者が「リチウム電池」というダイアモンドの原石を磨き、便利な「リチウムイオン電池」へと発展させていったといえます。そういう意味では炭素負極を開発したSONYの西美緒氏や旭化成の吉野彰が共同受賞しても全くおかしくないように、個人的には思います。

関連書籍

関連記事

  1. 量子力学が予言した化学反応理論を実験で証明する
  2. 【読者特典】第92回日本化学会付設展示会を楽しもう!PartII…
  3. TQ: TriQuinoline
  4. Reaxys体験レポート反応検索編
  5. 有機合成化学協会誌2018年5月号:天然物化学特集号
  6. プラナーボラン - 有機エレクトロニクス界に期待の新化合物
  7. 大環状ヘテロ環の合成から抗がん剤開発へ
  8. シリンドロシクロファン生合成経路の解明

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 有機ルイス酸触媒で不斉向山–マイケル反応
  2. 「炭素-炭素結合を切って組み替える合成」テキサス大学オースティン校・Dong研より
  3. ちょっと変わったイオン液体
  4. スティーヴンス転位 Stevens Rearrangement
  5. のむ発毛薬の輸入承認 国内初、年内にも発売へ
  6. 二酸化炭素の工業用有機材料への利用とその作製技術
  7. フロンよりもオゾン層を破壊しているガスがある
  8. F. S. Kipping賞―受賞者一覧
  9. 有機化学1000本ノック【命名法編】【立体化学編】
  10. 単一分子を検出可能な5色の高光度化学発光タンパク質の開発

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

第59回―「機能性有機ナノチューブの製造」清水敏美 教授

第59回の海外化学者インタビューは日本から、清水敏美 教授です。独立行政法人産業技術総合研究所(AI…

高分子鎖デザインがもたらすポリマーサイエンスの再創造 進化する高分子材料 表面・界面制御アドバンスト コース

詳細・お申込みはこちら日時2020年 4月16日(木)、17日(金)全日程2日間  …

光で水素を放出する、軽量な水素キャリア材料の開発

第248回のスポットライトリサーチは、東京工業大学物質理工学院(宮内研究室)・河村 玲哉さんにお願い…

大幸薬品、「クレベリン」の航空輸送で注意喚起 搭載禁止物質や危険物に該当?

大幸薬品は、同社が展開する「クレベリンシリーズ」の航空輸送について、注意喚起を行っている。  (引用…

第58回―「集積構造体を生み出すポリマー合成」Barney Grubbs教授

第58回の海外化学者インタビューは、バーニー・グラブス教授です。ダートマス大学化学科に所属(訳注:現…

サム・ゲルマン Samuel H. Gellman

サミュエル・H・ゲルマン(Samuel H. Gellman、19xx年xx月xx日-)は、アメリカ…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP