[スポンサーリンク]

化学一般

化学で「透明人間」になれますか? 人類の夢をかなえる最新研究15

概要

本書は”炭素文明論「元素の王者」が歴史を動かす”で、いや”ふしぎな国道”で注目を集めているサイエンスライター佐藤健太郎氏の最新作である。氏は炭素文明論において化学物質、主に有機化合物が人類史にどう影響したのかを論ずるなど、非常にユニークな切り口の書を出版し続けているが、本書は他でもよくありがちな、現在の最新の、または未来の科学技術に関する情報を紹介する書である。そういった書は定期的に出てくるので特筆することも無いのだが、本書にはやはり佐藤氏のユニークな語り口やマニアックとも言えるトピックスが数多く含まれている。

対象

一般、高校生、大学生

 

解説

一方で一般市民を置いてけぼりにするような専門的解説書にはなっていないというバランスの取れた書であり、化学に馴染みのない読者に対して平易にかつ丁寧に説明がなされている。化学に関連する書であるが、構造式は数えるほどしか出てこない。形式としては佐藤博士とその妻の問答となっていることから、化学者の立場、または一般人の立場のどちらの視点から読んでみても楽しめる。

また、化学に関連する部分の説明は太字で強調するなど工夫があり、流し読みしても内容は十分に伝わるであろう。

 

トピックスとしては”化学で透明人間になれるかどうか”は本書の主題ではなく、化学に関するよくある一般的な誤解などを多く取り扱っている。帯には「がん治療」、「石油・金」など耳目を惹きそうなものが挙げられている。科学者の蘊蓄”あるある本” としても読めるが、科学者の端くれである筆者の家庭でもたまになされる会話が収録されてしまったのかと錯覚するほどリアルなやりとりがあり、化学にあまり興味がない方にぜひお勧めしたい書である。

 

本書では夢を叶える最新研究を取り上げており、ドラえもんの話題も一部登場する。ドラえもんは国民に広く知られる通り、荒唐無稽なものから現実的なものまで様々な未来の道具が登場する。言われてみればドラえもんの道具は子どもの夢の実現であり、のびた君の無茶振りにドラえもんが応えるという図式であった。ある意味科学者はドラえもんのようになることが可能かもしれないが、科学者自らが”のびた君のような無茶振り”、すなわち実現可能性が低いかもしれない研究テーマに挑戦することが少なくなっているのではないだろうか。

実は夢の無い科学者に対する佐藤氏からの強烈なメッセージが本書に込められているというのは勘ぐりすぎだろうか。

 

関連書籍

The following two tabs change content below.
ペリプラノン

ペリプラノン

有機合成化学が専門。主に天然物化学、ケミカルバイオロジーについて書いていきたいと思います。

関連記事

  1. Practical Functional Group Synth…
  2. 演習で学ぶ有機反応機構―大学院入試から最先端まで
  3. Nanomaterials: An Introduction t…
  4. Greene’s Protective Groups…
  5. 有機金属反応剤ハンドブック―3Liから83Biまで
  6. 有機合成のための遷移金属触媒反応
  7. 化学探偵Mr.キュリー7
  8. Comprehensive Organic Transforma…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. キラルオキサゾリジノン
  2. Pure science
  3. 薄層クロマトグラフィ / thin-layer chromatography (TLC)
  4. 電気刺激により電子伝導性と白色発光を発現するヨウ素内包カーボンナノリング
  5. 低分子医薬に代わり抗体医薬がトップに?
  6. 「芳香族共役ポリマーに学ぶ」ーブリストル大学Faul研より
  7. Ph.D. Comics – Piled Higher and Deeper
  8. 輸出貿易管理令
  9. ギルバート・ストーク Gilbert Stork
  10. 100年前のノーベル化学賞ーフリッツ・ハーバーー

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

化学構造式描画のスタンダードを学ぼう!【応用編】

前回の【基本編】に引き続き、化学構造式描画の標準ガイドラインをご紹介します。“Graphical…

アジドの3つの窒素原子をすべて入れる

ホスフィン触媒を用い、アジド化合物とα,β-エノンからβ-アミノα-ジアゾカルボニル化合物を合成した…

工程フローからみた「どんな会社が?」~タイヤ編 その1

Tshozoです。今回の主役はゴムで出来ている車両用タイヤ。通勤時に道路で毎日目にするわりに…

感染制御ー薬剤耐性(AMR)ーChemical Times特集より

関東化学が発行する化学情報誌「ケミカルタイムズ」。年4回発行のこの無料雑誌の紹介をしています。…

有機合成化学協会誌2019年1月号:大環状芳香族分子・多環性芳香族ポリケチド天然物・りん光性デンドリマー・キャビタンド・金属カルベノイド・水素化ジイソブチルアルミニウム

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2019年1月号がオンライン公開されました。今…

リチウムイオンバッテリーの容量を最大70%まで向上させる技術が開発されている

スマートフォンや電気自動車の普及によって、エネルギー密度が高く充電効率も良いリチウムイオンバッテリー…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP