[スポンサーリンク]

化学一般

化学で「透明人間」になれますか? 人類の夢をかなえる最新研究15

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”4334038352″ locale=”JP” title=”化学で「透明人間」になれますか? 人類の夢をかなえる最新研究15 (光文社新書)”]

概要

本書は”炭素文明論「元素の王者」が歴史を動かす”で、いや”ふしぎな国道”で注目を集めているサイエンスライター佐藤健太郎氏の最新作である。氏は炭素文明論において化学物質、主に有機化合物が人類史にどう影響したのかを論ずるなど、非常にユニークな切り口の書を出版し続けているが、本書は他でもよくありがちな、現在の最新の、または未来の科学技術に関する情報を紹介する書である。そういった書は定期的に出てくるので特筆することも無いのだが、本書にはやはり佐藤氏のユニークな語り口やマニアックとも言えるトピックスが数多く含まれている。

対象

一般、高校生、大学生

 

解説

一方で一般市民を置いてけぼりにするような専門的解説書にはなっていないというバランスの取れた書であり、化学に馴染みのない読者に対して平易にかつ丁寧に説明がなされている。化学に関連する書であるが、構造式は数えるほどしか出てこない。形式としては佐藤博士とその妻の問答となっていることから、化学者の立場、または一般人の立場のどちらの視点から読んでみても楽しめる。

また、化学に関連する部分の説明は太字で強調するなど工夫があり、流し読みしても内容は十分に伝わるであろう。

 

トピックスとしては”化学で透明人間になれるかどうか”は本書の主題ではなく、化学に関するよくある一般的な誤解などを多く取り扱っている。帯には「がん治療」、「石油・金」など耳目を惹きそうなものが挙げられている。科学者の蘊蓄”あるある本” としても読めるが、科学者の端くれである筆者の家庭でもたまになされる会話が収録されてしまったのかと錯覚するほどリアルなやりとりがあり、化学にあまり興味がない方にぜひお勧めしたい書である。

 

本書では夢を叶える最新研究を取り上げており、ドラえもんの話題も一部登場する。ドラえもんは国民に広く知られる通り、荒唐無稽なものから現実的なものまで様々な未来の道具が登場する。言われてみればドラえもんの道具は子どもの夢の実現であり、のびた君の無茶振りにドラえもんが応えるという図式であった。ある意味科学者はドラえもんのようになることが可能かもしれないが、科学者自らが”のびた君のような無茶振り”、すなわち実現可能性が低いかもしれない研究テーマに挑戦することが少なくなっているのではないだろうか。

実は夢の無い科学者に対する佐藤氏からの強烈なメッセージが本書に込められているというのは勘ぐりすぎだろうか。

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4106037327″ locale=”JP” title=”炭素文明論 「元素の王者」が歴史を動かす (新潮選書)”] [amazonjs asin=”4062882825″ locale=”JP” title=”ふしぎな国道 (講談社現代新書)”] [amazonjs asin=”4334037062″ locale=”JP” title=”「ゼロリスク社会」の罠 「怖い」が判断を狂わせる (光文社新書)”] [amazonjs asin=”4774135178″ locale=”JP” title=”化学物質はなぜ嫌われるのか ‾「化学物質」のニュースを読み解く (知りたい!サイエンス 33)”]
Avatar photo

ペリプラノン

投稿者の記事一覧

有機合成化学が専門。主に天然物化学、ケミカルバイオロジーについて書いていきたいと思います。

関連記事

  1. 【書籍】電気化学インピーダンス 数式と計算で理解する基礎理論
  2. 高分子の合成(上)(下)
  3. Small Molecule Medicinal Chemist…
  4. できる研究者の論文生産術―どうすれば『たくさん』書けるのか
  5. 構造生物学
  6. 生物活性分子のケミカルバイオロジー
  7. 【書籍】フロンティア軌道論で理解する有機化学
  8. 化学の歴史

注目情報

ピックアップ記事

  1. 富山化学 新規メカニズムの抗インフルエンザ薬を承認申請
  2. ルーシェ還元 Luche Reduction
  3. 可視光によるC–Sクロスカップリング
  4. 有機・高分子合成における脱”レアメタル”触媒の開発動向
  5. ストックホルム国際青年科学セミナー参加学生を募集開始 ノーベル賞のイベントに参加できます!
  6. 超原子価臭素試薬を用いた脂肪族C-Hアミノ化反応
  7. フリーデル・クラフツアルキル化 Friedel-Crafts Alkylation
  8. 「遷移金属を用いてタンパク質を選択的に修飾する」ライス大学・Ball研より
  9. フローリアクターでペプチド連結法を革新する
  10. 第8回慶應有機化学若手シンポジウム

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2014年12月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

ブテンを原料に天然物のコードを紡ぐ ―新触媒が拓く医薬リード分子の迅速プログラム合成―

第 687回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 有機合成化学教室 (金井…

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP