町田 慎悟(まちだ しんご, 1990年 06月 )は、日本の化学者。東京理科大学 助教。第59回ケムステVシンポ講師。
経歴
- 1990年6月…東京都 新宿区に生まれる
- 2014年3月…早稲田大学 教育学部 理学科 地球科学専修 卒業
- 2016年3月…早稲田大学大学院 創造理工学研究科 地球・環境資源理工学専攻 修士課程修了
- 2019年3月…早稲田大学大学院 先進理工学研究科 応用化学科専攻 博士課程 研究指導終了退学
- 2019年7月…早稲田大学より博士(工学)を授与
- 2017年4月~2020年3月…早稲田大学 応用化学科 助手
- 2020年4月~2024年3月…東京理科大学 先進工学部 マテリアル創成工学科 助教
- 2024年4月~現在…非営利・一般財団法人ファインセラミックスセンター 上級研究員
- 2024年4月~現在…東京理科大学 スペースシステム創造研究センター 客員研究員
- 2024年4月~現在…東京理科大学 ウォーターフロンティア研究センター 客員研究員
受賞歴:
- 2025年9月 日本セラミックス協会 第38回秋季シンポジウム 「秩序の中の乱れ, 無秩序に潜む秩序」の材料科学(群馬大学、群馬)セッション最優秀講演賞(群馬大学、群馬)
- 2025年 9月 第34回無機リン化学討論会(東北大学、宮城)若手優講演賞
- 2025年 7月 化学情報協会(化学情報協会、東京)JAICI賞
- 2024年12月 日本セラミックス協会2024年度進歩賞
- 2023年 2月 化学情報協会(化学情報協会、東京)JAICI賞
- 2022年 11月 無機マテリアル学会第145回学術講演会 (熊本市国際交流会館、熊本) 優秀賞
- 2020年 3月 早稲田大学先進理工学研究科 (早稲田大学、東京) 水野奨励賞
- 2020年 1月 第58回セラミックス基礎科学討論会(ウィング愛知、愛知)World Young Fellow Meeting 2020 Good Presentation Award
- 2018年 9月 日本セラミックス協会 第31回秋季シンポジウム 特定セッション「元素ブロック材料の高機能化への合成戦略」(名古屋工業大学, 愛知)学生優秀講演賞
- 2017年9月 第33回日本セラミックス協会関東支部研究発表会(ニューウェルシティ湯河原, 神奈川)最優秀賞
研究業績
メソポーラスシリカおよび中空またはコア―シェル粒子の合成、層状化合物のインターカレーション反応と層間修飾反応、結晶化ガラスの結晶組織制御、ガラス多孔体の焼結課程の解析・表面への無機粒子の析出による機能化・フィルタ応用、完全無機からなるバルクの陰イオン回収材料などについて、これまでに研究してきており、継続的に研究しているものもある。最近では、登壇の内容であるメソポーラスγアルミナの相安定性についても独創性を見出せた。しかし、折角の機会ではあるので、良いご縁のあった内容についてピックアップしたい。
日本セラミックス協会から「進歩賞」(協会から若手研究者に与えられる光栄な賞)を頂いたときの研究内容(主に総説としてJ. Ceram. Soc. Jpn., 2025, 133, 368.)1
なぜ、中国の南宋の時代(1127~1279年)の陶磁器が薄くて固いのか?驚くことに、昔の人々は陶磁器の原料に尿をかけて保存していた。ここに、カオリンという粘土が関係している。カオリンは陶磁器の原料であるが、主成分はカオリナイトという層状の粘土鉱物である。尿が分解されて生成した尿素が、カオリナイトの層間に導入(インターカレーション)されて、層の間隔を広げていた。これによりカオリンの可塑性が上がり、手による成形性が飛躍的に向上したため、薄くて固い陶磁器が生まれた。この事実は1963年にProf. Armin Weissにより報告(Angew. Chem. Int. Ed., 1963, 2, 697: 10.1002/anie.196306971)されたものである。Prof. Weissは旅行中にこの事実について確かめたそうである。Prof. Weissの報告には驚くべきことが多く(例えばAngew. Chem. Int. Ed., 1981, 20, 850: 10.1002/anie.198108501)、当時の科学者には尊敬の念しかない。
さて、陶磁器の原料にはカオリン以外の成分も含まれている。つまり、カオリナイトはカオリンの副成分だけではなく、その他の原料成分とも「固相反応」する。陶磁器もセラミックスの一種である。先述のカオリナイトの層の拡大を考えれば、層が拡大したカオリナイトの固相反応が「良いセラミックス」を作るといえる。しかし、工業的にはコストの関係があり、Prof. Weissの報告とは裏腹に層を拡大させたカオリナイトは全く用いられていない。また、カオリンとして用いられるため、副成分も多い。この副成分の影響は固相反応だけではなく、得られるセラミックスの物性にも影響する。そのため、なるべく純度の高いカオリナイトを用いれば、1つ1つの反応・物性について学術的な記述ができ、より良いセラミックスを作成するための指針を示せる。カオリナイトの固相反応に着手する前には、カオリナイトのインターカレーションの研究を行っていた。このとき、偶然ではあるがカオリナイトの層間を溶媒分子で拡大させることによって、遠心力を加えたときにだけ副成分を分離できた(遠心力を加えたときにだけ水簸できた)。つまり、インターカレーションの技術により、カオリナイトを精製する方法を見出した。この精製されたカオリナイトを固相反応に用いることによって、様々な事実を発見してきた(図1)。

図1. 精製かつ層を拡大したカオリナイトを用いることより明らかとなった内容の外観(日本セラミックス協会より許可を得て転写)。
- カオリナイトの層拡大が固相反応を促進する
- 固相反応生成物に準安定相と安定相がある場合、副成分が安定相への相転移を促進させる(逆に精製されたものを使えば、準安定相を安定化できる)
- 原料の混合と粉砕もどちらも、カオリナイトの固相反応の進行に効果的である。
- 反応生成物にドープしたいイオンを原料のカオリナイト(板状粒子)の端面に吸着させることにより(層表面にイオン交換能はない)、通常の固相反応ではドープできないイオンを反応生成物にドープできる
- カオリナイトと固相反応させる塩の陰イオンを変えることにより、反応生成物の酸化還元状態や密度を変えることができる
- カオリン鉱物は通常は板状粒子だがナノスクロールもあり、後者を陶磁器原料に用いると良いとされる理由について不明だったことに対し、ナノスクロールが相転移を促進することを明らかにした2
- 固相反応が進行しない温度領域や、反応生成物と反応しない化合物3を有効に利用すれば、カオリナイトや反応生成物だけを焼き固めて、その間に焼き固まらない材料を取り込んだ機能性材料を創出できる3
現在では、引き続き固相反応の機構を解明しているだけではなく、得られた材料の機能化について、流行りのハイエントロピー化に資するような手法で検討している。
引用文献
- Machida*, Harnessing kaolinite’s layered structure in solid-state reaction, J. Ceram. Soc. Jpn., 2025, 133, 368-379. DOI: 10.2109/jcersj2.25034
- Machida*, H. Okawa, M. Suzuki, and T. Shibue. Facilitated phase transformation of CaAl2Si2O8by kaolinite-derived aluminosilicate nanoscrolls, Dalton Trans., 2025, 54, 9899-9876. Highlighted in outside front cover DOI: doi.org/10.1039/D5DT00598A
- Machida*, D. Yokoe, M, Suzuki, T. Shibue, G. Okuma, and D. Takeda, Mutual phase stability between kaolinite-derived hexacelsian and zirconia in a mixed system, Inorg. Chem., 2025, 64, 36, 18479-18489. DOI: 10.1021/acs.inorgchem.5c03060





























