[スポンサーリンク]

元素

リチウム Lithium -リチウム電池から医薬品まで

[スポンサーリンク]

 

いま最も多く使われているリチウムイオン電池の主成分であるリチウム。みなさんが持っている携帯電話やパソコンなど、様々な電子機器のバッテリーとして使われています。

 

リチウムの基本物性データ

分類 アルカリ金属、レアメタル
原子番号・原子量 3 (6.941)
電子配置 2s1
密度 534kg/m3
融点 180.54℃
沸点 1347℃
硬度 0.6
色・形状 銀白色・固体
存在度 地球 13ppm、宇宙57.1
クラーク数 0.006%
発見者 ヨアン・オーガスト・アルフェドソン(1817年)
主な同位体  6Li (7.59%), 7Li (92.41%)
用途例 軽量合金(Li-M)、うつ病治療薬(LiCO3)、リチウム電池、リチウムイオン電池(LiPF6)、宇宙船内部の空気浄化(LiOH)、ガラスの融点降下剤(Li)
前後の元素 ヘリウムリチウムベリリウム

最も軽い金属である元素

リチウムは1817年にスウェーデンのアルフェドソンにより、ペタル石の中から発見されました。

鉱物界に広く存在する元素であるという意味で、ギリシャ語のlithos(石という意味)にちなんで命名されました。

銀白色で軟らかいリチウムは、一番軽いアルカリ金属元素であり、すべての金属の中で最も軽い元素です。

リチウム単体

リチウム単体

存在量は、地球上ではナトリウムの500分の1程度であり、宇宙でもケイ素の約1000分の1しかない貴重な金属です。特に日本国内にはリチウム資源がないことから、安定供給に不安があります。しかし、海水には0.17ppmのリチウムが含まれており、海水からのリチウム採取が研究されています。

 

ヨアン・オーガスト・アルフェドソン

Johan August Arfwedson

Johan August Arfwedson

1792-1841年。スウェーデンの化学者。リチウム・アルミニウムケイ酸塩であるペダル石からリチウムを新元素として発見した。当時彼は、フランスの著名な化学者ベルトレのもとで働いていた若い研究者であった。

 

軽い合金であるリチウム合金

リチウムは単体では非常に軟らかく、密度も水の半分程度しかありません。そのため、リチウム自体は金属材料として優れているはずなのですが、実際には金属材料として使うことができません。単体では水と激しく反応しますし、空気中でも窒素と反応して窒化リチウムになり、真っ黒に変色するからです。

 

Lithium_element

油の中で浮くリチウム(出典:wikipedia)

物質 密度(単位: g/cm3 = 103kg/m3
リチウム 0.53
1.00
マグネシウム 1.75
アルミニウム 2.70
19.3

表:リチウムといろいろなものの密度

しかし、別の金属に少量添加し、合金とすることで、リチウムのよい性質を活かすことができます。例えば、アルミニウムに数%添加したアルミニウムーリチウム合金は、非常に軽く肩痛め航空機材として使われています(1%のリチウムを添加するたびに剛性は約6%上昇し、密度は約3%低下する)。

また、アルミニウムよりも軽い金属マグネシウムにリチウムを添加した、マグネシウム―リチウム合金も非常に軽く強い素材と古くから知られています。最近までその加工の困難さによりあまり利用されていませんでした。しかし、2013年NECはノートパソコンに本合金を用いることにより、当時世界最軽量のパソコンの開発に成功しています。

NECのノートパソコン「LaVie(ラヴィ)Z」画面が13.3インチで重さが875gしかない。

NECのノートパソコン「LaVie(ラヴィ)Z」画面が13.3インチで重さが875gしかない。

 

モバイル製品に欠かせないリチウムイオン電池

テクノロジーの発達によって、電子機器は小さく、持ち運びしやくすなる一方です。電池もこれに対応して、軽くて大容量のものが求められて来ました。

大容量で軽量な電池として例えば、カメラの電池などに使われているリチウム電池が知られていました。これを二次電池*にしようと試みましたが、金属リチウムを使っていたため発火事故が相次ぎ、断念しました。

しかし、1991年に初めて実用化された二次電池であるリチウムイオン電池は、これを克服しました。旭化成の吉野彰氏よって開発され、ソニーの西美緒氏らによって実用化された新しい電池です。

リチウムイオン電池は金属リチウムそのものを使っているわけではなく、リチウムイオンが正極と負極の間を移動する電池です。ニッカド(Ni–Cd)電池やニッケル水素(Ni–H)電池などに比べても軽量で大容量であり、さらに安全性も高く、現在ほとんどの携帯電話やノートパソコンに用いられて、モバイル製品に欠かせない電池であるといえます。

 

二次電池の他に質量辺りの容量比較(出典:ラピスセミコンダクタ 半導体)

二次電池の他に質量辺りの容量比較(出典:ラピスセミコンダクタ 半導体)

 

リチウムイオン二次電池のしくみ(出典:MONOist(モノイスト))

リチウムイオン二次電池のしくみ(出典:MONOist(モノイスト))

 

一方で、2006年にリチウムイオン電池の発火事故*が相次ぎ、日本が世界シェアの7割を誇るリチウムイオン電池の安全性の基準が見直されています。2007年以降も年に1-2度程度の事故によるリコール等が発生しており、このことが欠かせない技術であるにも関わらず、ノーベル賞を取れない原因であるとも噂されています。

[amazonjs asin=”B013HYGSRO” locale=”JP” title=”UltraFire 充電池 14500 Li-ionリチウムイオン充電池 3.7V 1200mAh リチウム充電式電池+ 充電器(セット)”]

 

薬にリチウムが入っている?

リチウムの用途は、電池や合金の材料としてだけではありません。実は、薬にも使われているのです。特に炭酸リチウム(Li2CO3)は、躁うつ病に有効な治療薬です。作用機序についてはまだ解明されていませんが、細胞内情報伝達物質(イノシトール−3ーリン酸)の量を上昇させる自発運動抑制作用などが明らかにされています。

炭酸リチウム(出典:田辺三菱製薬)

炭酸リチウム(出典:田辺三菱製薬)

リチウムに関するケムステ関連記事

 

関連動画

  • 金属リチウムを水と反応させてみた

 

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4781309089″ locale=”JP” title=”リチウムイオン電池 この15年と未来技術 《普及版》 (エレクトロニクス)”][amazonjs asin=”4904774019″ locale=”JP” title=”次世代自動車用 リチウムイオン電池の設計法 (設計技術シリーズ)”]
Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. ネオ元素周期表
  2. 海底にレアアース資源!ランタノイドは太平洋の夢を見るか
  3. えれめんトランプをやってみた
  4. 元素生活 完全版
  5. 『元素周期 ~萌えて覚える化学の基本~』がドラマCD化!!!
  6. アルミニウム Aluminium 最も多い金属元素であり、一円玉…
  7. 【速報】新元素4つの名称が発表:日本発113番元素は「ニホニウム…
  8. 114番元素と116番元素の名称が間もなく決定!

注目情報

ピックアップ記事

  1. あなたの体の中の”毒ガス”
  2. 化学遺産財団
  3. NIMS WEEK2021-材料研究の最新成果発表週間- 事前登録スタート
  4. 活性酸素を効率よく安定に生成できる分子光触媒 〜ポルフィリンと分子状タングステン酸化物を複合化〜
  5. 第16回ケムステVシンポ「マテリアルズインフォマティクス?なにそれおいしいの?」を開催します!
  6. 1,3-ジチアン 1,3-Dithiane
  7. 10-メチルアクリジニウム触媒を用いたBaeyer-Villiger酸化反応
  8. ナノチューブを簡単にそろえるの巻
  9. 大陽日酸の産業ガスへの挑戦
  10. 第30回「化学研究の成果とワクワク感を子供たちにも伝えたい」 玉尾皓平教授

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年2月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
29  

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP