前回の記事でご紹介したとおり、触媒化学研究部門(触媒部門)では、触媒化学を基盤に、様々な研究を展開しています。
■レドックス反応が拓く触媒化学
レドックス、聞き慣れない言葉かもしれませんが「酸化還元」のことです。素材を創り反応を促進する、全ての変換過程にレドックスは関わっています。次世代触媒技術の構築に向け、レドックス反応制御をキーワードに、酸化還元フロー技術による電子材料・医薬品合成用新反応開発、高感度核磁気共鳴による固体表面構造の解明、機能性を付与したケイ素材料開拓をはじめとする、反応・分析・材料を複合した触媒化学の研究を進めます。
■環境化学と生体化学を越境し、調和型新素材の創出を目指す
触媒化学や物質創製技術を基盤に、環境や生体に調和する高付加価値ファインケミカルの開発に取り組んでいます。生体系の高効率な物質循環をヒントに環境問題の解決を探るとともに、グリーン・サステナブル化学の知見を応用した生体化学分野における新技術創出を目指します。具体的には、水中反応や光触媒を活用した生体分子変換技術、エネルギー利用の最適化、資源循環を考慮した環境・生体調和型新素材の開発など、従来の枠を超えた物質創製技術を追求し、社会課題の解決に貢献します。
■低コスト合成を目指した連続合成技術の開発
素材の製造にかかる「コスト」の低減は、人々のくらしの豊かさの向上に直結します。私たちのグループでは、低コスト合成の実現にむけて、原料から製品まで一気通貫の合成システムの構築を目指します。精密医薬品から高分子に至る幅広い有用物質を標的として、触媒反応開発と製造装置開発の両面から、真に効率的な合成技術の研究を行っています。
■デジタル技術が変える化学のかたち
AIやデータ科学、計算科学、自動化・ロボティクスなどのデジタル技術は、化学研究の手法と発想に変革をもたらしつつあります。私たちは、これらを融合した「デジタル駆動化学」により、機能性化学品や触媒、製造プロセスの革新的設計を実現することを目指しています。マテリアル・プロセスデータとデジタル技術を活用し、新材料・新反応・新触媒の創出から自動制御までを対象とした研究に取り組み、化学産業と学術の未来を切り拓いていきます。