[スポンサーリンク]

Long interview

【第一回】シード/リード化合物の創出に向けて 1/2

[スポンサーリンク]

 
第一回目は武田薬品工業で医薬品開拓部の研究員をなさっている、田中さん(31歳)にお話を聞いてきました。車が趣味で、最近衝動買いしたというスバルの車は、車好きの私にはうらやましい限りでした。とても面白い方で、参考になる多くのお話を聞かせていただきました。

注意:このインタビューは2001年に行ったものであり、現在のものではありません。

インタビュー内容

1. この道を選んだ理由
2. 学習について
3. 研究に関して
4. 研究体制について
5. 成功と失敗
6. 化学とコンピュータ
7. 目標、アドバイス

この道を選んだ理由

司会者:まずお聞きしたいのですが、田中さんは高等専門学校卒業ということですが、学生時代はどのような研究をなさっていたのですか?

田中さん:まあ研究と言うほどのものではないのですが、ポルフィリン(図1)の錯体を合成していました。結局、高専は研究できるのが午後だけなんですよ。しかも、午前は普通の授業をやっていて、午後に研究という感じなので、普通の大学の研究室で1テーマ1年ぐらいでやる作業を3年ぐらいでやるような感じですか。

司会者:高専はどこでもそのようなカリキュラムでやっているのでしょうか?

田中さん:いや、もちろん高専によっても違いますし、担当の先生によっても違いますから、私のところでいうと、このような形でした。

Porphyrin-3D-balls
図1 ポルフィリン

司会者:そうですか。それでは、この道を選んだ理由はなぜなのでしょうか?

田中さん:うーん。化学といえば合成だろうという考えがあったので。高専は4、5年に選択授業があって、その時に有機合成に近い授業をとって、5年の研究室選択の際も、卒業してからも合成をやりたいからという理由で。それに近い研究室を選びました。忙しいからみんな嫌がっていたのですけど。楽なところがいいと普通思いますよね。

司会者:そうですね。私達の大学でも同じようにみんなあまり行きたがりませんね。それでは会社の方はどのような考えで選んだのですか?

田中さん:求人が来ている所が低分子の合成系の会社がなくて、そのときコンピュータ関連の走りで求人が多かったんですよ。まあ、コンピュータ関係は一生ものの仕事ではないと、そのときは思ってやめて、化学系ならば工場ではなく研究所に行きたいと思っていたので、探していたら武田があったので、決めました。

司会者:そうですか。それでは入ってみて、理想と現実のギャップなようなものはありましたか?

田中さん:やっぱり知識の不足ですね。いまだに感じています。やっぱり高専で学んできたものではたかが知れてますから、実践で学んで、さらに自分で勉強していくしかないので。有機化学に関しては学生時代はかなり自信があったのですが。井の中の蛙でした。

学習について

司会者:それでは、研究以外の学習についてお聞きしたいと思います。まず、会社などでよく読む論文はなんですか?

田中さん:通常読んでいるのは、J.Org.Chem.とかTetrahedronシリーズですね。あとはBioorganic& Medical ChemistryとそのLetters、J.Med.Chem.とかまあ要するに薬学、有機合成の関連ジャーナルは一通り目を通しています。最近はどうしても薬理の方の知識が必要となってきているので、その関係のものも読んでいます。

司会者:例えばどのような文献なのでしょうか?

田中さん:文献というよりも基本的な教科書ですね。生化学とはちょっと違うのですが、薬学部や医学部の方が教科書に使っているようなものを読んでいます。薬を作っているので、その辺の知識は必要なのですが、有機合成だけをやってきた人はどうしてもその辺の知識が少ないですから。

司会者:そうですね。そのあたりの勉強は企業に入られてからですか?

田中さん:最近の話です。今の上司の方針が「薬を作っているのだから、薬がどう作用してるのかわからないといけない」ということなので、そういうテーマで週一回のセミナーをやっているんですよ。その中では化合物の構造は出てきますけれど、合成の話は出してはいけないのです。「合成で飯を食っているのだから合成を知っていて当然だ。知らないのは薬理の話であるからそれを勉強するんだ。」ということです。

司会者:そうですか。厳しいですね。みな一からのスタートというわけですか。

田中さん:そうですね。薬学出身の方はある程度の知識はあるでしょうけれど。

司会者:高専の方で、生物や薬学関係の話は学んできたのですか?

田中さん:私のいた高専では生物というのは全然やらなかったんですよ。生化学が少しやるくらいで、それも本当にさわりだけでしたので。まあ、そういう全然知識のない状態からなので、かなり大変ですね。

司会者:そうですか。わかりました。
Unknown

図2. 薬理系のジャーナル例

研究に関して

司会者:それでは田中さんの行っている研究の内容についてお聞きしたいと思います。オーファン受容体a)研究、シード/リード化合物の創出ということなのですが、具体的にどのような研究をなさっているのでしょうか?

田中さん:いや、基本的には普通の大学の研究室でやっている合成と同じですよ。反応、 抽出、カラム、再結晶して・・ということです。

司会者:そうなのですか。

田中さん:オーファン受容体についているリガンドb)は天然のもので、ペプチドが多いのですが、リガンドに似たものを合成してもってくれば、薬として効くものがあるだろうということで、そういうものを合成したり、ハイスループット・ スクリーニングのためのサンプルを作ったりしています。私の働いているところは医薬品の初期段階(開拓)の ところになるわけです。

司会者:ハイスループット・スクリー

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 第八回 自己集合ペプチドシステム開発 -Shuguang Zha…
  2. 第59回「希土類科学の楽しさを広めたい」長谷川靖哉 教授
  3. 第37回 糖・タンパク質の化学から生物学まで―Ben Davis…
  4. 第58回―「集積構造体を生み出すポリマー合成」Barney Gr…
  5. 第31回「植物生物活性天然物のケミカルバイオロジー」 上田 実 …
  6. 第62回―「再生医療・ドラッグデリバリーを発展させる高分子化学」…
  7. 第161回―「C-H官能基化と脱芳香族化を鍵反応とする天然物合成…
  8. 第90回―「金属錯体の超分子化学と機能開拓」Paul Kruge…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 高純度化学研究所が実物周期標本を発売開始
  2. 対称性に着目したモデルに基づいてナノ物質の周期律を発見
  3. 電場を利用する効率的なアンモニア合成
  4. クラブトリー触媒 Crabtree’s Catalyst
  5. 武田、ビタミン原料事業から完全撤退
  6. ウェルナー・ナウ Werner M. Nau
  7. 理工系のAI英作文術
  8. Corey系譜β版
  9. 水分子が見えた! ー原子間力顕微鏡を用いた水分子ネットワークの観察ー
  10. 「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」の申請と試験の大変さ 危険物質

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2010年4月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930  

注目情報

最新記事

酸素は系内に入り込み続ける【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか3. 反応操作をし…

アンモニウム構造によりラジカル種の発生位置を完全に制御!

第710回のスポットライトリサーチは、関西学院大学理工学研究科 村上研究室の榊原 陽太(さかきばら …

化学つれづれ草【ある研究者の回想】

概要物理化学者で量子機能材料を専門とする著者によるエッセイ集.化学者としての研究,教育,人生…

第60回有機反応若手の会

開催概要有機反応若手の会は、有機化学分野で研究を行う全国の大学院生を中心とした若手研究者が集い、…

ノーベル賞受賞者と語り合う5日間!「第18回HOPEミーティング」参加者募集!

申し込みはこちら概要主催:独立行政法人 日本学術振興会(JSPS)開催地:神奈川…

光触媒による高効率なCO2還元の実現―まさかの光を弱く当てることが重要だった―

第709回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 理学院(前田研究室)博士後期課程2年の仲田竜一 …

「π-πスタッキング」という言葉が生む誤解【芳香環の相互作用を見直す: 前編】

芳香環が平行に並んで近接しているとき、その構造を「π–π スタッキング」と表されることがよくあります…

一重項酸素によるC(sp2)−P結合切断を用いた長波長光によるリン化合物のアンケージング

第 708 回のスポットライトリサーチは、同志社女子大学 薬学部 医療薬学科 5…

マテリアルズ・インフォマティクスにおける画像解析の活用ガイド

開催概要材料開発において、電子顕微鏡やX線トモグラフィーを用いて材料の微細構造を観察するために画…

世界初のPROTAC医薬、ついに承認 ―「タンパク質を阻害する」から「分解する」時代へ

2026年5月、創薬化学の歴史に残る大きな出来事が起きました。米国 FDA は、…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP