[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第90回―「金属錯体の超分子化学と機能開拓」Paul Kruger教授

[スポンサーリンク]

第90回の海外化学者インタビューは、ポール・クルーガー教授です。ニュージーランドのカンタベリー大学化学科に在籍し、有機合成・配位化学から材料・構造化学、ホストゲスト・センサー化学にまでおよぶ、超分子化学のあらゆる分野に取り組んでいます。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

子供の頃、建物を作ることに興味を持っていました。(父は建築業に従事していたので)いくつかの点で父の影響を受けたのだと思いますが、ナノメートルの次元にまで下げました。新たな物質やプロセスを創造したり、周りの世界を理解するための化学の決定的な性質および手法が大好きです。学校には優秀な科学教師がいたのでラッキーでした。Steenholdt先生、Djoneff先生、Commons先生は、高校生の時、科学分野の非常に熱心な先生でした。大学では生化学/化学を専攻し、生化学の分子生物学的側面よりも生物学の化学を楽しんでいました。しかしながら自分の化学の授業は、しばしば生物学の観点から構成されています。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

学校を卒業したとき、化学と造園業の間で板挟みになりました。後者は非常にクリエイティブな職業で、知的な発明力と手先の器用さをアウトドアワークと結びつけています。こういうところは化学に幾分か似ています!

Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

化学は私たちが生きている世界、そして私たちが生活している社会全体に広がっています。医療診断から創薬、新素材の開発、環境問題への対応(ほんの数例ですが・・・)に至るまで。表面的な話をするだけでも、化学者は見つかるでしょう。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

ジェームズ・クック船長です。彼の 「新世界」 における発見的航海は本当に驚くべきものであり、伝説的なものでした。航海士、探検家、地図製作者としての彼の技術は、他の追随を許さないものです。盛り上がれる旅の話がきっといくつかあるでしょう。もし無理そうなら、サルバドール・ダリパブロ・ピカソフィンセント・ファン・ゴッホで我慢します。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

学者であろうとすると皮肉にも、研究室で過ごす時間が短くなっていまいます。しかし時間が許せば、自分でも結晶化と溶媒熱合成の実験をいくつか仕込みます。また、学生と一緒にあちらこちらで結晶構造解析も行っています。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

本は、Tim Wintonの物語集『Blood and Water』でなくてはなりません。この本は何度読んだか忘れてしまいましたが、ストーリーには今でも魅せられます。Wintonの文体は、真に簡潔にして含みのあるものです。登場人物たちは、往々にして悲惨な生活を乗り越え、永遠の希望を抱きます。しかし、Roald Dahlの 『Fantastic, Mr. Fox』の導入部よりも優れたオープニングを書ける作家はいないでしょう。6歳の時に初めて読んだ日を思い出すことができますし、子供たちに読んであげるたび、私も子供時代に連れ戻されます・・・幸せな日々に!

[amazonjs asin=”033032554X” locale=”JP” title=”Blood and Water: Stories”][amazonjs asin=”0142410349″ locale=”JP” title=”Fantastic Mr. Fox”]

CDについては・・・Nick Cave and the Bad Seedsのものなら何でもいいです。一つしか選べないので、彼らのベストコンピレーションアルバムにします。Nick Caveは作詞の名人です。

[amazonjs asin=”B000026ZL7″ locale=”JP” title=”Best of Nick Cave & Bad Seeds”]

原文:Reactions – Paul Kruger

※このインタビューは2008年11月14日に公開されました。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. Christoph A. Schalley
  2. 第14回「らせん」分子の建築家ー八島栄次教授
  3. 第73回―「Nature Chemistryの編集者として」Ga…
  4. 第四回 分子エレクトロニクスへの展開 – AP de…
  5. 第129回―「環境汚染有機物質の運命を追跡する」Scott Ma…
  6. 第44回―「N-ヘテロ環状カルベン錯体を用いる均一系触媒開発」S…
  7. 第19回「心に残る反応・分子を見つけたい」ー京都大学 依光英樹准…
  8. 第91回―「短寿命化学種の分光学」Daniel Neumark教…

注目情報

ピックアップ記事

  1. バイオマス燃料・化学品の合成と触媒の技術動向【終了】
  2. 1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物:1,2,3,4-Cyclobutanetetracarboxylic Dianhydride
  3. 岡本佳男 Yoshio Okamoto
  4. NIMSフォーラム 「未来のエネルギーをつむぐ新材料・新物質、ここに集結!」
  5. 夢・化学-21 化学への招待
  6. マニュエル・アルカラゾ Manuel Alcarazo
  7. 「ハーバー・ボッシュ法を超えるアンモニア合成法への挑戦」を聴講してみた
  8. 金属カルベノイドを用いるシクロプロパン化 Cyclopropanation with Metal Carbenoid
  9. テオ・グレイ Theodore Gray
  10. 甲種危険物取扱者・合格体験記~cosine編

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年5月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

モータータンパク質に匹敵する性能の人工分子モーターをつくる

第640回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所・総合研究大学院大学(飯野グループ)原島崇徳さん…

マーフィー試薬 Marfey reagent

概要Marfey試薬(1-フルオロ-2,4-ジニトロフェニル-5-L-アラニンアミド、略称:FD…

UC Berkeley と Baker Hughes が提携して脱炭素材料研究所を設立

ポイント 今回新たに設立される研究所 Baker Hughes Institute for…

メトキシ基で転位をコントロール!Niduterpenoid Bの全合成

ナザロフ環化に続く二度の環拡大というカスケード反応により、多環式複雑天然物niduterpenoid…

金属酸化物ナノ粒子触媒の「水の酸化反応に対する駆動力」の実験的観測

第639回のスポットライトリサーチは、東京科学大学理学院化学系(前田研究室)の岡崎 めぐみ 助教にお…

【無料ウェビナー】粒子分散の最前線~評価法から処理技術まで徹底解説~(三洋貿易株式会社)

1.ウェビナー概要2025年2月26日から28日までの3日間にわたり開催される三…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP