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日本人化学者インタビュー

第27回 「有機化学と光化学で人工光合成に挑戦」今堀 博 教授

第27回のインタビューは、第11回の金井求教授からの推薦により、京都大学大学院工学研究科・物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)今堀 博 教授にお願いしました。今堀先生は「人工光合成」という世界中の科学者が取り組む大きな課題を見据え、有機化学・光化学をご専門とされるから様々な太陽エネルギー変換有機材料の開発に取り組まれています。

私(副代表)自身、光化学に関するアドバイスを何度か今堀先生に頂く形でお世話になった縁があるのですが、お会いするたび印象深いことは、まさに「学徒」と呼ぶにふさわしい研究/化学に真摯な眼と、大変穏和な雰囲気をともにお持ちだということです。

それではいつもどおり、化学者になったきっかけからインタビューをはじめてみたいと思います。

 

Q. あなたが化学者になった理由は?

実家が京都大学に近い下鴨で、大学の先生が近くに多数住んでいました(実際に実家の隣は大学の先生だったので、影響を受けた)。そのような環境から、元々研究者になりたいと思うようになりました。特に京都大学理学部がノーベル賞受賞者を多数輩出していたことから、憧れて京都大学理学部に進学しました。しかし、進学後、自分の能力、周りの状況を考えると、物理学を専攻しても研究者としてやっていけないと思い、化学を選ぶことになりました。当時、京都大学理学部では化学は他の分野と比較して人気がなく、学生勧誘のためか、化学教室から多くの先生が教養課程の講義のために来ていました。特に、志田忠正、廣田譲、丸山和博先生の講義が印象に残っています。その中で丸山先生の夢のある講義に感銘を受けて、有機化学の研究を始めることとなりました。

 

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

小学生だった頃になりたい職業は、小説家、考古学者、研究者でした。小説家は本を読むのが好きだったからです。母親が読書好きだったこともあり、また本を買うのであれば、両親はいくらでもお金を出してくれました。一方、考古学者は歴史が好きだったからです。結局、理系に進学したが、共通一次試験で日本史、世界史を科目に選び、趣味で必要以上に勉強したと思います。しかし、上記の二つの職業ではとても生活していけないと思い、研究者を目指すことになりました。

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Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

会社で働いたことがないので、実用面からの化学者の寄与はあまり考えたことはありません。今までやってきた研究において、実用化も試みてきたが、今のところは「役に立つ」研究にはほど遠いです。大学の化学者としては化学を文化と考えて、知的な文化遺産を生み出し、蓄積していくことで、世界に貢献していると考えています。

 

Q. あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

マリ・キュリー夫人です。最近、彼女に関する本を読む機会がありました。女性で初めてノーベル物理学賞、化学賞を受賞したエピソードだけでなく、人間的にどのような人物だったのか等身大の人柄に触れてみたいです。

Marie Curie (出典:Wikipedia)

Marie Curie (出典:Wikipedia)

 

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

実験ノートを改めて見返すと、大阪大学産業科学研究所の助手だった時(37歳)ですが、1998年6月29日(月)に自己組織化単分子膜作製のためにアルカンチオール類の合成を行おうとして、失敗しているのが自分で行った最後の実験です。

当時、金電極上にドナー・アクセプター連結分子の自己組織化単分子膜を作製しようとして、ドナー・アクセプター連結分子の末端にアルキルチオールを導入する研究を行っていました。これら一連の研究は金電極上での光捕集と電荷分離が連動した光電流発生系の構築を発表した2011年に当時世界最高の研究水準に達したと思います(Scienceに投稿したが、審査員の意見が掲載を強く支持する内容でなかったために、却下された)。

Light-Harvesting and Photocurrent Generation by Gold Electrodes Modified with Mixed Self-Assembled Monolayers of Boron Dipyrrin and Ferrocene-Porphyrin-Fullerene Triad, H. Imahori, H. Norieda, H. Yamada, Y. Nishimura, I. Yamazaki, Y. Sakata, and S. Fukuzumi, J. Am. Chem. Soc., 123, 100-110 (2001).

 

Q. もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

実用的にはサバイバル関係の本がよいと思うが、砂漠の島での持て余しそうな時間を考えると「旧約聖書」か「国語辞典」になると思います。しかし、実際に読むとなると別で、どのような状況に置かれるかに依存するでしょう。

Q. 次にインタビューをして欲しい人を紹介してください。

東京工業大学の石谷治先生です。石谷先生は私と同じく太陽エネルギー変換に興味を持って、物質変換を目指した人工光合成に関する基礎研究で目覚ましい研究成果を挙られています。その人柄、研究哲学などを紹介してもらえれば、若い研究者にとってよい刺激になると期待しています。

 

関連書籍

関連リンク

京都大学工学系研究科 今堀研究室

 

今堀博 教授の略歴

Hiroshi_Imahori

京都大学大学院工学研究科・物質-細胞システム拠点(iCeMS)教授。1985年に京都大学理学部化学専攻を卒業後、大学院に進学。 1990年、京都大学大学院理学研究科博士課程修了 。博士(理学)。1990年からに米国ソーク生物学研究所にて博士研究員を勤めた後、 1992年に大阪大学産業科学研究所 助手に着任。その後同大学助教授を経て 2002年より京都大学工学系研究科教授、2007年より京都大学「物質-細胞統合システム拠点」主任研究員、現在に至る。その間、2001年~2005年に科学技術振興機構さきがけ研究代表者を兼務。受賞歴は2002年 ポルフィリン・フタロシアニン国際学会研究奨励章、2004年 光化学協会賞、2006年日本化学会学術賞、日本学術振興会賞、2007年東京テクノ・フォーラム21ゴールドメダル賞など

 

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。 関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。 素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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