[スポンサーリンク]

一般的な話題

MacでChem3Dー新たなる希望ー

[スポンサーリンク]

有機化学者のキラーアプリと言えばChemDrawですよね。筆者も大学四年生の時から利用しています。当時はChemDrawのためにMacintoshを導入した研究室も多いのではないでしょうか。しかしその後Windowsにも対応し、現在ではWindows版の方が厚遇されており、ようやく使い物になるようになりましたが Mac版では不具合が多かったのは以前ご紹介された通りです(記事:Macユーザーに朗報?ChemDrawバージョンアップ)。何よりも不便なのがChem3D(現行はChemBio3D)が完全にWindows専用になってしまったこと。筆者は大学の講義で3Dを利用したい時はWindows機を持ち出しておりましたが、この不便な現状をなんとかしたいと常々思っており、試行錯誤の末不格好ではありますがなんとか使える術を見いだしました。

Mac版の開発はほとんど期待できないので、残るはWindows用のアプリをなんとか利用するしかありません。最近のMacにはBootCampというWindowsのエミュレーション環境が 用意されていますが、これはWindowsを起動しなおす必要があるので最終手段。次に ParallelsFusionを使えば利用可能ですが、こちらも別途WindowsのOSを用意する必要があり出費が嵩みます。次の候補としてCrossOverがありますが、今のところChem3Dのインストールをサポートしていないようです(筆者もトライしましたが断念しました)。いずれにしても新たにChem3DのWindows版ライセンスを新たに購入する必要がありますので出費はバカになりません。

そして筆者が行き着いたのが、Wineという無料のエミュレータです(Intel Macのみ対応)。こちらは WindowsOSを使用せず、純正のX11というエミュレーション環境にWindowsのアプリ ケーションをインストールする為のアプリケーションと考えてもらえばいいと思います。 しかしこのWineも操作が素人には難解なので、かなり苦労します。そこで更にWineを簡単に操作してくれるアプリとして紹介したいのが、Mikuinstallerです。こちらはその名前からお分かりのように初音ミクというアプリをMacにインストールするために開発されたものです。既に開発は終了しているようですがLionでも問題なく利用出来ます。

それでは以下にChem3DをIntel Macで使用する為の手順について解説したいと思います。インストールするために用意するものとして、

Intel Mac (OS10.7.2:X11がインストール済みであること。10.6でも動作確認しています。)
Chem3Dインストールディスク: 既に使わなくなった昔のバージョンであれば著作権上も問題無いでしょう。今回は7.0.0を使用。
Mikuinstaller

以上です。研究室で埃をかぶっているdiskを探し出せば全て無料でできちゃいます。

まずMikuinstaller-20080803.dmgをリンク先から入手してインストールしましょう。アプリケーションフォルダにコピーするだけでよいです。 次にMikuinstallerを起動し、メニューの環境設定を選択し、+をクリックしてフォルダ名を入力します(何でも可)。するとWineを起動するプレフィックスが自動的に構築されます。winecfgをクリックすると設定が確認できます。Wineについてによるとバージョンは1.1.2となっています。

miku.png
ユーザー/Apprication support/Mikuinstaller/c-driveというフォルダが作られますので、このフォルダのエイリアスを作っておくと今後便利です。

さて、次にChem3DインストールCDにあるsetup.exeをダブルクリックしましょうMikuinstallerをインストー ルしておくことで、.exeの拡張子をもつファイルは自動的に処理してくれます。 X11が起動し、インストーラの指示に従えば簡単にインストール完了です。ChemDrawも当然インストール可能ですが、不要なプラグインはチェックを外しておきましょう。Mikuinstallerでの処理が終わるまではインストール中ですので、処理が終わるまでほんの少し待ちましょう。ChemDrawのインス トールディスクがハイブリッドの場合は、Macでは自動的に異なるパーティションが読み込まれてしまうので、Windows機にてディスクの内容をUSBなどにコピーしておきましょう。

installer.png

インストール先はc-driveのProgram Filesフォルダですので、ここでChem3D.appChemOfficeフォルダのChem3Dフォルダ内にあるChem3D.exe(2011.12.21訂正)を探してエイリアスを作っておきましょう。ただし、こちらのエイリアスは書類扱いなのでDockのアプリの欄には加えることができません。また不要になった際はProgramFilesフォルダから削除してください。
以降はChem3D.exeもしくはエイリアスをダブルクリックすればX11上で起動します。MM2Molecular Dynamicsも問題無く動きますので、簡易的な構造最適化にもばっちり使えます。

これで晴れてChem3Dが使えるようになった訳ですが、問題が無いわけではありません。 X11上ではテキスト以外はコピー&ペーストが使えません。よってChemDrawで構造式を描いてコピーしてからChem3Dでペーストという技が使えません。Chem3DではChemDraw形式のファイルを読み込むことは可能なので、少し手間は掛かりますがChemDrawで構造式を作成し一旦セーブしたファイルを読み込む事でChem3Dで描く手間は省けます。またChem3Dで書いた構造式もコピー出来ませんので、必要であればPDBMOL形式で書き出して使うとよいでしょう。X11上での画像のコピー&ペーストが可能なアプリもありますので、この点は残念です。

PDBやMOL形式で書き出した構造式はMacPyMOLなどで読み込めますので、より美しい3D構造を扱うことができるようになります。今は円高ですのでMacPyMOLはお買い得ではないでしょうか。

日頃からWindows環境をなんとかMac上で活用するべく試行錯誤しておりますが、これといった決め手が未だに見いだせておりません。
そこで今回はPCの更新と伴にお蔵入りになってしまった昔のChem3D (ChemDraw)のインストールディスクを再活用し、全て無料でかつ著作権上の問題も無い方法をご紹介いたしました。もちろん初音ミクを始めとする他のWindowsソフトもインストール可能です。比較的新しいソフトでインストールがうまくいかない場合はWineを新しいバージョンにするとインストールできる場合があるようですのでお試しください。茶腹も一時ということでご活用いただければ幸いです。

  • 関連書籍

 

 

 

 

Avatar photo

ペリプラノン

投稿者の記事一覧

有機合成化学が専門。主に天然物化学、ケミカルバイオロジーについて書いていきたいと思います。

関連記事

  1. 「話すのが得意」でも面接が通らない人の特徴
  2. 第37回反応と合成の進歩シンポジウムに参加してきました。
  3. 100 ns以下の超高速でスピン反転を起こす純有機発光材料の設計…
  4. アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd…
  5. 【第14回Vシンポ特別企画】講師紹介:酒田 陽子 先生
  6. ペンタフルベンが環構築の立役者!Bipolarolide D の…
  7. Slow down, baby, now you’r…
  8. NIMSフォーラム 「未来のエネルギーをつむぐ新材料・新物質、こ…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 基礎有機化学討論会開催中
  2. 電話番号のように文献を探すーRefPapers
  3. エーザイ、アルツハイマー治療薬でスウェーデン企業と提携
  4. 理論的手法を用いた結晶内における三重項エネルギーの流れの観測
  5. 誰でも参加OK!計算化学研究を手伝おう!
  6. 5/15(水)Zoom開催 【旭化成 人事担当者が語る!】2026年卒 化学系学生向け就活スタート講座
  7. 【金はなぜ金色なの?】 相対論効果 Relativistic Effects
  8. 大幸薬品、「クレベリン」の航空輸送で注意喚起 搭載禁止物質や危険物に該当
  9. \脱炭素・サーキュラーエコノミーの実現/  マイクロ波を用いたケミカルリサイクル・バイオマスプラスチックのご紹介
  10. 含フッ素カルボアニオン構造の導入による有機色素の溶解性・分配特性の制御

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2011年12月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP