[スポンサーリンク]

A

原子移動ラジカル重合 Atom Transfer Radical Polymerization

[スポンサーリンク]

 

概要

ラジカル重合形式は二量化や水素引き抜きによる停止反応が問題とされてきたが、遷移金属錯体+有機ハライドをラジカル開始剤系として用いる事で、ドーマント種を関与させたリビング重合系にすることが可能となった。

ポリマー末端部は開始剤部の原子団でキャップされた形になっており、全体として原子団が移動して重合が完了したように見える。このため原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization; ATRP)という名前がついている。

ラジカル重合であるため官能基許容性が高く、分子量分布が非常に狭い(Mw/Mn=1.1-1.3)ことも特徴である。

基本文献

  • ・Kato, M.; Kamigaito, M.; Sawamoto, M.; Higashimura, T. Macromolecules 1995, 28, 1721. doi:10.1021/ma00109a056
  • Wang, J.; Matyjaszewski, K. J. Am. Chem. Soc.1995117, 5614. doi:10.1021/ja00125a035

Review

  • Matyjaszewski, K.; Xia, J. Chem. Rev. 2001101, 2921. DOI: 10.1021/cr940534g
  • Kamigaito, M.; Ando, T.; Sawamoto, M. Chem. Rev. 2001101, 3689. DOI: 10.1021/cr9901182
  • Pintauer, T.; Matyjaszewski, K. Chem. Soc. Rev. 200837, 1087. doi:10.1039/b714578k

 

開発の歴史

1995年にカーネギーメロン大学のクリストフ・マテャシェフスキー(銅触媒) 、京都大学の澤本光男(ルテニウム触媒)により同時期・独立に報告された。現在では(2012年)ATRPに関して12000報超の報告があり、工業的にも用いられている。近年両者はノーベル化学賞受賞候補者として頻繁に紹介されている。

クリストフ・マテャシェフスキーと澤本光男

クリストフ・マテャシェフスキーと澤本光男

 

反応機構

ラジカル成長末端はハロゲンと再結合し、活性末端とドーマント種(一時的に成長反応を休止している状態)との平衡過程にある。平衡はドーマント種側に偏っているために、活性種の濃度は低くなり、副反応が起こりにくくなっている。
ATRP_2.gif

反応例

実験手順

実験のコツ・テクニック

参考文献

 

関連反応

関連書籍

 

外部リンク

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. アフマトヴィッチ反応 Achmatowicz Reaction
  2. ニーメントウスキー キノリン/キナゾリン合成 Niementow…
  3. 脱水素型クロスカップリング Cross Dehydrogenat…
  4. 【クリックは完了. よし壊せ!】イミノカルベノイドによる渡環およ…
  5. 鋳型合成 Templated Synthesis
  6. スマイルス転位 Smiles Rearrangement
  7. 菅沢反応 Sugasawa Reaction
  8. フィッシャーカルベン錯体 Fischer Carbene Com…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 武田薬、糖尿病治療剤「アクトス」の効能を追加申請
  2. 根岸 英一 Eiichi Negishi
  3. メチオニン選択的なタンパク質修飾反応
  4. レア RARE 希少金属の知っておきたい16話
  5. 日本薬学会  第143年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part 1
  6. TBSの「未来の起源」が熱い!
  7. アイルランドに行ってきた①
  8. 金属を超えるダイヤモンド ーボロンドープダイヤモンドー
  9. とある農薬のはなし「クロロタロニル」について 
  10. 第一回 福山透教授ー天然物を自由自在につくる

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2010年5月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

【12月開催】第十四回 マツモトファインケミカル技術セミナー   有機金属化合物 オルガチックスの性状、反応性とその用途

■セミナー概要当社ではチタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素等の有機金属化合物を“オルガチッ…

保護基の使用を最小限に抑えたペプチド伸長反応の開発

第584回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 薬学系研究科 有機合成化学教室(金井研究室)の…

【ナード研究所】新卒採用情報(2025年卒)

NARDでの業務は、「研究すること」。入社から、30代・40代・50代……

書類選考は3分で決まる!面接に進める人、進めない人

人事担当者は面接に進む人、進まない人をどう判断しているのか?転職活動中の方から、…

期待度⭘!サンドイッチ化合物の新顔「シクロセン」

π共役系配位子と金属が交互に配位しながら環を形成したサンドイッチ化合物の合成が達成された。嵩高い置換…

塩基が肝!シクロヘキセンのcis-1,3-カルボホウ素化反応

ニッケル触媒を用いたシクロヘキセンの位置および立体選択的なカルボホウ素化反応が開発された。用いる塩基…

中国へ行ってきました 西安・上海・北京編①

2015年(もう8年前ですね)、中国に講演旅行に行った際に記事を書きました(実は途中で断念し最後まで…

アゾ重合開始剤の特徴と選び方

ラジカル重合はビニルモノマーなどの重合に用いられる方法で、開始反応、成長反応、停止反応を素反応とする…

先端事例から深掘りする、マテリアルズ・インフォマティクスと計算科学の融合

開催日:2023/12/20 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の影…

最新の電子顕微鏡法によりポリエチレン分子鎖の向きを可視化することに成功

第583回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院 工学研究科 応用化学専攻 陣内研究室の狩野見 …

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP