[スポンサーリンク]

ケムステしごと

世界の化学企業いくつ知っていますか?

[スポンサーリンク]

 

まずはこの問いに答えてみてください。

「世界の化学企業Top50といったらどの会社名を思い浮かべますか?何個でもよいのであげてください。」

つい最近まで就職活動をやっていた方はたくさんでてくるのかもしれません。ちなみにうちの学生に聞いたら殆どでてきませんでした。筆者は半分弱ほどでした。

GW中に以下の書籍を拝読したため、まとめも兼ねまして紹介したいと思います。この書評はこちら

[amazonjs asin=”480791295X” locale=”JP” title=”世界の化学企業: グローバル企業21社の強みを探る (科学のとびら)”]

グローバル化学企業21社

2014-05-04_13-38-50.png 書籍にあげられている21社をあげてみました。

スリーエム(23)、デュポン(19)、P&G(2)、BASF(1)、バイエル(6)、ダウ・ケミカル(4)、エクソンモービル(14)、ファイザー(3)、ロシュ(16)、アムジェン(43)、モンサント(58)、PPGインダストリーズ(56)、アクゾノーベル(35)、リンデ(46)、サビック(9)、FPG(17)、LG化学(33)、リライアンス・インダストリーズ(47)、ブリジストン(22)、武田薬品工業(36)、三菱ケミカルホールディングス(15)

*括弧内の数字は書籍に紹介されている売上高順位

いかがでしょうか。特に図中の後列2列の企業知っていましたか?

「おいおい、俺の会社がないんだけど」「◯◯は入ってくるはずだよ!」「これってほんと?」

そんな声が聞こえてきますが、あくまで、書籍に取り上げられているグローバル化学企業21社であって、売上や規模に関して上から並べたわけではないということに注意してください。詳しくは世界の化学企業Top50 (2012年)世界の化学企業Top10 (2013年売上)などを御覧ください。

さて、それらの点を考慮すると、以下の企業も入ります。

2014-05-04_14-04-27.png

それでも最も上記にあげた企業、は売上・規模の面でも多くはTop30、少なくともTop50前後に位置するグローバル企業です。ケムステでもこの中のいくつかの企業を紹介しています。

本記事では書籍で紹介されていた化学企業で、興味深いものをピックアップして少しだけ紹介しましょう。

 

キングオブケミカルインダストリーデュポン

2014-05-04_14-55-53

ナイロン、ケプラー、テフロンなどで一般的にも知られるデュポン。古い人ならば化学系で必ず名前が出る企業の1つ、まさにキングオブケミカルカンパニーともいえるでしょう。筆者も少なくとも売上で10位以内に入っていると思いましたが、実は上記にあるとおり19位。三菱化学や台湾のFPGにも抜かれています。書籍ではデュポンの200年以上の歴史の中で「栄光の150年」と「苦難の50年」に分けて紹介されています。

 

化学割合10%以下ーエクソン・モービル

2014-05-04_17-13-52

エクソン・モービルといったら何を思い浮かべるでしょう。やはりガソリン、石油会社ですね。これはイメージ通りで「化学割合」という、事業の中でどの程度化学占めているかを表す割合のことですが、その割合がなんと10%以下にも関わらず、売上ランキングトップに君臨している企業なんです。エクソン・モービルの石油化学事業はこれまで一貫してブレず、石油産業に近いもの、オレフィン(世界第二位)、芳香族(ベンゼンやパラキシレンは世界第二位)、ポリエチレン(世界第二位)などに集中しています。より製品に近いものでも、ブチルゴム、オキソアルコールなどトップシェアのものだけに特化していることろが特徴です。ポリオレフィンをつくるメタロセン触媒の開発でも有名ではないでしょうか。

 

最後の巨大バイオベンチャー?ーアムジェン

2014-05-04_17-20-58 アムジェンはファイザーやメルク、ロシュといった歴史のある巨大製薬企業でなく、創立30年強で米国のナスダック(新興企業向け株式市場)に上場している世界最大のバイオベンチャーです。最近は停滞気味ですが、巧みな資金調達、バイオ医薬戦略により、一躍巨大企業に名乗りでています。日本最大の製薬会社である武田薬品工業に匹敵する大きさといえばわかりやすいでしょう。最近では大手製薬企業のベンチャー企業の買収が早く、今後はこのようなバイオベンチャーが大手と肩を並べるということはないと言われています。それがアムジェンが最後の巨大バイオベンチャーといわれる所以です。

 

国家主導のアジアの中で光る民間運営化学会社

 

2014-05-05_03-55-42

石油コンビナートやそれから石油化学製品をつくるためには大規模な設備が必要となります。そのため、資源のあるアジア諸国では国営会社が台頭しています。上記にあげた、化学売上top10に位置するサビック(サウジアラビア)や6位に位置するシノペック(中国)をはじめとして、インド、クゥエート、イラン、カタール、タイなど国営企業が中心に化学産業が動いています。それに対して、アジア民間化学企業の代表格であるFPG(台湾)、LG化学(韓国)、リライアンス・インダストリーズ(インド)の存在は重要です。これらの会社には共通して立志伝的創業者が会社をゼロからグローバル企業にまで牽引してきたという経緯があります。

例えば、「台湾の松下幸之助」といわれるFPGの王永慶、韓国四大グループといわれるLGグループの基礎を築いた具仁會、一代でリライアンス・インダストリーズの世界のトップ化学企業としたディルバイ・アンバニーです。中心的なリーダーの存在が化学工業でも重要な役割を示してきたことがわかります。

 

“世界の化学企業研究”のススメ

ほんの一部しか紹介しませんでしたが、200ページほどの分量であったので読みやすく、面白いものでした。化学に携わるものとして世界の化学企業の歴史・動向を掴んでおくことはマイナスではないと思います。ぜひ日本だけでなく世界の化学企業研究をオススメします。

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4883384055″ locale=”JP” title=”東レ (出版文化社新書 リーディング・カンパニーシリーズ)”][amazonjs asin=”453231996X” locale=”JP” title=”教科書を超えた技術経営”]

 

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. キムワイプLINEスタンプを使ってみよう!
  2. 高圧ガス甲種化学 受験体験記① ~概要・申し込み~
  3. 鉄触媒での鈴木-宮浦クロスカップリングが実現!
  4. SFTSのはなし ~マダニとその最新情報 後編~
  5. 再転職の成功へ: 30代女性研究者が転職ミスマッチを克服した秘訣…
  6. 含『鉛』芳香族化合物ジリチオプルンボールの合成に成功!①
  7. YMC-DispoPackAT 「ケムステを見た!!」 30%O…
  8. 大量合成も可能なシビれる1,2-ジアミン合成法

注目情報

ピックアップ記事

  1. パリック・デーリング酸化 Parikh-Doering Oxidation
  2. 第107回―「ソフトマター表面の物理化学」Jacob Klein教授
  3. カルボン酸だけを触媒的にエノラート化する
  4. 澤本 光男 Mitsuo Sawamoto
  5. スクリプス研究所
  6. 【書籍】化学探偵Mr.キュリー2
  7. トイレから学ぶ超撥水と超親水
  8. 第153回―「ネットワーク無機材料の結晶学」Micheal O’Keeffe教授
  9. 野副鉄男 Tetsuo Nozoe
  10. 第98回日本化学会春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part I

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2014年5月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP