[スポンサーリンク]

一般的な話題

Reaxys Ph.D Prize2014ファイナリスト45名発表!

[スポンサーリンク]

 

昨年より少し遅れて、Reaxys Ph.D Prizeのファイナリストの発表が本日されました!(日本語版はこちら)知らない方のために説明しますと、Reaxys Ph.D Prizeとは博士課程の学生もしくは博士取得後1年以内の方に与えられる、主に有機化学、無機錯体分野での国際賞。毎年多くの猛者たちが申し込んでおり、最終候補者(ファイナリスト)は45名選ばれますがそれに選ばれるだけでもとっても大変。今年は昨年とほぼ同じで540件ほどの応募があり、そのなかの10%弱の45名がファイナリストに選ばれましたので日本人を中心にして紹介したいと思います。

 

日本からのReaxys Ph.D Prize 2014ファイナリスト

2014-12-09_03-46-28

(写真は勝手に掲載させていただいています。問題のある方はご連絡いただければ幸いです。)

日本の大学で博士をとり選ばれた研究者は以下の6名。

大町 遼さん(名古屋大学)伊丹研究室

高橋 講平さん(東京大学)野崎研究室

Shaowei Huさん(東京工業大学)侯研究室

福島 知宏さん(京都大学)北川研究室

堀部 貴大さん(名古屋大学)石原研究室

溝口 玄樹さん(北海道大学)及川・大栗研究室

知り合いが3名もいて(大町、堀部、溝口)、喜ばしいことに元研究室の学生(大町)がはいっています。

【追記:2014年6月24日21時】なんと、今年は1研究室1人までという制限があり、45人の候補者の中に同じ研究室から2人選出されたことで46人目が繰り上げられたいう情報を得ました。栄えある46人目は…日本人!

百合野大雅さん(京都大学)丸岡研究室

が繰り上げられました。これで知り合いが4人増えました。それでは彼らの研究と主要論文を簡単に紹介しましょう。

 

リングを原料にしたカーボンナノチューブの精密合成:大町遼さん

cover_omachi20121019

大町遼さんは名古屋大学大学院伊丹研究室出身で現在、同大学の篠原研究室の助教です。伊丹教授自身が推進する研究「分子ナノカーボン化学」の中心的存在のカーボンナノリング「シクロパラフェニレン」の合成に携わっていました。リングを物理的な手法を用いて伸長させて、直径のそろったカーナノチューブをつくることを目指し、それに成功しました。現在は、ナノカーボン化学にどっぷりと浸かり、合成化学的な手法と物理的な手法を組合せて、新しいナノカーボン化学の開拓を行っています。

“Initiation of carbon nanotube growth by well-defined carbon nanorings”

Omachi, H.; Nakayama, T.; Takahashi, E.; Segawa, Y.; Itami, K, Nat. Chem.2013, 5, 572. DOI: 10.1038/NCHEM.1655

 

オレフィンからアルコールをつくる:高橋 講平さん

ja-2012-07998h_0017

高橋航講平さんは東京大学野崎研究室出身。現在は東工大で博士研究員をしているようです。学生時代はRhとRuの2つの触媒をもちいた、タンデムヒドロホルミル化/水素化反応によるオレフィンから位置選択的に直鎖アルコールの合成に携わっています。通常マルコフニコフ則では内部アルコールが生成するのに対し、ホルミル化を経由することで末端アルコールを合成できます。これを2つの触媒を使って、1段階で幅広い基質適用範囲で達成できたことは素晴らしい結果だと思います。(参考記事:Anti-Markovnikov Hydration~一級アルコールへの道~

“Tandem Hydroformylation/Hydrogenation of Alkenes to normal-Alcohols Using Rh/Ru Dual Catalyst or Ru Single Component Catalyst”

Takahashi, K.; Yamashita, M.; Nozaki, K. J. Am. Chem. Soc., 2012134, 18746. DOI: 10.1021/ja307998h

 

水素と窒素からアンモニアを合成する:Shaowei Huさん

2014-12-09_03-51-17

Shaowei Huさんは東京工業大学で博士とありますが、理化学研究所の侯研究室で研究を行いました。上図のチタンヒドリドに対して窒素を常圧で作用させると窒素結合が切断されて最終的にアンモニアが生じます。アンモニア合成として未だに利用されているハーバー・ボッシュ法の代替研究が盛んですが、その有力候補の1つとして数えられる研究であるといえます。

“Dinitrogen Cleavage and Hydrogenation by a Trinuclear Titanium Polyhydride Complex”

Shima, T.; ?Hu, S.; Luo, G.; Kang, X.; Luo, Y.; Hou, Z. Science, 2013, 340, 1549. DOI:10.1126/science.1238663

 

多孔性錯体の構造をつくりわける:福島知宏さん

ja-2012-03588m_0003

福島知宏さんは京都大学北川研究室出身。代表的な研究は錯体の結晶化するときの反応性の違いを利用した多孔性金属錯体のドメイン構造の作り分け。非常に注目されている分野であり、優秀な研究員・学生がいるなからで良い結果をあげるのは大変であると思いますが、ここで、15報ほどの論文に関わっており、かなりプロダクティビティが高いようです。

“Modular Design of Domain Assembly in Porous Coordination Polymer Crystals via Reactivity-Directed Crystallization Process”

Fukushima, T.; Horike, S.; Kobayashi, H.; Tsujimoto, M.; Isoda, S.; Foo, M. L.; Kubota, Y.; Takata, M.; Kitagawa, S. J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 13341. DOI:10.1021/ja303588m 

酸ー塩基協奏触媒による不斉マイケル付加反応:堀部貴大

mcontent

堀部貴大さんは名古屋大学石原研究室出身。現在はUCバークレーのToste研究室で博士研究員として働いています。研究は石原研究室で推進する酸ー塩基協奏型触媒を用いた、不斉付加反応。いくつかの反応を開発していますが、最近のものですと、上図にあるようなα,β不飽和ケトンおよびエステルに対するリンの1,4付加反応を報告しています。他に比べて地味に見えますが、着実に合成化学を進歩させている結果だと思います。

“Chiral Magnesium(II) Binaphtholates as Cooperative Bronsted/Lewis Acid-Base Catalysts for the Highly Enantioselective Addition of Phosphorus Nucleophiles to α,β-Unsaturated Esters and Ketones”

Hatano, M.; Horibe, T.; Ishihara, K. Angew. Chem. Int. Ed. 2013, 52, 4549 DOI: 10.1002/anie.201300938

 

生物に打ち勝つ人工合成:溝口玄樹さん

Nature-template

最後の溝口玄樹さんは以前ケムステでもとりあげた(記事:生物に打ち勝つ人口合成)研究の筆頭著者。北海道大学の及川・大栗研究室で博士をとり、現在はダートマス大学のMicalizio研究室で博士研究員として働いています。最近第一著者ではないですが、既に論文になる結果に関わっており(DOI: 10.1021/ja504374j)博士研究員の期間にどれだけ成長できるかは楽しみです。大栗グループではアルカロイド生合成の経路をフラスコ内で模倣して、同じ中間体から一挙に5種類の化合物群の作り分け(骨格多様化合成)に成功しました。詳細は記事をごらんください。

“Biogenetically inspired synthesis and skeletal diversification of indole alkaloids”

Mizoguchi, H.; Oikawa, H.; Oguri, H. Nat. Chem. 2014, 6, 57. DOI:10.1038/nchem.1798

 

金属でない触媒反応の開発:百合野大雅さん

mcontent-1

最後に滑り込んだ、百合野大雅さんは京都大学丸岡研究室出身。現在は大阪大学真島研究室で特任助教をしています。ラーメン好きの面白い子です。研究は金属を使わない触媒、つまり有機触媒を用いた反応開発。アミナールを出発物質として様々な求核剤と反応させています。寺田・秋山らによって開発されたキラルなリン酸触媒を用いれば、不斉反応にも展開できます。恐らく実験現場で偶然単離したアミナールを使って、自身で進めた結果のように思われます。なかなかおもしろい反応ですね。

 

“Acid-Catalyzed In Situ Generation of Less Accessible or Unprecedented N-Boc Imines from N-Boc Aminals”

Kano, T.; Yurino, T.; Asakawa, D.; Maruoka, K. Angew. Chem., Int. Ed. 2013, 52, 5532. DOI:10.1002/anie.201300231

 

その他日本人以外のファイナリストも注目です。毎回ここで述べていますが、研究室の重要テーマを担った強者揃い。良い研究者は学生の時も良い仕事をしています。今後のライジングスターとなる研究者がいるかもしれませんのでぜひチェックしてみてください。それにしても中国人が多いですね。中国からの応募だけでなく欧米からの中国人学生の応募がかなりあることが伺えます。負けてられないですね!

さて、今回選ばれたファイナリストは本年9月21日~24日にスイス・グリーンデルワルドで行われるReaxsys Inspiring Chemistry Conferenceに招待されます。これで終わりでなくてここから受賞者3名が選ばれるわけです。近日発表らしいのでファイナリストはドキドキして待ちましょう!

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. ケムステスタッフ徹底紹介!
  2. 活性酸素を効率よく安定に生成できる分子光触媒 〜ポルフィリンと分…
  3. オペレーションはイノベーションの夢を見るか? その2
  4. 小さなケイ素酸化物を得る方法
  5. 【解ければ化学者】ビタミン C はどれ?
  6. アメリカ大学院留学:博士候補生になるための関門 Candidac…
  7. 【ケムステSlackに訊いてみた①】有機合成を学ぶオススメ参考書…
  8. 向かい合わせになったフェノールが織りなす働き

注目情報

ピックアップ記事

  1. 4種のエステルが密集したテルペノイド:ユーフォルビアロイドAの世界初の全合成
  2. 超原子結晶!TCNE!インターカレーション!!!
  3. 抗ガン天然物インゲノールの超短工程全合成
  4. センター試験を解いてみた
  5. 有機反応を俯瞰する ーヘテロ環合成: C—X 結合で切る
  6. 2018年ケムステ人気記事ランキング
  7. 個性あふれるTOC大集合!
  8. ルイス酸性を持つアニオン!?遷移金属触媒の新たなカウンターアニオン”BBcat”
  9. システインの位置選択的修飾を実現する「π-クランプ法」
  10. セミナー/講義資料で最先端化学を学ぼう!【有機合成系・2016版】

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2014年6月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

注目情報

最新記事

フィーゼルマン チオフェン合成/Fiesselmann Thiophene Synthesis

概要フィーゼルマン チオフェン合成(Fiesselmann Thiophene Synthesi…

“とび跳ねる水滴”に潜む物理 〜接触時間とエネルギー源で読む撥水・防氷のテク〜

熱したフライパンに落ちた水滴が、玉になってコロコロと走り回り、冷えた面では、結露水が合体した瞬間に跳…

AI時代に研究者がすでに持っている力・これから伸ばしたい力

論文要約や文献検索など、研究現場でもAI活用が日常化する一方、「自分の仕事の先行き」に漠然とした不安…

miHub®を活用した探索的データ解析の実践

開催概要研究開発においてデータ活用が進む中、機械学習モデルの構築や予測解析に…

“ある特効薬”のはなし ~本田宗一郎氏の回想から

Tshozoです。最近実家に戻っては色々と廃棄するなどの店じまいを少しずつ進めているのですが、中…

高分子鎖を束ねた新しい共重合体「束状共重合体」が誕生

第715回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 工学系研究科(植村研究室)に所属されていた亀谷…

2026年「有機溶媒危機」へのアンサー。北大発・メカノクロスが挑む、溶媒に依存しない新たな合成法 = “メカノケミカル有機合成”の社会実装

株式会社メカノクロスは、メカノケミカル有機合成技術の社会実装に挑む北海道大学発の…

“壊れないよう” に作ってきた半導体ポリマーを、あえて “壊れるよう” に作る化学

半導体ポリマーは長いあいだ、「いかに壊れにくく、長持ちさせるか」といったような安定性を競って進歩して…

有機合成化学協会誌2026年7月号:固体高分子電解質・電子ドナー・アクセプター錯体・機械学習法・trichodermamide類・エナンチオ選択的スキップジエン合成法

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2026年7月号がオンラインで公開されています。…

第62回Vシンポ「見えない空気を科学する~センサによる室内環境・臭気の見える化と快適空間デザインの最前線~」を開催します!

こんにちは、Macyです。第62回Vシンポのご案内をさせていただきます。今回は、前回同様…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP