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テキサス大教授Science論文捏造か?

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研究や論文の捏造話がたえず、あまり記事にしたくないところもありますが、なんと過去にこの「化学者のつぶやき」で取り上げたある研究も捏造であった?という一件がありましたので報告させていただきます。

今から3年前、2011年Science誌に以下の「力学的エネルギーによる逆クリック反応」という注目すべき研究が報告されました。

Unclicking the Click: Mechanically Facilitated 1,3-Dipolar Cycloreversions
Brantley, J. N.; Wiggins, K. M.; Bielawski, C. W.
Science 2011333, 1606-1609. DOI: 10.1126/science.1207934

クリック反応(ヒュスゲン環化付加反応)で形成された安定なはずのトリアゾールがなんと超音波により”逆クリック反応”を起こしアルキンとアジドに変換されたという驚きの報告でした。力学的なエネルギーを分子に伝えた結果として大変おもしろく、簡単な記事を書き紹介しました(記事:力学的エネルギーで逆クリック! 2010年10月11日)

しかしながら今年になり、本研究の著者であるテキサス大学オースティン校Bielawskiグループ一連の捏造疑惑が報道されました。現在この論文を含め、同グループから発表された論文3報に捏造の疑義がかけられています[1-4]

疑惑は10報近くに広がる可能性も…?

捏造が疑われるいずれの論文にもKelly M.Wigginsという学生(修了済み)が関わっており、単独で捏造を行ったことを認めているようです。

WigginsがBielawskiグループから報告した論文は、Science1報を筆頭に、JACS 3報、 ACIE, Polym. Chem. 各2報、Chem. Sci., J. Polym. Sci. Part A, J. Mater. Chem., Chem. Soc. Rev.各1報と華々しい結果です[6]。Scienceの他にPolym. Chem.とChem. Sci.に掲載された論文について、編集部より公式に捏造の疑惑が発表されています[1]。他の論文も今後調査が行われる可能性があります。

Bielawski教授は辞職

Biel-2

話を逆クリック反応の論文に戻します。Science誌における捏造の例として、上図にあるように反応前後の変化を示すはずの緑色と黒色の線が同一であることなどが指摘されています。2014年6月30日の時点では、Bielawski教授本人が「追試の結果、結論に変更がないことを確認した(successfully repeated the experiments in question and found that the conclusions of the report were unchanged)」とC&EN誌に証言しています[3]。しかし、それから5か月以上経過した現在でも訂正は行われていません。

さらに、先日12月8日の報道にて、Bielawski教授が大学を辞任したこと(現在は韓国のUlsan National Institute of Science & Technologyに在籍)、そしてWigginsもポスドク先を辞任したことが報じられており論文の信憑性が非常に低くなってきました[1]

捏造は科学を停滞させる

この報告に胸を高鳴らせ、Bielawski教授の講演に感嘆した筆者としては、この結果が非常に悲しく残念でなりません。

Bielawski教授も、学生・ポスドク時代から華々しい報告を行い、触媒開発から高分子材料まで有機化学の幅広い分野で活躍されていましたが…残念です。

Chem-Stationでは、これまでもデータ・科学に正面から向き合うことを訴えてきました。最近、研究者による捏造が世間を騒がせるようになりましたが、真摯な態度で研究に向き合っていきましょう。

参考文献

関連書籍

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関連論文

公式に捏造が疑われている論文は以下のとおり

  • [6] Brantley, J. N.; Wiggins, K. M.; Bielawski, C. W. Science 2011, 333, 1601. DOI: 10.1126/science.1207934
  • [7] Wiggins, K. M.; Bielawski, C. W. Polym. Chem. 2013, 4, 2239. DOI: 10.1039/C2PY20855E
  • [8] Wiggins, K. M.; Moerdyk, J. P.; Bielawski, C. W. Chem. Sci. 2012, 3, 2986. DOI: 10.1039/C4SC90048K
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