[スポンサーリンク]

一般的な話題

自由研究にいかが?1:ルミノール反応実験キット

[スポンサーリンク]

 

学生の皆さんは夏休みですね。夏休みといえば自由研究。小中学生は必須、さらには高校でもあるところにはあるらしいです。そんな自由研究や教育用の教材として適した教材を紹介したいと思います(遅いよ!という声が聞こえてきそうですが)。

第一弾は「ルミノール反応実験キット」。

 

ルミノール反応?

ケムステをみている方にはいまさらという方も多いかもしれませんが、ルミノールは以下の化合物。IUPAC名だと5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンといいます。 3-ニトロフタル酸があれば、2工程で合成可能な分子です。

2015-08-16_11-28-57

 

このルミノール、アルカリ性の水溶液中で過酸化水素を作用させると、遷移金属錯体やペルオキシダーゼなどの酵素を触媒とし以下のように反応します。この反応のことをルミノール反応といいます。反応機構は諸説ありますが[1]、図のようにジアザキノン中間体を経て、励起一重項3-アミノフタル酸ジアニオンに変化、これが基底状態に戻るときに紫青色に発光するといわれています。

2015-08-16_14-43-37

 

実験的にはこの発光量を測定することで、過酸化水素や、金属の微量定量およびそれらの定性試験に利用されます。応用例としては、犯罪現場の血痕検出が有名でしょう。血液に含まれるヘモグロビンの鉄錯体が触媒となり、同様の発光を示すからです。

 

実験キットの開発経緯

さて、今回紹介する「ルミノール反応実験キット」は、和光純薬から発売されていますが、なんと宮崎県警/宮崎大学との共同開発品だそうです。どうやら、現場で簡単に調製できるキットを所望していたようで、実際に利用されているらしいですよ。ちなみに下図の左は宮崎県警のマスコット・みやけいちゃん。[訂正:宮城と宮崎を間違えておりましたので訂正しました。大変失礼しました]

2015-08-25_15-23-54

 

ルミノール反応実験キットの使い方

“現場でも使える”だけあって操作は非常に簡単。ルミノールと過酸化ナトリウムを蒸留水に溶かして噴霧するだけ。冷蔵庫で遮光保存しておけば1週間程度は使えるそうです。

ルミノール溶液にサンプルを添加したり、殺人捜査のまねで血痕にふりかけてみたりするのもよし。また、イラストや文字を書いてみたりなど工夫していろいろ試してみてはいかがでしょうか。ルミノール反応の反応機構と面白い実験、考察があれば自由研究としてはばっちりですね。

 

ルミノール反応応用

これだけでは物足りない読者の皆様に、少しだけアドバンスな内容を。化学者ならば、超高感度分析のために化学発光度を向上させた「ルミノール誘導体」をつくれないか考えますよね。また、他の分子にくっつけて光らせたいなんてことも。もちろん昔から研究されています。

例えば、武田薬品で開発された高感度発光基質「L-012」もルミノール誘導体。これを使ったウエスタンブロット用化学発光試薬「イムノスターシリーズ」は高感度にウエスタンブロットのシグナル検出が可能です。タンパク質などのラベリングに使いたいなのならば、ルミノールの位置異性体イソルミノール誘導体であるABEIやTPB-Suc[2]。縮合反応でルミノール骨格をターゲット分子に導入できます。また、最近、蛍光色素BODIPYを導入して、蛍光共鳴エネルギー移動による蛍光を観測し、応用するなどなど様々なルミノール誘導体およびルミノール反応が活躍しています[3]

2015-08-23_16-48-03

 

というわけで、自由研究に最適なルミノール反応実験キットを紹介しました。おっと、そうこうしているうちに夏休みは終わってしまうかもしれませんが、第二弾も近日中に紹介します。

 

関連論文

  1. Bastos, E. L.; Ciscato, L. F. M. L.; Bartoloni, F. H.; Catalani, L. H.; Baader, W. J. Luminescence 200722, 113-125. DOI: 10.1002/bio.934
  2. (a) Kawasaki, T.; Maeda, M.; Tsuji, A. J. Chromatogr.1985328, 121. (b) Yoshida, H.; Nakao, R.; Matsuo, T.;  Nohta, H. Yamaguchi, M. J. Chromatogr.2001A 907, 39.
  3. Bag, S.; Tseng, J. C.; Rochford, J. Org. Biomol. Chem. 2015, 13, 1763–1767. DOI: 10.1039/C4OB02413C

 

関連動画

 

外部リンク

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. クライオ電子顕微鏡でATP合成酵素の回転の細かなステップを捉えた…
  2. 化学の学びと研究に役立つiPhone/iPad app 9選
  3. START your chemi-storyー日産化学工業会社説…
  4. 研究者目線からの論文読解を促す抄録フォーマット
  5. 金属材料・セラミックス材料領域におけるマテリアルズ・インフォマテ…
  6. CAS Future Leaders Program 2023 …
  7. アメリカで Ph.D. を取る -Visiting Weeken…
  8. ケムステV年末ライブ & V忘年会2021を開催します…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. ブーボー・ブラン還元 Bouveault-Blanc Reduction
  2. 多様なペプチド化合物群を簡便につくるー創薬研究の新技術ー
  3. 【2分クッキング】シキミ酸エスプレッソ
  4. 有機合成化学協会誌10月号:不飽和脂肪酸代謝産物・フタロシアニン・トリアジン・アルカロイド・有機結晶
  5. 総合化学大手5社の前期、4社が経常減益
  6. 学術オンラインコンテンツ紹介(Sigma-Aldrichバージョン)
  7. 研究室での英語【Part 3】
  8. 第122回―「分子軌道反応論の教科書を綴る」Ian Fleming教授
  9. 死刑囚によるVXガスに関する論文が掲載される
  10. クライゼン縮合 Claisen Condensation

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2015年8月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

アゾ重合開始剤の特徴と選び方

ラジカル重合はビニルモノマーなどの重合に用いられる方法で、開始反応、成長反応、停止反応を素反応とする…

先端事例から深掘りする、マテリアルズ・インフォマティクスと計算科学の融合

開催日:2023/12/20 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の影…

最新の電子顕微鏡法によりポリエチレン分子鎖の向きを可視化することに成功

第583回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院 工学研究科 応用化学専攻 陣内研究室の狩野見 …

\脱炭素・サーキュラーエコノミーの実現/  マイクロ波を用いたケミカルリサイクル・金属製錬プロセスのご紹介

※本セミナーは、技術者および事業担当者向けです。脱炭素化と省エネに貢献するモノづくり技術の一つと…

【書籍】女性が科学の扉を開くとき:偏見と差別に対峙した六〇年 NSF(米国国立科学財団)長官を務めた科学者が語る

概要米国の女性科学者たちは科学界のジェンダーギャップにどのように向き合い,変えてきたのか ……

【太陽ホールディングス】新卒採用情報(2025卒)

■■求める人物像■■「大きな志と好奇心を持ちまだ見ぬ価値造像のために前進できる人…

細胞代謝学術セミナー全3回 主催:同仁化学研究所

細胞代謝研究をテーマに第一線でご活躍されている先生方をお招きし、同仁化学研究所主催の学術セミナーを全…

マテリアルズ・インフォマティクスにおける回帰手法の基礎

開催日:2023/12/06 申込みはこちら■開催概要マテリアルズ・インフォマティクスを…

プロトン共役電子移動を用いた半導体キャリア密度の精密制御

第582回のスポットライトリサーチは、物質・材料研究機構(NIMS) ナノアーキテクトニクス材料研究…

有機合成化学協会誌2023年11月号:英文特別号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2023年11月号がオンライン公開されています。…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP