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有機合成化学協会誌2019年2月号:触媒的脱水素化・官能性第三級アルキル基導入・コンプラナジン・アライン化学・糖鎖クラスター・サリチルアルデヒド型イネいもち病菌毒素

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有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2019年2月号がオンライン公開されました。

今月号のキーワードは、

「触媒的脱水素化・官能性第三級アルキル基導入・コンプラナジン・アライン化学・糖鎖クラスター・サリチルアルデヒド型イネいもち病菌毒素」

です。今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。

◯論で忙しい時期ですね。私も◯論で忙しすぎてなんかハイになってしまっています。

そんなときだからこそ、息抜きも兼ねて有機合成化学協会誌をじっくり読みたいです。

今月号も盛りだくさんの内容となっています。

追悼:向山光昭先生を悼む

東京工業大学 鈴木啓介教授による追悼記事です。

みなさんご存知のように、昨年11月、向山光昭先生がお亡くなりになりました。本記事では、向山先生が化学界に与えた影響の大きさはもちろん、先生のお人柄の素晴らしさを改めて感じることができます。謹んでご冥福をお祈り致します。

巻頭言:リベラルな有機合成化学

今月号は筑波大学大学院 木越英夫教授による巻頭言です。

「自由になった有機合成化学は何を目指すか」

読者にも強く問いかける内容になっています。オープンアクセスです。

有機分子の触媒的脱水素化を基軸とする効率的有機合成ならびに水素貯蔵・水素製造

京都大学大学院人間・環境学研究科相関環境学専攻 藤田健一*

平成29年度有機合成化学協会 東ソー・環境エネルギー賞

精密にデザインされた均一系イリジウム触媒が魅せる触媒的脱水素反応・・・有機化合物の連続的水素化・脱水素化プロセスを極め、水素社会の実現に貢献する藤田教授らの総合論文をお見逃しなく!

銅近傍反応場が実現する官能性第三級アルキル基導入反応開発

山口大学大学院創成科学研究科 西形孝司*

2017年度有機合成化学奨励賞受賞

これぞラジカル化学の新機軸!ラジカル種の反応性を巧みに制御して官能性第三級アルキル基を導入する新手法の開発研究が、詳細かつ丁寧に紹介されています。

二量体型リコポジウムアルカロイド・コンプラナジンAおよびBの全合成

東北大学大学院理学研究科 趙 楽、權 垠相、平間正博
京都大学大学院薬学研究科 竹本佳司、塚野千尋*

世界の著名な化学者としのぎを削ったコンプラナジン類の全合成の詳細が述べられています。合成戦略の着想や、研究途中でたちはだかった壁と、それを打ち破るための取り組み、結果の冷静な分析が語られるのみならず、合成した天然物の活性評価まで紹介されている、全合成研究の醍醐味が存分に味わえる総説です。

多成分集積を指向した合成のためのアライン化学

東京医科歯科大学生体材料工学研究所 内田圭祐、吉田 優*、細谷孝充*

ベンゼン環の一部が三重結合になった短寿命化学種アラインはその反応制御の困難さから、合成中間体としての利用は限定的であった。本稿では、アライン前駆体の修飾や、アライン変換後のクリック反応やクロスカップリング反応を実現し、アラインを多能性中間体として利用する化学を確立している。

生体内でのパターン認識を可能とする次世代糖鎖クラスター

理化学研究所 小椋章弘、田中克典*

本稿では、理研クリック反応とひずみ解消クリック反応を併用することで、生体内環境を模倣した巨大な糖鎖クラスター分子を精密に作り分ける方法論を確立し、その弱い相互作用から解析が困難であった生体内における糖鎖機能の一端を明らかにしている。

サリチルアルデヒド型イネいもち病菌毒素の合成化学的研究

岡山大学大学院環境生命科学研究科 清田洋正*

イネ最大の病害はいもち病です。原因菌の毒素サリチルアルデヒド類の、Wittig転位や金属クロスカップリングを用いた全合成・生合成研究が解説されています。いもち病菌毒素は、培養手段によって、光学活性体であったり、ラセミ体であったり、また、アルデヒドとアルコールが平衡?であることも示唆されています。

Rebut de Debut

今月号のRebut de Debutは3件あります。全てオープンアクセスですので、ぜひご覧ください。

アゾール化合物から発生する金属カルベン種を鍵とした多様な分子変換反応(相模中央化学研究所)中野 健央

現在でも新知見が見出されるビニルシクロプロパン転位反応明治薬科大学)田湯 正法

共有結合性有機構造体(COF)の合成と性質(産業技術総合研究所)加藤 南

感動の瞬間(Eureka Moment in My research):錯体合成から触媒機能の発掘,そしてまた錯体へ

感動の瞬間(Eureka Moment in My research)の第八弾は、名古屋大学 西山 久雄 名誉教授による寄稿記事です。

ご自身の代表的な分子であるビスオキサゾリニルピリジン(Pybox)にまつわる感動秘話が描かれています。オープンアクセスですのでぜひご一読ください。

 

これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズを参照してください。

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博士(理学)。大学教員。娘の育児に奮闘しつつも、分子の世界に思いを馳せる日々。

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