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有機合成化学協会誌2022年5月号:特集号 金属錯体が拓く有機合成

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有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2022年5月号がオンライン公開されました。

連休も明け、新人教育も落ち着きつつある今日この頃。有機合成化学協会誌を読んで一息つきましょう。

今月号は特集号 金属錯体が拓く有機合成」です!

今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。

巻頭言 有機(金属)科学を少し愛して、長く愛して、そしてこれから

今月号の巻頭言は、慶應義塾大学理工学部 垣内 史敏 教授による寄稿記事です。有機金属化学は、筆者にとってはまだまだ謎が多く魅力を秘めた分野です。今年の有機金属若手の会にも参加するので、様々な研究発表が聴けるのが楽しみです。

湾曲型アントラセン2量体の活用法:機能性の金属架橋カプセル

岸田夏月、吉沢道人*

*東京工業大学科学技術創成研究院

筆者らのグループではアントラセン2量体を湾曲したビルディングブロックとして用い、様々な分子構造体を生み出しており、本論文では金属イオンで架橋したカプセルについて、その多様な空間機能が紹介されている。芳香環に囲まれた孤立空間は、不思議なほどに多様な分子を包接し、反応性や構造への独特な機能を示す。これまでの成果がまとめられた力作ですので、ぜひご一読ください。

基質認識部位をもつ遷移金属触媒の創製と位置選択的、基質特異的な炭素-水素結合変換反応の開発

國信洋一郎*

*九州大学先導物質化学研究所

配向基、すなわち、基質に大きく依存した従来の位置選択的な炭素-水素結合変換反応とは異なり、非共有結合性相互作用を巧みに取り入れた触媒の秀抜なデザインで位置選択的、且つ基質特異的な炭素-水素結合変換反応を創出してきた著者らのこれまでの取り組みがまとめられています。是非ご一読ください。

ロジウム触媒を用いた縫合反応による拡張π共役分子の迅速合成

新谷 亮*

*大阪大学大学院基礎工学研究科

ロジウム触媒を用いて2つの異なるオリゴ(シリレン-エチニレン)間を縫い合わせるように複数の炭素-炭素結合を一挙に構築する「縫合反応」により、新規な縮環オリゴシロールを合成するという俊逸の方法論に関する総合論文です。ロジウム触媒を知り尽くした筆者による新規π共役系化合物合成の妙技を堪能いただければと思います。

銀触媒の特異な化学的性質を利用した選択的分子変換法の開発:理論解析と実験的検証

伊藤翼、植田潤、原田慎吾*、根本哲宏*

*千葉大学大学院薬学研究院

著者らが先駆的に開拓してきた、銀カルベン種・銀ナイトレン種が示す他の金属とは一線を画した特異な反応性について、理論計算によるその特異性の理解を含めた有機合成化学への応用例を概観できます。理論と実験の協奏が織りなす美しい「銀世界」を楽しめる総合論文です。

遷移金属→Z型配位子相互作用に立脚した触媒的カップリング反応の開発

亀尾 肇*

*大阪府立大学理学系研究科分子科学専攻

「押してダメなら引いてみろ」

遷移金属触媒に結合している配位子にも当てはまります。筆者らの電子を引っ張る配位子(Z型)を用いた不活性結合の切断戦略が分かりやすくまとめられています。

シクロペンタジエノン金属錯体による金属配位子協働的結合切断/形成反応とその触媒応用

東 拓也、楠本周平*、野崎京子*

東京大学大学院工学系研究科

今や一大研究領域に発展した炭素―水素結合の官能基化反応は、炭素-水素結合の切断過程から始まる。本総合論文では、今後斬新な分子変換反応の実現につながると期待される、新しい反応機構を経る炭素-水素結合の切断素過程に関する研究が紹介されています。ぜひご一読ください。

柔軟なペプチドを骨格にもつ金属錯体を用いた複合体の設計と合成

三宅亮介*

*お茶の水女子大学基幹研究院自然科学系

生体のもつ構造柔軟性は、その多彩な機能発現の源となる重要な要素です。よって、人工的な系においても生体と同等の構造柔軟性を付与することができれば極めて魅力的な機能性材料の開発に繋がると期待できます。本論文では、柔軟な短いペプチドを金属イオンと複合化することで得られる様々な構造体の開発と、得られた構造体が示す興味深い機能について紹介します。

ホウ素あるいはスズを含む有機典型金属化合物が拓く有機合成

吉田拡人*

*広島大学大学院先進理工系科学研究科

本総合論文では,ホウ素やスズのルイス酸性抑制/付与によって,触媒的ボリル化およびスタニル化の選択性や反応性を制御し,有機合成化学上重要な有機ホウ素および有機スズ化合物を合成する手法について紹介する.得られるルイス酸性抑制有機ホウ素化合物の直接クロスカップリングについても述べる.

可視光エネルギーを分子変換へ利用する金属錯体の開発

稲垣昭子*

*東京都立大学大学院理学研究科化学専攻

近年光エネルギーを利用した有機合成が注目されています。多くの場合、光増感剤から有機基質へのエネルギー移動過程を含むのに対して、本論文では遷移金属触媒へとエネルギーを与える新たな反応設計がわかりやすくまとめられていますので、ご一読ください。

Chiral-at-Metal錯体の精密設計:四面体型キラル亜鉛錯体の合成と触媒機能

遠藤健一、Yuanfei Liu、宇部仁士、長田浩一塩谷光彦*

*東京大学大学院理学系研究科化学専攻

キラリティーを有する分子の一方の鏡像体は、その不斉な構造に由来した多彩な機能を示します。非対称なアキラル配位子により金属中心にキラリティーが生じた光学的に純粋な四面体型chiral-at-metal錯体は、新たなタイプのキラル分子としてとても魅力的です。本論文では、chiral-at-metal錯体の設計原理と、最近実現された安定な四面体型chiral-at-metal錯体の開発、ならびにその優れた反応性について紹介します。

生体関連遷移金属錯体を触媒とする脂肪族および芳香族C–H結合の水酸化反応

森本祐麻*伊東 忍*

*大阪大学大学院工学研究科

炭化水素の水酸化は、一見非常にシンプルですが、高温・高圧といった過酷な条件を必要とする高難度な分子変換反応です。一方、天然では鉄や銅などの第一遷移金属イオンを有する金属錯体を活性中心として有する酵素を触媒とし、これらの反応が常温常圧下という穏やかな条件で達成されています。本論文では、天然の酵素にヒントを得て開発した炭化水素の水酸化反応を触媒する第一遷移金属錯体について大阪大学の森本祐麻先生・伊東忍先生が紹介しています。

これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズを参照してください。

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博士(理学)。大学教員。娘の育児に奮闘しつつも、分子の世界に思いを馳せる日々。

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