[スポンサーリンク]

一般的な話題

近年の量子ドットディスプレイ業界の動向

[スポンサーリンク]

こんにちは Eine です。前回の記事(未来切り拓くゼロ次元物質量子ドット)にて量子ドットとは何かを簡単に紹介したのですが、ここ数年は量子ドットを用いたディスプレイの開発が盛んに行われています。2016年は、ディスプレイ業界が大きく動いた年でもありました。

知っていますか?

実はもう量子ドットを用いたディスプレイは実用化され、我々の身近な製品の中にも使われ始めています

例えば、ASUS の Zenbook NX500 というラップトップPCは Nanosys 社の量子ドットを用いた 3M 社の Quantum Dot Enhancement Film (QDEF) が利用されています。1

3M today announced that ASUS, a worldwide top-three consumer notebook vendor, will leverage the 3M™ Quantum Dot Enhancement Film (QDEF) for its new Asus NX500 Notebook PC. Specifically, ASUS’ latest mobile PC computing solution with 3M QDEF, using Nanosys™ Quantum Dots, boasts 50 percent more color than current levels found in liquid crystal display (LCD)-based electronic devices, such as notebooks, while at the same time making these devices brighter and even more energy efficient than any other high color gamut solution.

Zenbook NX500(ASUS 公式サイトから引用)

 

Nanosys は量子ドットを用いた製品を取り扱う2001年に設立されたアメリカの企業で、量子ドットディスプレイ業界をリードする企業の1つです。QDEF というのは簡単にいうと、青色の LED をバックライトとして、量子ドットシートを挟んだ構造を持つ液晶パネルです。狭くて鋭い発光スペクトルを持つ量子ドットを用いているため、高い色再現性を達成しています。

また、2013年に発表された SONY のブラビアW900Aシリーズなどには、「トリルミナス®ディスプレイ」が搭載されていますが、これは QD Vision 社の「Color IQ」という技術と SONY 独自の技術が組み合わされて開発されたものです。2

「トリルミナス®ディスプレイ」効果と色域の比較イメージ(関連リンク2より引用)

フルハイビジョンテレビの最上位機種となるW900Aシリーズには、色の再現能力を向上させた新開発の「トリルミナス®ディスプレイ」を搭載。「トリルミナス®ディスプレイ」は、米国QD Vision社が開発した発光半導体技術を用いた光学部品をソニー独自のディスプレイ技術と組み合わせることで、従来の単色LEDバックライトシステムを用いた液晶テレビよりも色の再現領域を大幅に拡大しました。さらに、この「トリルミナス®ディスプレイ」と、「X-Reality PRO」のカラーマネジメント性能を組み合わせることで、繊細な色の違いを描き出すことが可能になり、光の三原色である赤、緑、青、さらに中間色であるエメラルドグリーンなどの色を、より色彩豊かに再現できるようになりました。

これも同様に、量子ドットの狭くて鋭い発光スペクトルによる、高い色再現性を活かした製品といえます。

この QD Vision も、2004年に MIT の研究者が中心となり設立されたアメリカの企業で、量子ドットディスプレイ業界をリードする企業の1つですが、2016年の暮れにサムスン電子が買収しました。3

サムスン電子といえば、2016年は Galaxy Note 7 が相次いで爆発して話題になり(?) MIT Technology Review でも「2016年最も大きな失敗技術」にノミネート4されましたが、現在彼らは量子ドットディスプレイの市場を掌握しようと奮闘しています。QD Vision の買収も大きな目的は特許でしょう。

2016年1月のアメリカはラスベガスで開催された CES2016 でも、有機ELや量子ドット液晶、レーザー液晶など、バリエーション豊かなディスプレイが並びましたが、2017年1月5日から開催されている CES2017 でもサムスン電子は量子ドットを用いたディスプレイを紹介する模様です。5

サムスンが発表している量子ドットモニタCH711(関連リンク5より引用)

また、2016年12月26日に、日立化成株式会社液晶ディスプレイの広色域化を実現する光学フィルムとして、量子ドットフィルムの量産・販売を開始することを発表しました。6

日立化成は2015年12月より、量子ドットの最大手であるNanosys, Inc.(本社:米国カリフォルニア州、President & CEO:Jason Hartlove、以下、ナノシス社)から、量子ドットを使ったフィルム化技術等の導入を行い、開発スピードを加速しました。ナノシス社の量子ドット技術と、日立化成独自の樹脂組成技術の融合により、技術開発から約1年という短期間での量子ドットフィルムの量産・販売開始となります。

数年前は「ディスプレイ業界はもう飽和している」などと度々言われていましたが、こう振り返ってみると、ディスプレイというのはまだまだ開発及び差別化の余地があるのだなあと思い直されます。

量子ドットは理論上量子効率がとても高いので、上手く応用され、電力消費の少ないディスプレイが開発されることを期待しています。画面の大型化が進むスマートフォン等に於いても、ディスプレイの消費電力とバッテリーの連続使用可能時間というのは大きな課題となります。2017年は量子ドットを用いたディスプレイがさらに普及する年になるのでしょうか、期待です。

関連リンク

  1. 3M – ASUS Adopts 3M™ Color Enhancing Technology for ASUS ZENBOOK NX500 Notebook PC
  2. SONY – 広色域ディスプレイ搭載モデルなど、液晶テレビ〈ブラビア〉4シリーズ8機種発売
  3. THE DONG-A ILBO – Samsung takes over QD Vision in an M&A spree
  4. MIT Technology Review – The Biggest Technology Failures of 2016
  5. Samsung to Introduce New Quantum Dot Curved Monitor at CES 2017
  6. 日立化成株式会社 – 4K、8Kテレビの広色域化を実現する量子ドットフィルムの量産・販売を開始
Avatar photo

Eine

投稿者の記事一覧

音楽ゲームが好き。ナノメートルの世界で分子や電子の気持ちを考える日々

関連記事

  1. 【産総研・触媒化学研究部門】新卒・既卒採用情報
  2. Kindle Paperwhiteで自炊教科書を読んでみた
  3. Reaxys PhD Prize 2020募集中!
  4. システインの位置選択的修飾を実現する「π-クランプ法」
  5. MFCA -環境調和の指標、負のコストの見える化-
  6. 芳香環交換反応を利用したスルフィド合成法の開発: 悪臭問題に解決…
  7. 世界初の金属反応剤の単離!高いE選択性を示すWei…
  8. (+)-Pleiocarpamineの全合成と新規酸化的カップリ…

注目情報

ピックアップ記事

  1. ジャスティン・デュボア Justin du Bois
  2. 【医薬分野のみなさま向けウェブセミナー】マイクロ波を用いた革新的製造プロセスとヘルスケア領域への事業展開
  3. フッ化セシウムをフッ素源とする立体特異的フッ素化有機分子の合成法の開発
  4. 複雑なモノマー配列を持ったポリエステル系ブロックポリマーをワンステップで合成
  5. 東大薬小林教授がアメリカ化学会賞を受賞
  6. 優れた研究者は優れた指導者
  7. 第146回―「原子から社会までの課題を化学で解決する」中村栄一 教授
  8. 【いまさら聞けない?】アジドの取扱いを学んでおこう!
  9. ボールペンなどのグリップのはなし
  10. ノーベル化学賞、米・イスラエルの3氏に授与

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年1月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

ノーベル賞受賞者と語り合う5日間!「第18回HOPEミーティング」参加者募集!

申し込みはこちら概要主催:独立行政法人 日本学術振興会(JSPS)開催地:神奈川…

光触媒による高効率なCO2還元の実現―まさかの光を弱く当てることが重要だった―

第709回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 理学院(前田研究室)博士後期課程2年の仲田竜一 …

「π-πスタッキング」という言葉が生む誤解【芳香環の相互作用を見直す: 前編】

芳香環が平行に並んで近接しているとき、その構造を「π–π スタッキング」と表されることがよくあります…

一重項酸素によるC(sp2)−P結合切断を用いた長波長光によるリン化合物のアンケージング

第 708 回のスポットライトリサーチは、同志社女子大学 薬学部 医療薬学科 5…

マテリアルズ・インフォマティクスにおける画像解析の活用ガイド

開催概要材料開発において、電子顕微鏡やX線トモグラフィーを用いて材料の微細構造を観察するために画…

世界初のPROTAC医薬、ついに承認 ―「タンパク質を阻害する」から「分解する」時代へ

2026年5月、創薬化学の歴史に残る大きな出来事が起きました。米国 FDA は、…

有機蛍光とは異なる新しい有機りん光の分子設計指針の発見

第707回のスポットライトリサーチは、電気通信大学 情報理工学研究科(牧昌次郎研究室)の林希久也 助…

NEDO懸賞金活用型プログラム/量子コンピュータを用いた社会問題ソリューション開発2

「NEDO懸賞金活用型プログラム/量子コンピュータを用いた社会問題ソリューション開発…

株式会社ナード研究所ってどんな会社?

株式会社ナード研究所は、化学物質の受託合成、受託製造、受託研究を通じて、研究開発…

付加重合でポリアミドを作る!?:多段階ラジカル異性化による新たなポリマー主鎖構築

第706回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院工学研究科(大内研究室)に所属されていた黒田啓太…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP