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スポットライトリサーチ

二酸化塩素と光でプラスチック表面を機能化

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第207回のスポットライトリサーチは、大阪大学大学院薬学研究科・淺原時泰 准教授にお願いしました。

今回の成果は表面不活性であるプラスチック樹脂を、光によって簡便にC-H酸化することにより、親水性表面へと転換するという驚くべき成果です。シンプルながら非常に高い応用性が期待される技術であり、Chem. Commun.誌原著論文、およびプレスリリースとして公開されています。

“Photochemical C–H oxygenation of side-chain methyl groups in polypropylene with chlorine dioxide”
Ohkubo, K.*; Asahara, H.; Inoue, T. Chem. Commun. 2019, 55, 4723. doi:10.1039/C9CC01037H

研究室を主宰されています大久保敬 教授から、淺原先生について以下の人物評を頂いております。

淺原先生の長所は、実験に対する行動力が抜群で、とにかく仕事が早いこと。一緒に仕事をしたことがある人だけが体感できるのですが、非常に気持ちよく研究を進めることができました。淺原先生はもともと有機合成、物理有機で研鑽を積んできて、その実績を持ってうちのラボに来てもらったのですが、今回の研究では全くの専門外である高分子材料を使った化学反応開発への挑戦でした。私自身も不慣れな領域でお互い手探りで進めてきて、結果的に良い仕事にまとまったので良かったと思います。

それでは今回も、現場からのコメントをお楽しみ下さい!

Q1. 今回プレスリリースとなったのはどんな研究ですか?簡単にご説明ください。

プラスチックの表面改質の研究です。安価・安全な試薬への光照射を利用してプラスチックに着色性などの機能性を付与しました。プラスチックは我々の生活には欠かせない材料ですが、疎水性であるために着色性や接着性に乏しいという問題があります。これに対し、今はプラズマ処理などの様々な技術が活用されています(カラフルなプラスチックが身の回りに多数あることからもわかるかと思います)。しかし、プラスチックが劣化してしまう、活性状態が短寿命であるなど、まだまだ課題の残されているテーマでもあります。本研究では、二酸化塩素と光というシンプルな組み合わせでこれまでにない新しいプラスチックの表面改質法を提供しています。

Q2. 本研究テーマについて、自分なりに工夫したところ、思い入れがあるところを教えてください。

基盤となる優れた技術[1]があったためその流れに乗ったというのが正直な所で、これまで経験したことが無いほどすんなり形になり、あまり工夫をしたようには感じていません。サイエンス的な観点ではありませんが、反応装置の設計に関しては色々と工夫しました。

Q3. 研究テーマの難しかったところはどこですか?またそれをどのように乗り越えましたか?

現在進行系で難しいですし、まだまだ乗り越えていないと思います。本成果を注目して頂いているのも、サイエンスや技術としてきちんと確立されているという評価ではなく、応用用途の広さからくる期待値に対してだと思っています。なので、これからこの技術のメカニズム、有用性、安全性など明らかにすべき多くの課題に挑む必要があります。

Q4. 将来は化学とどう関わっていきたいですか?

皆さんもそうだと思いますが、化学が好きというのが自分の根本にあります。考えるのも実験をするのも勿論ですが、それと同じくらい面白い研究を聞くことが好きなので、これからも面白い研究に囲まれるような環境にいたいなと思います。私個人の力では大きなことは成し遂げられないと思いますが、人と人や研究と研究を繋げられるような研究者として、面白い研究の渦の中に飲み込まれていたいと思います(溺れないようにしつつ)。

Q5. 最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

私は研究者としては才能がないなぁと感じることが多いのですが、人に恵まれる運のようなものだけは自信を持っています。先生や先輩、同期や後輩、学生さんからいつも良いタイミングで助けや刺激を貰ってきました。同期(ケムステでも何人か出ていますね)の繋がりは特に面白く、ありがたく思っているので、皆さんもまずは同年代の友人を多く作ってもらえたらと思います。
もし、友人が少ないとお嘆きの方は私に声をかけてみたら如何でしょう。一緒に新しい研究ができたら嬉しく思います。

参考文献

  1. Ohkubo, K.; Hirose, K. Angew. Chem. Int. Ed. 2018, 57, 2126–2129.

研究者の略歴

名前:淺原時泰(あさはら はるやす)
所属:大阪大学大学院薬学研究科 生体構造機能分析学分野(井上研究室
大阪大学先導的学際研究機構創薬サイエンス部門 招聘准教授(兼任)
高知工科大学環境理工学群 客員准教授(兼任)
専門:有機合成化学、高分子化学、分析化学
略歴:
2010年3月 大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻 博士後期課程修了(大島巧 教授)
2010年4月~2010年6月 大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻 特任研究員(南方聖司 教授)
2010年7月~2011年11月ミュンヘン大学化学科 フンボルト研究員(Herbert Mayr 教授)
2011年12月~2012年12月 大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻 特任研究員(明石満 教授)
2013年1月~2015年12月 高知工科大学環境理工学群 助教(西脇永敏 教授)
2016年1月~2016年12月 高知工科大学総合研究所/環境理工学群(兼任) 特任講師
2017年1月~2017年3月 大阪大学未来戦略機構 特任准教授(大久保敬 教授)
2017年4月~2019年3月 大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻 特任准教授(井上豪 教授)
2019年4月~ 現職

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cosine

博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。 関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。 素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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