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有機合成化学協会誌2024年11月号:英文特集号

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有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年11月号がオンライン公開されています。

今月号は年に1回の英文特集号です!とっても読み応えのある内容になってますのでぜひご覧ください。

今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。

巻頭言:Curiosity, Serendipity and Logicality in Organic Chemistry

 (Department of Chemistry, Indian Institute of Technology Bombay) Krishna P Kaliappan

総説・総合論文

Development of Catalytic Reactions Using Bis(pinacolato)diboron and Their Applications to Syntheses of Pharmaceuticals and Luminescent Dyes

東林修平*

慶應義塾大学薬学部

1993年に登場した白金触媒によるアルキンのジホウ素化を皮切りに、ビス(ピナコラート)ジボロン(B2pin2)を用いる有機合成手法はいまだ発展し続けています。本論文には、ボリル化糖、アシルボラン、ならびに1,2-ジオールを合成する新手法が示されています。さて、著者はB2pin2をどのように使ったのでしょう?答えは論文に!

The Synthesis, Structure, and Supramolecular Chemistry of Anthracene Rings and Cages

豊田真司*

東京科学大学理学院化学系

本論文では、アントラセンを構成要素とする大環状化合物やカゴ形化合物の合成とフラーレン類とのゲスト認識について、著者らの研究を中心に紹介しています。一般に、大環状化合物の合成収率は低く、単量体の大量合成が鍵となります。本論文では、単量体であるジハロアントラセンやジボリルアントラセンの効率的な合成法も紹介しています。

Mugineic Acids: Natural Product Chemistry Contributing to Environmental Issues

茅野公佳、鈴木基史、村田佳子、小笠千恵、難波康祐*

徳島大学大学院医歯薬学研究部(薬学域)

ムギネ酸はイネ科植物の根から分泌されるファイトシデロフォア(植物性親鉄剤)であり、土壌からの鉄(Ⅲ)イオンの吸収に関与している。著者らによる独自のムギネ酸アナログ類の合成とそこから派生する関連諸研究は、社会実装に直結すると期待されるものも含め、有機合成化学・天然物化学・植物生理学・植物栄養学などの観点から注目に値する成果を挙げている。

Theoretical Analysis of Multi-conformational Transition States and Diastereo/Regio-selective Reactions in Natural Product Synthesis

占部大介*、深谷圭介

富山県立大学工学部生物工学科

合成、特に天然物合成研究では他工程を必要とするが、鍵となる工程での反応性や、選択性を予測することができれば、大幅な研究効率の改善が予想される。本記事は、占部先生および深谷先生らが確立した反応遷移状態計算プロトコルを、実際の反応に応用した例の解説で、今後の合成研究の展開を考える上で有用です。

Discovery, Design, and Development of Precious-metal-free, Room-temperature Phosphorescent Materials

清水正毅*

京都工芸繊維大学分子化学系

本論文は、京都工芸繊維大学の清水先生が推進している室温りん光分子について、 1,4-ジベンゾイル-2,5-ジブロモベンゼン、2,5-ジシロキシテレフタレート、1,4-ジベンゾイル-2,5-ジシロキシベンゼン、1,4-ジアロイル-2,5-ビス(シリルメトキシ)ベンゼン、およびスルホニル-、ホスフィニル誘導体に分類して、構造と発光特性との相関について記載しています。興味深い光特性のみならず、室温りん光分子を発見したときの経緯についても、臨場感たっぷりに描かれており、必読の一稿です。

Triarylborane Catalysis: From Hydrogenation of Unsaturated Molecules to H2 Purification

森下泰地1、久田悠靖1、橋本大輝1、生越専介1、星本陽一1,2*

1大阪大学大学院工学研究科

2大阪大学大学院工学研究科附属フューチャーイノベーションセンター

「デザイン型ホウ素触媒??」

ホウ素化合物は新たな水素化触媒として期待されていますが,実用性において改善の余地が大きいものでした。筆者らは,計算化学と機械学習を駆使して, 一風変わった構造をもったホウ素触媒をデザインし、金属触媒では困難であった粗水素利用や多官能性基質の還元的アミノ化反応など,革新的な反応を開発してきました。

The Bioorganic Study of Iezoside: A Novel SERCA Inhibitor from the Marine Cyanobacterium

栗澤尚瑛1岩﨑有紘2末永聖武1*

1慶應義塾大学理工学部

2中央大学理工学部

天然物化学研究のすべてがここにあります! ものとり、構造決定、全合成、作用機序解明をコンプリートした力作で、著者らの天然物に対する情熱がひしひしと伝わってきます。研究室メンバーでご一読いただければ、天然物化学の魅力を共有できることは間違いありません。

Exo-Cleavable Linkers: Enhancing Stability and Therapeutic Efficacy in Antibody-Drug Conjugates

渡部友博*、藤井友博、松田 豊*

味の素株式会社

本研究は、抗体薬物複合体(ADC)の安定性と効果を飛躍的に向上させる革新的な ”Exo”-ペプチドリンカーを紹介します。従来の切断型リンカーの課題を克服し、親水性と副反応の低減を実現。In vitroおよびin vivoでの評価により、ADCの安全性と有効性が向上したことが示されています。ADCデザインにおける分子工学の新たな展開をご覧ください。

ROS Generation by Fullerenes for Biology and Nanotechnology

山越葉子*

スイス連邦工科大学チューリッヒ校

フラーレンに光を当てると活性酸素種(ROS)が発生します。この総説では、(1)有機合成化学を駆使してフラーレンを修飾し、光線力学的療法(PTD)に展開する研究、また、(2)原子間力顕微鏡(AFM)のチップに搭載して、表面でDNA オリガミの構造を制御する画期的な成果が紹介されています。

これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズを参照してください。

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博士(理学)。大学教員。娘の育児に奮闘しつつも、分子の世界に思いを馳せる日々。

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