[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

化学系ラボでSlackを使ってみた

[スポンサーリンク]

皆さんこんにちは。最近のマイブーム≒生産性向上となっているcosineです。

昨年度初めより、グループ内コミュニケーションの円滑化・効率化を意図して、Slack(スラック) を導入しました。様々な局面でメールよりずっとラクだと感じることには事欠きません。

ただそれを言葉で説明するのはとても難しく、実際体験してみないことにはおそらく分かりません。その一方で化学系ラボでSlackを導入しているところは、まだまだ多くないことと思います。

そこで導入への参考になればと思い、本記事ではSlackを筆者のグループで使った印象、具体的な活用事例を紹介したいと思います。

Slackって何?

公式ページより引用

グループ内コミュニケーションを円滑化するための、ビジネス用グループチャットです。LINEグループを仕事に使う、というイメージが近いかもしれません。しかしながら、さまざまな面でLINEよりはビジネスに適した仕様になっているのが特長です。

ソースコードの共有が綺麗に出来るためSE向けと言われてましたが、実験系ラボでも便利に使えます。もちろんスマホ対応です。最近日本語版も公開されましたので、国内でも益々普及を見せていくことでしょう。

ネット上では既に多くの解説記事がありますので、より詳しい話は関連リンクをご参照下さい。

どんな使い方をしているの?

現在は、筆者が面倒見ているサブグループ限定(14人)で使っています。ラボ全体に広げるのは説得の手間が要りそうに思えたので、さしあたっては手の届く範囲で使ってます。

その事情から最上位カテゴリである「チーム」は、サブグループ名で括っています。各メンバーは複数のチームに所属出来ますので、理論的にはラボやグループをまたぐ使用も可能だと思います。

チーム下層にはワークスペースとしての「チャンネル」10個程度作っています。原則オープンで、チームに所属する人間なら誰でも閲覧できるようにしています。

チャンネルは、目的別に使うイメージで設置しています。たとえば下記のような用途です。そもそもがコミュニケーションツールなので、ルールは厳密にしないほうが上手く回ると思います。

研究プロジェクトごとのディスカッション

プロジェクト毎にチャンネルを作り、携わっているメンバーをアサインすることで、効率的な情報共有ができるようになります。メンバーは複数のチャンネルをフォローできるため、研究プロジェクトを掛け持ちするメンバーが増えつつある状況にベストマッチしています。

ニュース・論文ASAP・ブログなどの新着情報共有

SlackはTwitterやRSSとも連携できます。これを利用し、「これだけはいつも見といてね!」的な情報源をまとめたチャンネルを作り、メンバーにフォローさせるようにすれば、ゆるーい教育システムとして使うこともできます。

たとえばケムステブログC&EN、化学系トップジャーナル(J. Am. Chem. Soc.Angew. Chem. Int. Ed.など)のASAPなどは、RSSをSlack内の新着専用チャンネルに飛ばすよう設定しています。以前紹介した合成化学TIPS botも、専用のチャンネル内につぶやかせています。

ただ大きな難点はインターフェースが字だらけで見づらいことです。ここは改善を切に希望したいところ・・・。更新頻度が高いと通知も鬱陶しいので、好みで通知OFFにしてもいいことにしています。

抄録会の原稿共有

筆者のグループでは、週1で最新文献を紹介する抄録会を行なっています。作った資料を、チャンネル内にアップして共有しています。

こんな感じでPDFビューワ機能も付いています

食べ会/飲み会の周知や、雑談コーナー

スケジュール変更、事故アラート、講演情報など、一般的な情報周知に加えて、雑談用のチャンネルも別に作ってあります。今では遅刻・欠席のお知らせ場所に成っています(笑)。
メンバー全員が見られるので、居室が違っても今日は誰がいて誰がいないか、などもある程度掴めるのは良い点です。

そもそもなぜ導入したのか?

筆者もマネジメント的立場になり、以下のことにしばしば頭を悩ませていました。

  • メールの数が増える一方で、応対が面倒になってきた。また内外の情報・スパムも等価なので、重要なものを見過ごすことが増えてきた。
  • 添付ファイルをメールでやりとりすることが増えているが、送信サイズ上限のために一手間必要なことが多い。
  • スマホネイティブ時代の学生が増え、メール経由だとどうにもレスが悪いような気が・・・
  • 新着論文・役立つサイト(URL)なども簡単に共有したいが、メールで毎回送るのは意外と面倒。
  • 複数プロジェクトを掛け持ちするメンバーが増えてきた。メーリングリストにすると数が増えすぎて、管理も大変。

こういった点を上手く解決してくれそうであり、かつ大変評判の良いツールということで、Slackの導入に踏み切ったわけです。最初は少人数有志から徐々に広げていくようにすると無理がありません。

LINEやFacebookメッセンジャーじゃダメなの?という意見は当然あると思います。もちろんそちらの活用も検討しました。

ただ、ログが残らない、プライベートで高頻度に使うことに由来する干渉や誤爆リスク、投稿済メッセージの修正/削除不可、UIがイケてない、乗っ取られリスクがある・・・などなど、仕事に使うには諸々不都合が多く、断念せざるを得ませんでした。

Slackは招待者限定でメッセージのやりとりをする仕様なので、誤爆・漏洩リスクは特に大きく下がります。これはメンバー間やりとりの心理ハードルを下げるという無意識に訴えかける効果があり、意外にバカに出来ません。

導入して何が良くなった?

グループ内のやりとりは原則としてSlackに収束させ、メールは対外的やりとりに限るようにしました。すると日常的に行なっている多数の軽めやりとりがシンプルに片付いていくため、気づかないうちに諸々ラクになっていきます。たとえば下記の点は、大きな改善効果を実感しているものです。

メッセージ交換が楽になった

まず、タイトルを打たなくていい。○○様の書き出し、虚礼挨拶文、結び署名を書かなくて良い。勝手知ったる内部メンバー相手にこんなものは不要ですので、スキップできるならそれに越したことはありません。

スマホベースでリアルタイムにやりとりできるようになった

メールだと相手のレスポンス期待値が読みづらいのですが、Slackだとある程度臨場感のあるやりとりができます。簡単なことならその場でサクっと話が前に進むようになりました。

ファイルのやり取りが楽になった

特定プロジェクトのメンバー指定で共有するのも、チャンネル内にドラッグ・アンド・ドロップするだけなので、大変簡単です。やりとりしたファイルもリストとして一元化されるため、どこにいった!?というのが減ります。

意見出しが捗るようになった

一言二言のちょっとしたアイデアを書くには、メールだと少なからずハードルがあるようです。Slackではオープンな雰囲気も手伝って、その点がとても気軽です。

やりとりが埋もれづらくなった

チャンネル毎に話題が分類されることに加え、スパムメールに悩まされることが減ったのも大きいです。優先度の低いチャンネルは、適宜通知を切ったり、閲覧頻度を下げればそれでOK。

どれだけ生産性が上がった?

RescueTimeというソフトで、ラボでのPC活用時間をしばらくモニターして見ました。するとメールソフトに向き合う時間の1/4~1/7しかSlackに使っていないことがわかりました。

ある一日のPC占有時間・筆者版

送信件数は、実際数えてみるとメールもSlackも変わりません。一件あたりの時間と手間が違うからこそ、このような結果になっているわけです。それでいて、グループ内やりとりは特に不自由なく片付いています。情報交換の効率性は、これだけでも火を見るより明らかです。

むしろ毎日1~2時間をメールに費やしている事実が可視化されてしまい、ショックを受けるハメに・・・うむむ、全く何とかせねばならんなぁ・・・。

というわけで、何気ないことですがチリも積もれば馬鹿にならない、毎日のラボ内コミュニケーション。Slackによる時短化を検討されてみてはいかがでしょうか?

関連動画

関連リンク

Slackの基本と使い方
科学者(化学者)向けのSlack紹介記事

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 日本プロセス化学会2023ウィンターシンポジウム
  2. 光で脳/神経科学に革命を起こす「オプトジェネティクス」
  3. NMRの測定がうまくいかないとき
  4. 【動画】元素のうた―日本語バージョン
  5. 高分子マテリアルズ・インフォマティクスのための分子動力学計算自動…
  6. 全フッ素置換シクロプロピル化試薬の開発
  7. 二重可変領域を修飾先とする均質抗体―薬物複合体製造法
  8. マテリアルズ・インフォマティクス活用検討・テーマ発掘の進め方 -…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 化学系プレプリントサーバ「ChemRxiv」の設立が決定
  2. ティシチェンコ反応 Tishchenko Reaction
  3. マテリアルズ・インフォマティクスの基礎知識とよくある誤解
  4. マイクロ空間内に均一な原子層を形成させる新技術
  5. Fmoc-N-アルキルグリシンって何ができるの?―いろいろできます!
  6. ライオン、フッ素の虫歯予防効果を高める新成分を発見
  7. クラブトリー触媒 Crabtree’s Catalyst
  8. 「関東化学」ってどんな会社?
  9. ビオチン標識 biotin label
  10. 住友化学、液晶関連事業に100億円投資・台湾に新工場

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2018年1月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

光と水で還元的環化反応をリノベーション

第609回のスポットライトリサーチは、北海道大学 大学院薬学研究院(精密合成化学研究室)の中村顕斗 …

ブーゲ-ランベルト-ベールの法則(Bouguer-Lambert-Beer’s law)

概要分子が溶けた溶液に光を通したとき,そこから出てくる光の強さは,入る前の強さと比べて小さくなる…

活性酸素種はどれでしょう? 〜三重項酸素と一重項酸素、そのほか〜

第109回薬剤師国家試験 (2024年実施) にて、以下のような問題が出題されま…

産総研がすごい!〜修士卒研究職の新育成制度を開始〜

2023年より全研究領域で修士卒研究職の採用を開始した産業技術総合研究所(以下 産総研)ですが、20…

有機合成化学協会誌2024年4月号:ミロガバリン・クロロププケアナニン・メロテルペノイド・サリチル酸誘導体・光励起ホウ素アート錯体

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年4月号がオンライン公開されています。…

日本薬学会第144年会 (横浜) に参加してきました

3月28日から31日にかけて開催された,日本薬学会第144年会 (横浜) に参加してきました.筆者自…

キシリトールのはなし

Tshozoです。 35年くらい前、ある食品メーカが「虫歯になりにくい糖分」を使ったお菓子を…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP