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嬉野温泉で論文執筆缶詰め旅行をしてみた【化学者が行く温泉巡りの旅】

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論文を書かなきゃ!でもせっかくの休暇なのでお出かけしたい! そうだ!人里離れた温泉地で缶詰めして一気に論文を仕上げよう!

というわけで佐賀県嬉野市の嬉野温泉で論文執筆のための2泊3日缶詰め旅行を敢行してみました。嬉野温泉のレビューと論文執筆缶詰め旅行というコンセプトのレビューを行おうと思います。

嬉野温泉の概要

佐賀県に位置する嬉野温泉は、炭酸水素イオンを比較的多く含んだ弱アルカリ性の温泉です。弱アルカリ性の温泉に特有のとろとろとした肌触りが楽しめ、入浴後の肌がすべすべになる特徴があります。嬉野温泉は、島根県斐乃上温泉(ひのかみおんせん)と栃木県喜連川温泉(きれつがわおんせん)と並んで、日本三大美肌の湯として知られているようです。

これまでの温泉旅行の旅の記事では、温泉成分についての化学的な考察を行ってきましたが、化学的な考察については今回は省略しようと思います。嬉野温泉の泉質はおそらく典型的な弱アルカリ性温泉と同じです。一点言うとすれば、とろみがしっかりと堪能できる素晴らしい温泉でした。弱アルカリ性の温泉についての考察は、下呂温泉の記事をご参照ください: 【温泉を化学する】下呂温泉博物館に行ってきた。

論文執筆缶詰め旅行のルール

今回は主に次のルールを決めて、缶詰め旅行と呼ぶことにしました。

  • 宿泊先のホテルのチェックインができる最速の時間を目安に到着する (周辺の観光はそれまでに切り上げる)
  • 旅行中は基本的に宿泊先のホテル/旅館の部屋で論文を書く
  • 食事の際は食べすぎ/飲みすぎに気を付けて、執筆に集中できるように管理する
  • 温泉は好きなときに何度でも入ってよい
  • チェックアウトのギリギリの時間まで部屋で作業する

1泊2日だと丸一日作業に没頭できる時間がとれないので、2泊3日としました。

宿泊地の決定の判断基準

缶詰旅行の行き先を決めるには、上記のルールを実行できることが条件でした。お昼ご飯は提供されないことが普通なので、辺境地すぎて近くにお店が何もないという場所は缶詰旅行といえども避けました。また連泊するので、宿泊の値段が高すぎないことも重視しました。

また温泉の泉質の観点から候補を絞る際に、これまでの温泉巡りの経験から弱アルカリ性の泉質がよかろうと考えました。酸性の温泉と比較して、アルカリ性の温泉は肌の刺激が少なく、繰り返し入っても負担にならないと考えたからです。

最終的には佐賀県嬉野温泉で大江戸温泉物語グループのホテルを選びました。朝と晩のご飯をバイキング形式で提供しているため、連泊しても自分の裁量次第で異なるメニューが食べれると考えました。値段の安い素泊まりの旅館があればよかったのですが、朝昼晩と毎回食事を探しに行くのも時間がとられるので、朝と夜に関しては思考を停止して備え付けのバイキングに行くのはよかったように思います。大江戸温泉物語のグループのホテルは初めて利用しましたが、湯豆腐やちゃんぽん、のっぺ汁などの郷土料理の品ぞろえも多く、食事に関しても満足でした。

実際のスケジュールは次のような感じになりました。

合計で 13 時間程度を作業に充てることができました。うーん、思ったよりも少ないです。上のスケジュールの赤いブロックは論文執筆や読書などのお仕事の時間です。一方青いブロックは温泉やご飯などの休憩時間です。移動時間中も読み物をしたり、何らかの作業をしていましたがそれは13時間の論文執筆にはカウントしていません。

進捗具合

作業している間はかなり集中できていたと思います。具体的には1100 words 程度を書くことができました。論文を書くと一言で言っても、文献を調査して読んだり図を作ったりしていた時間もあるので、書いた文章の量だけでは進捗具合は測れません。”論文執筆“ となっている時間にもメールに対応したり、書いている論文とは関係のない最新論文をチェックしたり、多少の別の用事も行っていたので「まぁこんなもんかな」といった感じです。2か月前くらいから、いろいろな別のプロジェクトや研究室の用事などで中断されながら書いている論文で、reference などは含めずに全体が15000 words 程度の長めの論文を書いていました (旅行の数日後に初稿が完成しました)。そのなかの 1100 words を実質のべ2日分程度の作業時間で書くことができたと考えると、そこそこの進捗具合が得られたといってもよさそうな気がします。調子が悪いときは1日パソコンに向かって 100 words も進まないこともありますからね苦笑。世の中には、もっと爆速で論文を生み出している研究者もいるかもしれませんが、個人的な論文執筆の経験値と熟練度を考えると及第点くらいでした。ちなみに帰りの移動の新幹線では、このケムステ記事の原稿を書いていたため、ケムステ記事1つもこの旅の成果の一つになります。その新幹線でも論文を書いていたら、本業の方でももう少し進捗を生めたかもしれません。

缶詰め旅行先としての嬉野温泉の総合評価

温泉の泉質は申し分なく、極楽でした。また予期していなかった高評価な点として、お茶が美味しいことがありました。研究者にはカフェイン好きの人も多いことでしょうから、美味しいお茶は執筆作業のお供に最適かと思います。

もう一つ良かった点は、周辺の雰囲気です。温泉のある町ではありますが、どちらかというと住宅街っぽいエリアでした。昼食には地域の人が利用するであろう家族経営の小さなレストランに足を運びました。良心的な値段で家庭料理のような味が楽しめる食堂が周辺にあり、とってもよかったですね。缶詰め旅行と言っても、昼食のために少し街を歩けるようなルールにしたのは精神的にもよかったように思います。一日中座りっぱなしは身体的にもよくないですからね。

総合的には大変満足な滞在と仕事の進捗でした。

改善点

2日目は缶詰めされている感じがありましたが、移動日でもあった1日目と3日目はどっしりと作業できませんでした。なので作業に充てられた時間は、企画発案当初に想像していたよりは少なかったです。しかし3泊4日となると少しダレそうな気もするので、決められた期間に高い集中力を発揮して作業する意味で2泊3日くらいが丁度よいのかもしれませんが、これを確かめるには対照実験が必要です。

また、和室に泊まったので当然ですが作業用のデスクはありませんでした。座布団にぺたんと座って座卓で作業するので、エルゴノミクス (人間工学) 的にはデスクワークに最適な環境とは言えないかもしれません。

まとめ

わざわざ論文の執筆作業をするために温泉旅行をするのは、贅沢だと思います。本来ならば、温泉であったり観光がメインなところです。そこをあえて、温泉という場所を借りて仕事をするわけなので、論文執筆缶詰め旅行は忙しき研究者という人種が生み出した悲しき旅行形態といえるかもしれません。

一方、夏目漱石や太宰治といった文豪も温泉地で執筆活動に勤しんだと言われています。旅行という体験を得つつ、集中できる空間に短期間身を置いて執筆を進めることは、文豪になった気分に浸れてよかったですね。調べてみると東京近辺でも「執筆プラン」なるサービスを提供している温泉地や宿泊施設があるようです ( 外部リンク: The Ryokan Tokyo Yugawara 特別な滞在プラン)。そちらでは飲み物のサービスがあったり、もっと快適そうです。休暇と仕事を両立する新たなワークライフバランスの形として(??)、忙しい研究者の皆さんもぜひ論文執筆缶詰旅行を敢行してみてはいかがでしょうか。

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ポスドク。学部レベルの基礎知識の解説から、最先端の論文の解説まで幅広く頑張ります。高専出身。

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