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スポットライトリサーチ

マテリアルズインフォマティクスでリチウムイオン電池の有機電極材料を探索する

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第223回のスポットライトリサーチは、沼澤 博道さんにお願い致しました(トップ画像は論文から出典)。

機械学習は近年あらゆる研究の進め方・考え方を塗り替えつつある、ホットな技術の一つです。沼澤さんは慶應義塾大学 理工学部・緒明研究室 所属時に、機械学習を活用した材料探索法=マテリアルズ・インフォマティクスに取り組み、今をときめく有用物質=リチウムイオン電池に活用可能な材料探索を行い、優れた性能を発揮する有機負極材料を効率よく見つけ出しています。本成果はAdvanced Theory and Simulation誌 原著論文およびプレスリリースとして公開されています。

“Experiment‐Oriented Materials Informatics for Efficient Exploration of Design Strategy and New Compounds for High‐Performance Organic Anode”
Numazawa, H.; Igarashi, Y.; Sato, K.; Imai, H.; Oaki, Y. Adv. Theory Simul. 2019, doi:10.1002/adts.201900130

研究室を主催されている緒明 佑哉 准教授より沼澤さんについての人物評を下記のとおり頂いています。現在、沼澤さん化学系企業に就職し、新天地でキャリアをスタートされているとのことです。

沼澤君は、計画的かつ効率的に研究を進めつつも、地道かつ真摯な努力を惜しむことなく研究に取り組み、優れた成果を挙げました。また、穏やかで明るい人柄も定評があります。彼には、講義のティーチングアシスタントでも色々と助けてもらい感謝しています。今回の研究では、これまでの実験に加え、我々には馴染みの薄かった計算化学やデータ科学の知見を投入しました。彼は、それらの新しい知見を積極的に身に着け、使いこなせるようになりました。異分野にまたがる難しい課題が多くありましたが、効率的かつ地道に取り組んで良い成果につながりました。今回の種々の経験が、沼澤君の今後の研究者としてのキャリアに役立ってくれることを願っています。

それでは今回もリアリティ溢れるコメントをお楽しみ下さい!

Q1. 今回プレスリリースとなったのはどんな研究ですか?簡単にご説明ください。

本研究は、有機物を用いたリチウムイオン二次電池(LIBs)の負極材料を、マテリアルズインフォマティクスを用いて効率的に探索するというものです。省資源かつ安全なLIBsとして、有機物を用いた電極材料が研究されています。しかし負極材料に注目すると、高性能の材料は見つかり始めている一方で、試行錯誤と研究者の勘に頼っており分子構造の設計指針が確立されていないという課題がありました。そこで本研究では、実験・計算・データ科学の融合により物質探索を行う、マテリアルズインフォマティクスを活用することで設計指針の確立を目指しました。この指針に基づいて、実際にいくつかの未知の候補分子の中から、負極活物質として高容量を示す分子を最小実験数で発見することができました。

プレスリリースより引用

Q2. 本研究テーマについて、自分なりに工夫したところ、思い入れがあるところを教えてください。

機械学習を行う上で必要な、実測データを取得する部分です。少ないデータセットであっても、正確なモデルを作成するためには実測データの精度が非常に大切です。電極作製には、助電材・結着剤との混錬、ペーストの作製、集電体への塗布といった工程があります。その中で再現性良い結果を得るために、学部時代から何度も何度も部屋の隅で電極作製の練習を重ねたことが思い出に残っています。

Q3. 研究テーマの難しかったところはどこですか?またそれをどのように乗り越えましたか?

研究テーマの話ではないかもしれませんが、研究室としてほとんど知見のない、計算化学・データ科学を研究に取り入れた点です。異分野の学問のため研究室内で質問できる人がほとんどおらず、地道に知識をインプットしてゆくのが大変でした。乗り越えた方法は、「ひたすら文献を読む」です笑。ただ、自分のような実験科学屋さんがこうした異分野かつ今のトレンドである機械学習に学生時代に触れられたことは、とても貴重な経験だったと思っています。

Q4. 将来は化学とどう関わっていきたいですか?

幅広い分野を横断的な知識を持った化学者になりたいと思っています。所属していた材料化学研究室では、有機・無機・高分子、さらにはデータ科学など、分野の垣根を超えた研究を行ってきましたが、これらを上手に組み合わせることで、新たな発見や材料の開発ができることを学びました。現在は企業で化学に関する研究を行っていますが、これからも新しい分野に飛び込むことを恐れず、積極的に学び、材料開発に活かしてゆけるよう頑張りたいです。

Q5. 最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

高校時代の恩師から「楽しませてもらおうとするな、自分から楽しめ」とよく言われていました。私はこの言葉をモットーにしているのですが、研究においても受け身にならず自分から積極的に学び、知見を得ることが大事だと感じています。研究が思うように進まないときも、失敗から学びを得て、くじけずに進み続けていきましょう!きっと新しい発見があるはずです。

最後になりますが、本研究を進めるにあたりお世話になりました慶應義塾大学材料化学研究室の緒明佑哉准教授、今井宏明教授、すでに同研究室を卒業された佐藤宏亮博士、東京大学の五十嵐康彦特任研究員にこの場を借りて感謝申し上げます。

研究者の略歴

名前:沼澤 博道(ぬまざわ ひろみち)
所属:富士フイルム株式会社
略歴:2017年3月 慶應義塾大学理工学部応用化学科 卒業
2019年3月 慶應義塾大学理工学研究科総合デザイン工学専攻マテリアルデザイン科学専修 修士課程修了

cosine

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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