[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

バイオ医薬 基礎から開発まで

[スポンサーリンク]

概要

2018年のノーベル生理学・医学賞が抗PD-1抗体を用いた免疫療法に授与されたように,近年,抗体医薬を代表とするバイオ医薬が注目されている.本書は学部学生や大学院生でも興味をもって通読できるように編集された「バイオ医薬」に関する本邦初の本格的教科書である.執筆陣には,アカデミアの研究者だけでなく,バイオ医薬品開発に携わった企業研究者も多数加わっている.そのため創薬現場での研究経験に基づいた内容で構成され,学生が学習すべきバイオ医薬品開発にかかわる基本的事項を網羅している.(内容説明 より)

対象

  • 生物製剤について基礎から学びたい人
  • 生物製剤の創薬研究を志す大学院生と研究者
  • 低分子医薬と生物製剤の違いについて系統的に学びたい人

内容

生物製剤(バイオ医薬品)の基礎的内容を系統的・網羅的に学べる、学生向けに書かれた本邦初の教科書です。

これまでの我が国では、化学合成によって供給される低分子医薬品が幅を利かせていました。しかし業界再編や創薬トレンドの変化に伴い、抗体医薬や生物製剤、その化学修飾品の開発を手がける製薬企業が欧米で先行する形で増え、国内でも手がける企業が段々と増えています。このような中にあって、生物製剤(バイオ医薬)とはなんなのか、低分子医薬との違いは何なのか、製造法や規制・承認に関しても基礎知識を一通り持っておくことは、現代~次世代を担う薬学生・創薬研究者にとっていよいよ重要になっています。

しかしながら、網羅的・体系的に学べる日本語書籍が存在していないことがこれまでの問題でした。筆者(副代表)のように、低分子合成からADCに突入した経験を持つ身からすると、バイオ医薬は完全に異世界であり、基礎知識を学ぶだけでも大変苦労しました。そもそもどの資料を当たれば良いのかまずわかりません。用語や概念も知らない、実験手法や物質の取扱いも全然違う、そもそもどこまで分析すればこの構造と言って良いのかなど、文化の違いに戸惑うことも数限りなくありました。おかげで学生時分にやっていた泥臭い勉強をイチからするはめになったのですが、今なお穴だらけの知識でなんとかやっており、日本語の教科書があれば楽なのになあ・・・、と思ったことは数知れません。

本書は、学部生・大学院生向けの教科書として書かれています。微に入り細を穿ちすぎることなく、一通りの基盤知識がバランス良くまとまっており、入門には最適です。現代事情を日本語で系統だてて学べる基盤がようやく整ったと嬉しく思う一方、この本が5年前にあったら個人的にもいろいろ楽できただろうなぁと思えて止みません・・・(苦笑)

日本発の教科書と言うことで、第12章に日本の製薬会社が関わったバイオ医薬品の開発経緯が掲載されていることも特徴です。今後の国内製薬企業がどう発達していくのかを考える素材にもなりますし、学生の興味を引きつける配慮でもあります。

【章構成】

  1. バイオ医薬品の概要
  2. バイオ医薬品創出のための探索研究
  3. 代表的バイオ医薬品としての抗体医薬
  4. バイオ医薬品の製造
  5. バイオ医薬品の品質評価・管理
  6. バイオ医薬品の非臨床試験
  7. バイオ医薬品の臨床試験
  8. 承認申請
  9. バイオ医薬品とその関連技術の知的財産権
  10. バイオ後続品(バイオシミラー)
  11. バイオ医薬品の一般的名称
  12. 日本で創出された代表的バイオ医薬品とその開発経緯

とはいえ教科書になるほどの蓄積ある領域じゃないと、という事情もあるのでしょう、ペプチド・タンパク質・抗体およびその化学修飾品が話題の主となっています。核酸医薬・遺伝子治療・細胞医療などにはほぼ記述がありません。この点には注意が必要であり、こういった創薬モダリティを学びたいなら、別の書籍をあたる必要があるでしょう。

関連書籍

cosine

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. Cleavage of Carbon-Carbon Single…
  2. 2009年5月人気化学書籍ランキング
  3. 2016年2月の注目化学書籍
  4. 有機反応の立体選択性―その考え方と手法
  5. 高機能性金属錯体が拓く触媒科学:革新的分子変換反応の創出をめざし…
  6. フィンランド理科教科書 化学編
  7. 先制医療 -実現のための医学研究-
  8. 経営戦略を成功に導く知財戦略【実践事例集】

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. Skype英会話の勧め
  2. カンプトテシン /camptothecin
  3. 第85回―「オープン・サイエンス潮流の推進」Cameron Neylon教授
  4. 超合金粉末の製造方法の改善に機械学習が試行される
  5. 気になるあの会社~東京エレクトロン~
  6. NHPI触媒によるC-H酸化 C-H Oxidation with NHPI Catalyst
  7. ボルテゾミブ (bortezomib)
  8. スコット・ミラー Scott J. Miller
  9. 2011年10大化学ニュース【後編】
  10. アミドをエステルに変化させる触媒

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

注目情報

注目情報

最新記事

「つける」と「はがす」の新技術|分子接合と表面制御 R3

開講期間令和3(2021)年  9月8日(水)、9日(木)(計2日間)※状況により、we…

第19回ケムステVシンポ「化学者だって起業するっつーの」を開催します!

少し前に化学者のつぶやきからこのような記事が出ました:【ケムステSlackに訊いて見た④】化学系学生…

10種類のスパチュラを試してみた

大好評、「試してみた」シリーズの第6弾。今回は試薬の秤量にか欠かせない、…

第48回「分子の光応答に基づく新現象・新機能の創出」森本 正和 教授

久々の研究者へのインタビューです。第48回は、立教大学の森本正和先生にお願いいたしました。第17回ケ…

畠山琢次 Takuji Hatakeyama

畠山琢次 (はたけやま たくじ)は、日本の化学者である。専門は有機合成化学,材料化学。2021年現在…

DNA origami入門 ―基礎から学ぶDNAナノ構造体の設計技法―

(さらに…)…

NBSでのブロモ化に、酢酸アンモニウムをひとつまみ

芳香環のブロモ化といえば、構造活性相関の取得はもちろんの事、カップリング反応の足場と…

森本 正和 Masakazu Morimoto

森本 正和(もりもと まさかず、MORIMOTO Masakazu)は、日本の化学者である。専門は有…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP