[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

【書籍】化学における情報・AIの活用: 解析と合成を駆動する情報科学(CSJカレントレビュー: 50)

[スポンサーリンク]

概要

これまで化学は,解析と合成を両輪とし理論・実験を行き来しつつ発展し,さまざまな物質を提供してきた.しかし近年,解析と合成に加えて情報という三つの視点で駆動する手法が注目を集め,化学を大きく変えようとしている.この新しい手法の革新性は,化学の研究力,化学産業の生産力に大きな変革をもたらすものと期待される.解析・合成の両輪の融合,化学とプロセスとの連動に向けた最新の研究事例を,広い分野のAI利用化学研究者が紹介. (引用:化学同人)

対象者

情報科学を研究に取り入れたいと考える化学者。

目次

第Ⅰ部 基礎概念と研究現場
1章 フロントランナーに聞く(座談会)
奥野 恭史(京都大学大学院医学研究科),出村 雅彦(物質・材料研究機構)
船津 公人(奈良先端科学技術大学院大学),松原 誠二郎(京都大学大学院工学研究科)聞き手:栗原 和枝(東北大学)
2章
(1)History:データ駆動型化学の歴史 船津 公人(奈良先端科学技術大学院大学)
(2)Basic concept:データ駆動型化学を牽引する新しいコンセプ 吉田 亮(情報・システム研究機構)
3章
(1)創薬のための構造化DB 上村 みどり(帝人ファーマ株式会社)
(2)有機合成と情報 大嶋 孝志(九州大学大学院薬学研究院)
(3)精密構造解析と情報科学/データの構造化 杉本 邦久(近畿大学理工学部)
(4)マテリアルズインテグレーションシステム,Mint 出村 雅彦(物質・材料研究機構)
(5)化学・材料分野におけるデータ活用プラットフォーム 小椋 智(大阪大学大学院工学研究科)

第Ⅱ部 研究最前線
1章 研究室におけるAI自動有機合成とクラスターDB構想 松原 誠二郎(京都大学大学院工学研究科)
2章 無機機能薄膜合成 一杉 太郎(東京大学/東京工業大学)
3章 大規模系の記述子 ペトロリオミクス 田中 隆三(出光興産株式会社/石油エネルギー技術センター)
4章 データ活用型化学研究の基盤としての手法開発 瀧川 一学(京都大学国際高等教育院)
5章 分子シミュレーションへの応用:高速化と自動解析 泰岡 顕治・安田 一希(慶應義塾大学理工学部)
6章 創薬化学におけるAIのトレンド 小山 拓豊・奥野 恭史(京都大学大学院医学研究科)
7章 機械学習と自動合成装置による医薬品探索 石原 司(産業技術総合研究所)
8章 生体・超分子の構造解析とAI 中川 敦史(大阪大学蛋白質研究所)
9章 人工知能(AI)を用いる機能性有機分子の設計 緒明 佑哉(慶應義塾大学理工学部)
10章 AI支援の有機太陽電池 佐伯 昭紀(大阪大学大学院工学研究科)
11章 ハイスループット電池電解液探索システム 松田 翔一(物質・材料研究機構)
12章 AIによる新有機合成化学 佐藤 一彦(産業技術総合研究所)
13章 生産とAI化学プラントのAI IoTによる安全操業と人材育成 山下 善之(東京農工大学大学院工学研究院)
14章 物理モデル構築によるAIプラント異常制御 長谷部 伸治(京都大学国際高等教育院)
トピックス① 有機合成:逆合成解析,機械学習(アメリカのIBMの活動) 岸本 章宏(IBM東京基礎研究所)
トピックス② マテリアルインフォーマティクスの利用 庄司 哲也(トヨタ自動車株式会社)
トピックス③ ルールベース重合反応モデルによる高分子仮想ライブラリの構築と評価 大野 充(株式会社ダイセル)
トピックス④ 錬金術師は人工知能で極みのその先を目指す 柳原 直人(富士フイルム株式会社)
トピックス⑤ 旭化成の研究開発におけるDXの取組み-マテリアルズ・インフォマティクスの活用- 青木 拓実(旭化成株式会社)
トピックス⑥ 化学・情報科学の融合による新化学創成に向けて 阿尻雅文(東北大学材料科学高等研究所)

内容

第Ⅰ部は基礎概念も交え「現在」の情報科学と化学の関係についてまとめられています。

1章では4名のフロントランナーによる座談会という形式で、情報科学の発展や化学への活用の難しさ、今後の展望が語られています。AIが答えを出してくれてもその良し悪しを知らなければ真の活用にはつながらず、ドメイン知識の習得や共有が重要であると述べられていた点が特に印象深かったです。

続く2章はデータ駆動化学の歴史やマテリアル・インフォマティクスを題材に化学への情報科学の利用に関して基礎概念が述べられています。設計・合成・計測のサイクルやマテリアル・インフォマティクスの基本である「順問題・逆問題からなるワークフロー」についても紹介されています。初心者である私にはとてもありがたい章です。

3章ではデータベースに焦点が当てられています。データ駆動化学やマテリアル・インフォマティクスは実験・実測データを用いてモデルを構築していくため、その源泉となるデータベースの重要性は明らかです。創薬、有機合成、構造解析、そしてマテリアルの観点からデータベースが紹介されています。

第 II 部は研究最前線と題し、合成(1, 2章)、基盤技術研究(3, 4, 5章)、創薬(6, 7, 8章)、機能分子・材料(9, 10, 11章)、生産を見据えた応用(12, 13, 14章)という切り口で化学への情報科学利用の最前線が語られています。情報科学により何を達成したか、というよりは情報科学がどのように利活用できるか、できうるかが述べられているように感じました。有機・無機化学、材料化学、創薬化学など分野を問わず情報科学が利用されている様を見ることができ、2024年時点最新の状況を俯瞰して眺めることができるように感じられました。

長らく「Wet」の実験が主流であった化学(特に有機化学)分野でも情報科学の利用は待ったなしの状況です。今必要とせずとも、何が起きているのか、情報科学で何ができるのかを理解することは重要であり、その導入として適した1冊だと言えます。

情報科学に関するケムステVシンポ・過去記事

第25回ケムステVシンポ「データサイエンスが導く化学の最先端」

・企業研究者のためのMI入門 , ,

Avatar photo

KeN

投稿者の記事一覧

大学教員→企業研究者。自分の知らない化学に触れ、学び、楽しみ続けたいです。

関連記事

  1. えっ!そうなの?! 私たちを包み込む化学物質
  2. カリカリベーコンはどうして美味しいにおいなの?
  3. 研究室ですぐに使える 有機合成の定番レシピ
  4. 動画でわかる! 「575化学実験」実践ガイド
  5. ヒューマンエラーを防ぐ知恵 増補版: ミスはなくなるか
  6. 研究者としてうまくやっていくには ー組織の力を研究に活かすー
  7. 固体材料の強度と物性評価のための分子動力学法入門
  8. PythonとChatGPTを活用するスペクトル解析実践ガイド

注目情報

ピックアップ記事

  1. CAS Future Leaders Program 2023 参加者インタビュー
  2. 実験器具・設備の価格を知っておきましょう
  3. シュライバー・アトキンス 無機化学 (上)・(下) 第 6 版
  4. シクロクラビン cycloclavine
  5. ここまで来たか、科学技術
  6. 有機合成化学協会誌2023年9月号:大村天然物・ストロファステロール・免疫調節性分子・ニッケル触媒・カチオン性芳香族化合物
  7. 友岡 克彦 Katsuhiko Tomooka
  8. トリプトファン選択的タンパク質修飾反応 Trp-Selective Protein Modification
  9. 量子コンピューターによるヒュッケル分子軌道計算
  10. 高分子鎖デザインがもたらすポリマーサイエンスの再創造 進化する高分子材料 表面・界面制御アドバンスト コース

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2024年10月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

注目情報

最新記事

Carl Boschの人生 その13

Tshozoです。 少し唐突ですが最初に大事なお知らせを。世界トップの化学会社BASFがCarl…

ラングミュアの吸着等温式 Langmuir equation

ラングミュアの吸着等温式 (Langmuir equation) は、等価な吸着サイトが独立に振舞い…

【化学・食品業界向け】 蒸留による分離・濃縮をシンプルで省エネに ~無機分離膜が起こすイノベーション~

■概要ものづくりにおいて重要な分離操作。有機溶剤の混合物の分離リサイクル。水の分離(脱水…

濃硫酸の1000倍強い超酸の中でも蛍光を保ち続ける”超酸耐性BODIPY”

第705回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院総合化学院(反応有機化学研究室)博士後期課程2…

安田修祥・裕美子 若手化学者留学支援事業

大学院生時代の経験として、海外留学は本当に素晴らしいものです。かくいう私も、1か…

有機合成化学協会誌2026年5月号:特集号 有機合成化学の力で切り拓く次世代モダリティの地平

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2026年5月号がオンラインで公開されています。…

チームディレクター募集(理化学研究所研究室主宰者、無期雇用職)

募集研究室理化学研究所 環境資源科学研究センター募集の概要国立研究開発法人理化学研究所で…

<製品サンプル進呈>細胞増殖/毒性測定 はじめてを応援キャンペーン【同仁化学研究所】

Cell Counting Kit-8(CCK-8)は同仁化学研究所で開発され、世界中で細胞増殖や細…

ポンコツ博士の国内奮闘録 ~博士、教員として過ごしてはや2年~

本稿は,少子化の影響が著しい地方私立大で学位を取得したとあるしがない博士(薬学)が、厳しい世の中を生…

2026年、過去最大規模の「有機溶媒危機」が始まった?

2026 年 2 月 28 日、アメリカとイスラエルがイランに対し軍事攻撃作戦を…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP