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企業研究者のためのMI入門③:避けて通れぬ大学数学!MIの道具として数学を使いこなすための参考書をご紹介

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最近よく耳にするデジタル・トランスフォーメーション(DX)やマテリアルズ・インフォマティクス(MI)。DXやMIの技術を使って製造、研究のあり方を変えようとしているメーカーも増えています。そして新たにDX、MIを学び、現場に導入しようと努力している研究者の方々も多いかと思います。

この『企業研究者のためのMI入門』シリーズでは上記のように新たにMIを学び始めた人に向けた記事を書いてきました。第1回ではMIを行う前提や概要について、第2回ではPythonの参考書について紹介しています。

企業研究者のためのMI入門①:MI導入目的の明確化と使う言語の選定が最初のポイント!

企業研究者のためのMI入門②:Pythonを学ぶ上でのポイントとおすすめの参考書ご紹介

今回のテーマはMIの理解には欠かせない『数学』です。『数学』と聞くと拒否反応を起こす人がいるかもしれません。実は私自身もその一人。もともと数学は大の苦手で、大学入試の数学は200点満点で30点(1.5割)でした。今回の記事ではそんな私自身の経験を踏まえ、MIで必要となる最低限の数学知識や数学を学ぶときの前提、おすすめの参考書について紹介します!

MIを支える数学を理解すれば最新の技術や手法も理解できる!

そもそもなぜMIで数学が必要なのでしょうか。その理由は「MIで使われている手法は数学的理論をベースとしているため」です。MIではどのようなアルゴリズムをもとに予測を行っているのか。このアルゴリズムの数学的理論を理解すればモデル構築で使われる各手法のメリット、デメリットも深く理解できます。

また、MIを始めとする情報科学では新たな手法や技術が次々と開発されています。最新の技術を正しく理解し、適切に活用するためには、その技術で使われている数学への理解も必要不可欠です。当然のことですが最新の技術や手法も万能ではありません。自社の課題に対して効果的ではない技術やサービスを導入して工数や費用を無駄にしないためにもMI担当者が最低限の数学を理解しておくことが望ましいです。

もしMIで使われている数学を理解している人がいなければ『MIという預言者』に対して誰も逆らえない、もしくは誰も信じない、という状態にもなりかねません。MIはあくまで製造、研究活動を加速させる道具です。正しく道具を使いこなすためにも数学を学ぶことをおすすめします。

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MIで必要な数学は線形代数(行列)、統計、微積分の3分野

ではMIで必要となる数学の分野としては何があるでしょうか。私の主観となりますが重要なのは線形代数、統計、微積分(特に微分)の3つです。ベクトルや行列を扱う線形代数は情報科学を支える技術の一つであり、MIやAI、DX分野を深く理解するには学習が必須の分野とも言えるでしょう。統計学は多数のデータの平均や誤差などを扱うときに頻繁に用いられます。実験で得られるデータには大小あれど必ず誤差を含むため、統計学の知識は重要です。微積分はMIやAIの技術とは直接関わりありませんが、MIの各手法の原理を数学的に説明するときに微積分が用いられます。中でも微分がよく現れるので微積分、特に微分は学んでおくと何かと便利です。

「数学はMIを理解するための道具」と割り切って勉強しよう!

上記のようにMIでは様々な数学の知識が必要です。ただし必ずしも数学への深い理解がいるわけではありません。大学受験や数学、物理の研究では自ら数式を展開して問題を解いたり研究を進めたりすることが多いと思います。一方で化学の現場でMIを使う人は既に数学的な論理が確立された機械学習の手法を利用します。つまりMI利用者に必要なのは数学を使って自らモデルを作る能力ではなく、既に出来上がったモデルの論理を追いかけられる能力なのです。

この2つの能力の違いを家具作りに例えて説明してみます。数学を「ネジや釘、トンカチなどの道具」や「板などの部品」と考えてみましょう。数学や物理の研究は日曜大工、DIYで家具を作るようなものです。自分自身で設計図を書き、完成形をイメージしたうえで適切に道具や部品を使って家具を作り上げます。一方、MIで数学を使うのは例えると説明書付きの既製品を組み立てるようなもの。具体的な手順が書かれている説明書を理解して、その通りに道具を使うことができれば家具を作ることができます。数学が苦手だとしても既に確立された理論を追うだけならできる、これは私自身の体験からも言えます。「数学はMIを理解するための道具」と割り切って、深い理解よりも早く使いこなすことを重視して学んでいきましょう!

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MI活用のために数学を学ぶときのポイント

ノートに数式展開を書き写し、教科書にはたくさん補足のメモを書こう!

MI用の数学を学ぶうえで重要なのはMIで用いられている手法の論理展開を理解することです。従って「結論」も重要ですが「計算過程」の理解も重要です。では計算過程を理解するにはどうすればよいのでしょうか。私はまず教科書の数式の展開をノートに書き写すことから始めるのをおすすめします。教科書を読んでいるだけでは「なんとなく分かった」ように思えますが、実際に書いてみると細かな論理展開まで気になります。「この式の導出はどのように行っているのだろう」、「ここで近似が使われているのだな」という点に気づくためには自分の手を動かして数式を書き写すのが効果的です。

また、教科書にはどんどん書き込みを行いましょう。特に重要なのは自分の理解を深めるための補足をメモすることです。例えば省略された途中の式変形をメモしたり、定理が成り立つときの条件をメモするなど。メモの基準は「1ヶ月後に自分がもう一度読み返してすぐに中身を理解できるか」という点です。自分の理解を深めるためにどんどん書き込んでいきましょう。

自分のレベルに合った難易度の教科書を選ぼう!

Pythonをはじめとするプログラミングの参考書と同様に、数学の参考書も難易度や式展開の丁寧さは様々です。式の導出が丁寧すぎると回りくどいと感じる方がいる一方で、逆に説明が省略されすぎると内容を理解できないと感じる人もいます。式や説明がどれくらい丁寧だと読みやすいと感じるかは人によって様々です。だからこそ、ぜひ自分のレベルや理解度、得意不得意に合わせた参考書を選ぶことをおすすめします。

分野別、おすすめの数学参考書をご紹介!

最後におすすめの参考書をいくつか紹介します。なお、上記の通り数学の参考書は難易度、とっつきやすさ、分量などが様々です。またMIやDXを扱う人が増えていること、特に初心者の方々が増えていることを受けて、数学の入門書は特に増えると予想されます。もし大型書店や大学生協が近くにある方々はぜひ手にとって内容を確認してみてください。

入門レベル:人工知能プログラミングのための数学がわかる本

ディープラーニングを中心としたAIプログラミングで必要な数学を学べる本。ニューラルネットワークなど、MIでも用いられる手法についても詳しく書かれています。この本は図は多くて数式の羅列は少なめなので、数学に苦手意識があるけどMIを理解したい人におすすめです。

またPythonのコードが本に付属しており、アルゴリズムを実践しながら理解を深めることもできます。MIでも最終的には各手法をPythonのコードで表現する必要があるので、本を読みながら実践もできる参考書は貴重です。

入門レベル:マンガでわかる統計学 素朴な疑問からゆる~く解説

確率や統計に関する知識はMIに限らず普段の研究活動でも必要です。しかし標準偏差や正規分布、検定などの統計用語の解釈はなかなか難しいもの。この本はそんな統計用語の意味や概念を理解するのに役立ちます。「マンガでわかる」と書かれているように本の約半分はイラストで非常に読みやすいです。「数学的な理論を学ぶ前にまず大枠を掴みたい」、「統計の勉強はしたけれど正直意味がよく分かっていない」という人向け。

標準レベル:理工系の数学入門シリーズ

理工系の学部生が数学を学ぶときの定番。私自身も学部生の頃にこのシリーズで数学を勉強しました。表題に「理工系」という単語が入っているだけあり、工学系で数学を道具で使う人に向けて書かれています。具体的な計算の例や問題を重視して書いており、MIで数学を使う人にもおすすめです。まずは広く学びたいけど、どうせ学ぶなら数学的な理論もしっかり学びたい、という人向け。「数学入門シリーズ」と書いていますが、MIで使う数学についてはこの本のレベルを一通り抑えておけば十分です。

番外編:予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」

予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」

最近ではYouTubeを始めとする動画コンテンツでも大学数学を学ぶことができるようになってきました。その中でも私のオススメは人気YouTuberヨビノリたくみさんのチャンネル。線形代数や統計、微積分はもちろんのこと、最近ではAIや機械学習で用いられる数学についても取り上げています。この人の特徴は黒板を用いながら丁寧に式の導出を行いつつ、その背景にある考え方まで教えてくれるところ。また人気YouTuberだけあって話のテンポも良く、内容は濃いのに観やすいのが嬉しいところ。動画の時間やコンテンツの量は多いですが、毎日の通勤・通学のお供として継続視聴してみてはいかがでしょう。

 

本日はMIに必要な数学について紹介しました。MIを少しだけ利用するだけならば数学の知識は不要かもしれません。しかし、MIの専門家として様々な手法を駆使していくには数学の知識は必須です。ただ、先に述べたように「数学の専門家」になる必要はありません。あくまでMIのアルゴリズムに使われている論理を追うことができれば良いのです。数学に苦手意識を持っている方もぜひ一歩ずつ、自分のペースで着実にMIの数学を理解して、各手法を使いこなせるようになっていきましょう!

 

画像引用元:いらすとや

アイキャッチ画像引用元:Unsplash

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新卒で化学メーカーに就職し、今は別のメーカーの研究職。超高速分光→高分子分析→MI、機械学習など専門がコロコロ変わるのが特徴、5年後の専門は何になっているか不明。ラーメンとコーヒーと萌えで身体ができている。

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