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香月 勗 Tsutomu Katsuki

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香月 勗 (かつき つとむ、1946年9月23日-2014年10月30日)は、日本の有機化学者である(写真:jst.go.jp)。九州大学理学部教授。

 

経歴

1969 九州大学理学部化学科 卒業
1971 九州大学理学研究科 修士課程修了
1971 九州大学理学部 助手
1976 理学博士
1979-1981 スタンフォード大学・マサチューセッツ工科大学 博士研究員(K.B.Sharpless教授)
1989 九州大学理学部化学科 教授
2010 九州大学高等研究院 特別主幹教授
2010 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所 (I2CNER) WPI主任研究者(併任)

2014年10月30日 逝去。

 

受賞歴

1997 井上学術賞
1999 有機合成化学協会賞
2001 モレキュラー・キラリティー賞
2002 日本化学会賞
2006 有機合成化学協会高砂香料国際賞「野依賞」
2007 Asian Core Program Lectureship Award
2009 文部科学大臣表彰

 

研究業績

触媒的不斉酸化反応の開発

博士研究員時代にバリー・シャープレス教授とともに、チタン-DET-TBHP系を用いるアリルアルコールの不斉エポキシ化反応の開発に成功[1]。

きわめて万能性の高い化学反応であり、長き合成化学の歴史にあって不斉酸化反応の決定版とされている。現在ではシャープレス・香月不斉エポキシ化と呼ばれ、広く認知され使用されている。シャープレス教授がノーベル化学賞受賞に至る道筋を大きく後押しした歴史的研究の一つである。

その後日本でポスト取得後、配向基を持たない単純オレフィンの不斉エポキシ化を実現するマンガン-サレン錯体系の開発に成功[2]。こちらもジェイコブセン・香月反応という人名反応として広く認知される。


近年ではサレン触媒の化学をさらに展開し、過酸化水素を酸化剤としたり[3]、光照射によって活性型へ変換される穏和な空気酸化触媒の開発[4]などにも成功した。

Tsutomu_Katsuki_2
(画像:香月研究室

名言集

  •  予断をもって実験するなかれ:予想外の現象を安易な判断で無視するのは、新たな化学への道を閉ざすことである。

コメント&その他

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関連文献

  1. Katsuki, T.; Sharpless, K. B. J. Am. Chem. Soc. 1980, 102, 5974. DOI: 10.1021/ja00538a077
  2. Irie, R.; Noda, K.; Ito, Y.; Katsuki, T. Tetrahedron Lett. 1991, 32, 1055. doi:10.1016/S0040-4039(00)74486-8
  3. Matsumoto, K.; Sawada, Y.; Saito, B.; Sakai, K.; Katsuki, T. Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 4935. DOI: 10.1002/anie.200501318
  4. Uchida, T.; Katsuki, T. J. Synth. Chem. Soc. Jpn. 2013, 71, 1126. DOI: 10.5059/yukigoseikyokaishi.71.1126
  5. “Author Profile” Angew. Chem. Int. Ed. 2009, 48, 5398. DOI: 10.1002/anie.200902602

 

関連書籍

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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