[スポンサーリンク]

一般的な話題

暑いほどエコな太陽熱冷房

[スポンサーリンク]

大量の電力を消費する冷房。その需要は高まっていて、冷房用の電力需要は2100 年までに2000年の30 倍以上になると予想される。そうした状況を受け、暑さの原因である「太陽熱」を利用した空調システムに注目が集まっている。

タイトルおよび説明はシュプリンガー・ネイチャーの出版している日本語の科学まとめ雑誌である「Natureダイジェスト」5月号から。最新サイエンスを日本語で読める本雑誌から個人的に興味を持った記事をピックアップして紹介しています。過去の記事は「Nature ダイジェストまとめ」を御覧ください。

ホットでクールな太陽熱冷房

GWも明け、初夏ですね。徐々に気温が上がり、汗ばむ日もあるぐらい。暑い夏に必須なのがエアコン(冷房)。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は冷房用の電力需要は、2100年までに2000年水準の30倍以上になっているだろうと予測しています。どんなに省エネタイプのものが開発されても、多くの国々ではまだまだ冷暖房完備のところはメジャーではなく需要は増え続けます。

そこで、今月号の特集記事。一見矛盾しているタイトルではありますが、最近注目されている「太陽熱エアコン」について述べています。

エアコンは蒸発熱を利用したものであるのはご存知であると思います。高圧の液体冷媒を膨張弁で広い蒸発器に押し出すことにより、圧力と温度を急激に下げます。その低温の冷媒が室内の空気や自ら熱を吸収して蒸発、冷たい空気が建物内を循環します。その後、圧縮機によって、冷媒を圧縮して高温の気体冷媒となり、凝縮器で熱を捨てながら液体となり、その後膨張弁にまたたどりつくといった機構です。とっても効率的なのですが、この圧縮機を動かすには大量の電気エネルギーが必要となります。

そこで、この圧縮機を用いず、太陽エネルギーから単純に熱をいただくのが「太陽熱エアコン」です。実はその仕組みは特段新しい技術ではないのですが、近年の環境への関心と、それに伴う効率的な集熱器の改良がこれらの開発と製品化を可能としました。とはいえどまだまだ課題は山積み。本記事ではこの「太陽熱エアコン」の現状と開発状況について述べています。

冷暖房完備の現状ではあまり実感がわかないかもしれないですが、例えば大学でも電力使用量問題は問われており、毎年のように夏の省エネ対策が行われています。環境に対する配慮も必要かもしれないですが、単純に電力エネルギーの高騰も相まって、お金がないんですね。その意味では電力使用量を減らすことができるこれら技術の開発は大変重要であり、出来る限り初期投資をすぐにペイできるような高効率な太陽熱エアコンの開発が望まれます。

トリアンギュレンの合成に成功

有機合成関係の記事かと思いきや、合成は合成でも単分子レベルでの合成。これまで拙サイトでも顕微鏡で1つの分子の形みる・決めるということが実際にできるようになりつつあるという記事を紹介してきました。

これらはIBM社の研究者による研究成果であり、走査型顕微鏡の単身の先端に一酸化炭素(CO)などの単分子をつけると、分子の形が高解像度でみえることをから発展した研究です。その後も1分子の化学反応を行ったり(他の研究者)[1]、化学反応の不安定中間体(アライン)を合成できる[2]ことを証明しています。

本記事はその不安定中間体合成の続報のようなもので、今回対象にした分子はタイトルにあるように「トリアンギュレン」という分子。平面炭化水素ビラジカル分子で通常は、すぐに酸化されてしまい単離することはできません。2001年にトリアンギュレン大きな置換基を導入して「保護」してあげることで、はじめてビラジカル状態を確認することに成功していました。今回は、短針を配置して、前駆体から2個の水素ラジカルを電圧パルスで吹き飛ばし、かつそのままその分子をみることで、はじめて置換基のないトリアンギュレンの合成に成功しています。

A.トリアンギュレン B. 置換基で「保護」をしたトリアンギュレン誘導体 C. 今回得られた画像(出典:関連文献[4]より)

本記事では、その詳細と今後の展望について紹介しています。大変夢のある研究でわかりやすく思い白いですが、高価な走査型顕微鏡と特殊な装置が必要なのでしばらく一部の研究者の独壇場になりそうですね。

関連文献
  1.  de Oteyza, D. G.; Gorman, P.; Chen, Y. C.; Wickenburg, S.; Riss, A.; Mowbray, D. J.; Etkin, G.; Pedramrazi, Z.; Tsai, H. Z.; Rubio, A.; Crommie, M. F.; Fischer, F. R. Science 2013, 340, 1434. DOI: 10.1126/science.1238187
  2. Pavliček, N.; Schuler, B.; Collazos, S.; Moll, N.; Pérez, D.; Guitián, E.; Meyer, G.; Peña, D.; Gross, L. Nature Chemistry 2015, 7, 623. DOI: 10.1038/nchem.2300
  3. Inoue, J.; Fukui, K.; Kubo, T.; Nakazawa, S.; Sato, K.; Shiomi, D.; Morita, Y.; Yamamoto, K.; Takui, T.; Nakasuji, K. J. Am. Chem. Soc. 2001, 123 (50), 12702–12703. DOI: 10.1021/ja016751y 
  4. Pavliček, N.; Mistry, A.; Majzik, Z.; Moll, N.; Meyer, G.; Fox, D. J.; Gross, L. Nat Nanotechnol 2017, 12, 308–311. DOI: 10.1038/nnano.2016.305 

その他の記事

今回はなんと3つの記事が特別公開。1つめは「月に届く地球の風」。2017年に創刊されたNature Astronomyに掲載された大阪大学・名古屋大学・JAXA(宇宙航空研究開発機構)の共同研究のお話です。もう2つめは「科学者の国会が「軍事研究を行わない」と決議」。各所で話題となっている科学者と軍事研究の関係に日本学術会議が行った声明に関する記事です。最後の記事は「恐竜系統樹の枝ぶりが変わる?」で、研究により恐竜の系統図が書き換わり、教科書が変わってしまうような結果が出たという話です。恐竜も昔とは(といっても筆者が子供のときぐらい)えらい様相が変わってきたような苦笑。

というわけで3つの記事で試し読みし、面白ければ購読をオススメします。

過去記事はまとめを御覧ください

外部リンク

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 三つの環を一挙に構築! caulamidine 類の不斉全合成
  2. 有機合成化学協会誌2021年11月号:英文特集号 Special…
  3. レーザー光で実現する新たな多結晶形成法
  4. YMC-DispoPackAT 「ケムステを見た!!」 30%O…
  5. 有機反応を俯瞰する ーMannich 型縮合反応
  6. オスミウム活性炭素 –ニトロ基選択的還元触媒–
  7. 目指せ!フェロモンでリア充生活
  8. ウイルスーChemical Times 特集より

注目情報

ピックアップ記事

  1. アカデミアからバイオベンチャーへ 40代の挑戦を成功させた「ビジョンマッチング」
  2. ミン・ユー・ガイ Ming-Yu Ngai
  3. 兵庫で3人が農薬中毒 中国産ギョーザ食べる
  4. レドックス反応場の論理的設計に向けて:酸化電位ギャップ(ΔEox)で基質の反応性を見積もる
  5. 料理と科学のおいしい出会い: 分子調理が食の常識を変える
  6. ゴム状硫黄は何色?
  7. 量子センシング技術を活用した生体内における複数のアミノペプチダーゼ活性の同時検出 –腫瘍の高精度分類と抗がん剤の早期治療効果判定への応用性を実証–
  8. 分子間エネルギー移動を利用して、希土類錯体の発光をコントロール!
  9. カレーの成分、アルツハイマー病に効く可能性=米研究
  10. FAMSO

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年5月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

【書評】立体化学 はじめの一歩

立体化学は,分子の三次元構造を理解するための重要な分野であり,有機化学や…

水のシミュレーション入門 — 水分子を計算機の中でどう”描く”か —

身近なのに、計算機にとって手強い"水"。本記事では、点電荷モデルから機械学習まで、その"描き方"の進…

◆◇◆◇ 第36回フォーラム・イン・ドージン開催のご案内 ◆◇◆◇

同仁化学研究所が熊本から世界へ情報発信するフォーラム・イン・ドージンの開催ご案内です。今年は『な…

『力』による円偏光発光のon/off制御を単一分子レベルで実現

第718回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 物質理工学院(相良研究室)博士後期課程2年の野中…

数日かかっていた反応機構解析を、わずか数分に!

機械学習ポテンシャルが変える計算化学の現在近年、DFT計算による反応機構解析は広く行われるよ…

海外ポスドクのオファーをもらう【アメリカで Ph.D. を取る: 進路編】

ポスドクとして海外に留学する場合、希望する研究室の教授に直接連絡を取り、面接などを通して適性を判断さ…

MDで観るトライボロジー 〜原子が擦れるその場をシミュレーション〜

軽くて強いのに摩耗に弱いチタン合金は、航空機や人工関節に広く使われています。原子が擦れ合うその場を分…

酸素を過酸化水素へ!可視光で駆動する有機高分子光カソード

第717回のスポットライトリサーチは、新潟大学大学院自然科学研究科(無機ナノ材料研究室)博士前期課程…

ペプチド合成におけるアスパルチミド化/Aspartimide Formation in Peptide Synthesis

⏱ 30秒サマリー 何をする反応か — Fmoc-SPPS のピペリジン…

MEDCHEM NEWS 35-2 号「未来のメディシナルケミストリーの可能性」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、オープンアクセ…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP