[スポンサーリンク]

ケムステニュース

ノーベル化学賞:下村脩・米ボストン大名誉教授ら3博士に

[スポンサーリンク]

 

スウェーデン王立科学アカデミーは8日、08年のノーベル化学賞を下村脩・米ボストン大名誉教授(80)ら3博士に授与すると発表した。受賞理由は「緑色蛍光たんぱく質(GFP)の発見と発光機構の解明」。下村氏らが見つけたGFPとその遺伝子によって、たんぱく質を蛍光標識し、脳の神経細胞の発達過程や、がん細胞が広がる過程などを生きた細胞で観察できるようになった。分子生物学や生命科学の発展に大きく貢献したことが高く評価された(引用:毎日新聞)。

 

ノーベル物理学賞に続く、ノーベル化学賞日本人受賞で今年は日本人受賞は4人となりました。化学賞に関しては先日トムソンISIの2008年度ノーベル化学賞予想に関するニュース(トムソン:2008年ノーベル賞の有力候補者を発表)にてここでも取り上げましたが、トムソンで予想されたRoger Y. Tsien (米カリフォルニア大サンディアゴ校):細胞機能の可視標識としての蛍光蛋白質プローブの開発および応用 があたったということになりました。ただし、その材料である緑色蛍光タンパク質(GFP)を単離した、下村先生にも受賞されたというところが、ノーベル化学賞の発見者を重視するというコンセプトのよいところです。

下村修・米ボストン大学名誉教授は長崎で学生、助手と経験を詰まれた後、「光る」天然物に魅了され、当時天然物化学の分野で若手で突出したカリスマ性のあった、故平田義正名古屋大学名誉教授の下で研究生として研究を行いました。その後すでにない名古屋大学理学部水産研究施設の助教授としてその研究を続けました。その結果、海ホタルの蛍光物質ルシフェリンの結晶化に成功し、岸義人現ハーバード大学教授、故後藤俊夫名古屋大学名誉教授、平田教授を共同研究者として、彼らの合成により構造を決定するという日本の天然物化学の代表的な仕事を成し遂げています。

1961年に渡米し、Frank H. Johnson研究室に在籍時、オワンクラゲから今回の受賞した研究である緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein; GFP)の単離に成功したわけです。

 

ただしGFPに関しては当時はあまり用途がなく、それらを応用しようという研究者にほぼ無償でわけていたという話があります。それがGFPの利用につながり、遺伝子工学や分子イメージングにはなくてはならないツールとなることで、残りの二人の受賞及び、GFPの発見のすばらしさが再認識されたわけです。

 

それにしても、平田門下、および関連研究者は日本の化学である天然物化学を支えてきただけあってすばらしい人材の宝庫ですね。中西香爾コロンビア大学教授や上記にあげた岸義人ハーバード大学教授は毎年ノーベル化学賞受賞者候補にあげられるほど著名な、平田門下の海外流出組です。その他にもこの下村氏をはじめこれも上記にあげましたが、故後藤俊夫名古屋大学名誉教授、上村大輔名古屋大名誉教授(現慶応大学理工学部教授)、磯部稔名古屋大学名誉教授などが弟子であり、孫弟子も天然物化学、天然物合成化学の分野では第一人者ばかりです。平田先生は守備範囲の異なる人を雇い、優秀な人にはなにもいわなかったといいます。天然物化学を中心にした、合成化学と薬学、生物学、医学と一つの研究室でこれだけの多様性を持った研究室というのはいまはないかもしれません。日本の講座制研究室の悪点は同じ研究室出身の同じバックグラウンドをもった研究者が似通った研究を行うというところにあり、それらを平田研究室から学び取る必要があるかもしれません。

 

ちょっと話はずれましたが、このように下村先生は一貫して「光る」物質に関する研究を行ってきました。当時より再流行の研究というわけでもなく、それは長く、時には厳しい資金の状況下で研究を続けていたそうです。実際最近はインターネットなどで流行の化学をすぐに認識できるように、そのような研究に便乗して、同じような研究が乱立する状況です(一概に悪いとはいえませんが)。このような興味だけが研究を走らせる基礎研究、一本道というのもひとつの研究者としての道を再認識させられた受賞だと思います。

 

本当におめでとうございます!

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4888511578″ locale=”JP” title=”クラゲに学ぶ―ノーベル賞への道”][amazonjs asin=”4022630175″ locale=”JP” title=”光る生物の話 (朝日選書)”]
Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 日本薬学会第144回年会「有機合成化学の若い力」を開催します!
  2. 「発明の対価」8億円求め提訴=塩野義製薬に元社員-大阪地裁
  3. 武田、ビタミン原料事業から完全撤退
  4. 日本で始まる最先端半導体の開発 ~多くの素材メーカーが参画~
  5. 日本プロセス化学会2005サマーシンポジウム
  6. FM-AFMが実現!”溶ける”を原子レベ…
  7. 脂肪燃やすアミノ酸に効果 「カルニチン」にお墨付き
  8. アラン・マクダイアミッド氏死去

注目情報

ピックアップ記事

  1. 有機合成化学協会誌2024年4月号:ミロガバリン・クロロププケアナニン・メロテルペノイド・サリチル酸誘導体・光励起ホウ素アート錯体
  2. 研究室でDIY!~エバポ用真空制御装置をつくろう~ ③
  3. 化学者のためのエレクトロニクス講座~無電解めっきの原理編~
  4. ジェイムス・ブル エナンチオ過剰率決定法 James-Bull Method for Determination of Enantiomeric Excess
  5. シランカップリング剤入門【終了】
  6. 元素・人気記事ランキング・新刊の化学書籍を追加
  7. 重水素標識反応 Deuterium Labeling Reaction
  8. 被引用回数の多い科学論文top100
  9. 味の素、アミノ酸の最大工場がブラジルに完成
  10. ノーベル医学生理学賞、米の2氏に

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2008年10月
月 火 水 木 金 土 日
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

KISTEC教育講座 ~物質の付着はコントロールできる~中間水を活かした材料・表面・デバイス設計

開講期間令和8年12月1日(火)、2日(水)、3日(木)*12月1日、2日は1日単位の選…

2026年ノーベル化学賞ケムステ予想当選者発表!

2026年のノーベル化学賞は、「不斉有機合成における非線形効果および自己触媒作用の発…

第64回ケムステVシンポ「データとともに進化する未来の化学」を開催します!

第64回ケムステVシンポの会告を致します。産業技術総合研究所主催の化学シンポジウムシリーズ(…

品質工学とマテリアルズ・インフォマティクス ― 両技術の概要と連携事例

開催概要材料開発やものづくりの現場では、探索すべき組成やプロセス条件が増えるほど組み合わせが爆発…

大学院留学してよかったこと, 悪かったこと【英語, 経済面, オーバードクターに関するお話】

海外の大学で、その大学に籍を置く大学 (院) 生として留学することは「学位留学」と呼ばれたりします。…

光前駆体法の活用によって、ヘプタセンで初の一重項分裂を観測!

第725回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院 理学研究科化学専攻 有機元素化学研究室(山田研…

【スタッフ・寄稿募集】Chem-Stationで、化学を「伝える側」になりませんか?

Chem-Station(ケムステ)は2000年に開設された国内最大の化学ポータルサイトです。大学・…

第17回大津会議―とある参加者の記録―

2026年9月28日~29日に開催された第17回大津会議についての、とある参加者の記録です。この記事…

第17回大津会議 -Otsu Conference- 2026 開催報告 ~新体制で紡ぐ「有機合成の夢」~

第17回大津会議が2026年9月28日(月)〜9月29日(火)びわ湖大津プリンスホテルにて開催されま…

有機合成化学協会誌2026年10月号:医薬品プロセス開発・σ芳香族性・含窒素複素環・メロテルペノイド二量体・高歪み化合物

有機合成化学協会が発行する「有機合成化学協会誌」2026年10月号がオンラインで公開されています。…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP