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化学者のつぶやき

不斉をあざ(Aza)やかに(Ni)制御!Aza-Heck環化/還元的カップリング

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ニッケル触媒を用いたアルケン部位を有するオキシムエステルとヨウ化アルキルとの逐次的な不斉Aza-Heck環化/還元的カップリングが開発された。本反応では、適用範囲の広い求電子剤を用いて高いエナンチオ選択性でNヘテロ環を合成できる。

キラルなN-ヘテロ環の合成

N-ヘテロ環は医薬品や天然物などに頻出する重要な骨格である。N-ヘテロ環の強力な構築法の1つにアルケンをもつオキシムエステルのAza-Heck環化反応(奈良坂–Heck反応)がある[1]。奈良坂らの報告以降(図1A)[2]、Aza-Heck環化反応が盛んに研究され、本手法を用いてピロールやピロリンなどが合成可能になった[3]。しかし、本手法を用いたエナンチオ選択的なN-ヘテロ環の合成例は少ない[4]。Bowerらはキラルなパラジウム触媒を用いて、オキシムエステルの不斉Aza-Heck環化反応を初めて達成した(図1B上図)。ニッケル触媒による不斉Aza-Heck環化反応もGongらによって見いだされ、3,7a-ジヒドロインドールが不斉合成できた(図1B下図)。一方で、Aza-Heck環化で生じるアルキル金属種を他の反応剤で捕捉すれば、逐次的なAza-Heck環化/カップリングが可能となる。このような逐次反応の不斉反応への応用は、2017年Zhuらが報告した、キラルなパラジウム触媒によるオキシムエステルとオキサジアゾールとのAza-Heck環化/カップリングのみである(図1C)。しかし、オキサジアゾール以外のカップリング剤は適用できないという課題が残る。

今回、蘭州大学のShuらは、キラルなニッケル触媒と亜鉛存在下、オキシムエステルとヨウ化アルキルとの不斉Aza-Heck環化/還元的アルキルカップリング反応を開発した(図1D)。三級アルキルを含む広範なヨウ化アルキルを用いて反応が進行する。

図1. (A) Aza-Heck反応 (B) エナンチオ選択的なAza-Heck反応 (C) 逐次的Aza-Heck/カップリング (D) 本研究

 

Enantioselective Reductive N-Cyclization–Alkylation Reaction of Alkene-Tethered Oxime Esters and Alkyl Iodides by Nickel Catalysis
Jia, X.-G.; Yao, Q.-W.; Shu, X.-Z. J. Am. Chem. Soc. 2022, 144, 13461–13467. DOI: 10.1021/jacs.2c05523

論文著者の紹介

研究者:Xing-Zhong Shu (舒 兴中)

研究者の経歴:

2001–2005 B.S., Shaoxing University, China
2005–2010 Ph.D, Lanzhou University, China (Prof. Yong-Min Liang)
2010–2012 Postdoc, University of Wisconsin-Madison, USA (Prof. Weiping Tang)
2012–2015 Postdoc, University of California, Berkeley & Lawrence Berkeley National Laboratory, USA (Prof. F. Dean Toste and Prof. Paul Alivisatos)
2015– Professor, Lanzhou University, China

研究内容:遷移金属触媒を用いた還元的クロスカップリング反応の開発

 

論文の概要

著者らは新規キラルなPybox配位子をもつニッケル触媒と1,8-ナフチリジン及び亜鉛存在下、アルケン部位を有するオキシムエステル1とヨウ化アルキル2が反応し、3,4-ジヒドロピロール3がエナンチオ選択的に得られることを見いだした(図2A)。本反応では、一級のみならず二級及び三級ヨウ化アルキルを用いて中程度から高い収率と優れたエナンチオ選択性で3が得られる(3a3d)。また、種々のアリール基に加え、アルケニル基が結合したオキシムエステルを用いても高エナンチオ選択性で3が生成した(図2B, 3e, 3f)。

反応機構解明実験として著者らはラジカルクロック実験を行った(図2C)。本反応条件下、オキシムエステル1aとヨウ化アルキル2gを反応させたところ、シクロペンタン体3gが得られた。この結果は、系中でアルキルラジカルが生じることを支持する。本結果と種々の比較対照実験から、以下の反応機構が提唱されている(図2D)。まず、オキシムエステル1がニッケル(0)触媒に酸化的付加しAとなり、続くアルケンへの配位挿入を経て環化中間体Bが得られる。その後、系中で生じたアルキルラジカルが付加してニッケル(III)錯体Cとなり、還元的脱離によってアルキル化体3とニッケル(I)錯体Dを与える。Dはヨウ化アルキル2と反応し、ニッケル(II)錯体Eを形成後、亜鉛によって還元されてニッケル(0)触媒が再生する。

図2. (A, B) 基質適用範囲 (C) ラジカルクロック実験 (D) 推定反応機構

 

以上、アルケン部位を有するオキシムエステルとヨウ化アルキルとの逐次的な不斉Aza-Heck環化/アルキルカップリングが開発された。新規なニッケル触媒を用いて還元的カップリングをAza-Heck環化に組み込むことで、高難度な不斉反応が達成された。

 参考文献

  1. (a) Race, N. J.; Hazelden, I. R.; Faulkner, A.; Bower, J. F. Recent Developments in the Use of Aza-Heck Cyclizations for the Synthesis of Chiral N-Heterocycles. Chem. Sci. 2017, 8, 5248–5260. DOI: 10.1039/C7SC01480E (b) Chen, C.; Zhao, J.; Shi, X.; Liu, L.; Zhu, Y.-P.; Sun, W.; Zhu, B. Recent Advances in Cyclization Reactions of Unsaturated Oxime Esters (Ethers): Synthesis of Versatile Functionalized Nitrogen-Containing Scaffolds. Org. Chem. Front. 2020, 7, 1948–1969. DOI: 10.1039/D0QO00397B
  2. Tsutsui, H.; Narasaka, K. Synthesis of Pyrrole Derivatives by the Heck-Type Cyclization of γ,δ-Unsaturated Ketone O-Pentafluorobenzoyloximes. Chem. Lett. 1999, 28, 45–46. DOI: 1246/cl.1999.45
  3. (a) Fürstner, A.; Radkowski, K.; Peters, H. Chasing a Phantom by Total Synthesis: The Butylcycloheptylprodigiosin Case. Angew. Chem., Int. Ed. 2005, 44, 2777–2781. DOI:1002/anie.200462215 (b) Okamoto, K.; Oda, T.; Kohigashi, S.; Ohe, K. Palladium-Catalyzed Decarboxylative Intramolecular Aziridination from 4H-Isoxazol-5-ones Leading to 1-Azabicyclo[3.1.0]hex-2-enes. Angew. Chem., Int. Ed. 2011, 50, 11470–11473. DOI: 10.1002/anie.201105153 (c) Faulkner, A.; Bower, J. F. Highly Efficient Narasaka−Heck Cyclizations Mediated by P(3,5-(CF3)2C6H3)3: Facile Access to N-Heterobicyclic Scaffolds. Angew. Chem., Int. Ed. 2012, 51, 1675–1679. DOI: 10.1002/anie.201107511 (d) Hazelden, I. R.; Carmona, R. C.; Langer, T.; Pringle, P. G.; Bower, J. F. Pyrrolidines and Piperidines by Ligand-Enabled Aza-Heck Cyclizations and Cascades of N-(Pentafluorobenzoyloxy)carbamates.Angew. Chem., Int. Ed. 2018, 57, 5124–5128. DOI: 10.1002/anie.201801109 (e) Xu, F.; Korch, K. M.; Watson, D. A. Synthesis of Indolines and Derivatives by Aza-Heck Cyclization. Angew. Chem., Int. Ed. 2019, 58, 13448–13451. DOI: 10.1002/anie.201907758
  4. (a) Race, N. J.; Faulkner, A.; Fumagalli, G.; Yamauchi, T.; Scott, J. S.; Rydén-Landergren, M.; Sparkes, H. A.; Bower, J. F. Enantioselective Narasaka–Heck Cyclizations: Synthesis of Tetrasubstituted Nitrogen-bearing Stereocenters. Chem. Sci. 2017, 8, 1981–1985. DOI: 1039/C6SC04466B (b) Shen, H.-C.; Chen, Y.; Zhang, Y.; Jiang, H.-M.; Zhang, W.-Q.; Li, W.-A.; Sayed, M.; Zhang, X.; Wu, Y.-D.; Gong, L.-Z. Nickel-Catalyzed Enantioselective Desymmetrizing Aza-Heck Cyclization of Oxime Esters. CCS Chem. 2021, 3, 421–430. DOI: 10.31635/ccschem.021.202000671 (c) Ma, X.; Hazelden, I. R.; Langer, T.; Munday, R. H.; Bower, J. F. Enantioselective Aza-Heck Cyclizations of N-(Tosyloxy)carbamates: Synthesis of Pyrrolidines and Piperidines. J. Am. Chem. Soc. 2019, 141, 3356–3360. DOI: 10.1021/jacs.8b12689
  5. Bao, X.; Wang, Q.; Zhu, J. Palladium-Catalyzed Enantioselective Narasaka–Heck Reaction/Direct C–H Alkylation of Arenes: Iminoarylation of Alkenes. Angew. Chem., Int. Ed. 2017, 56, 9577–9581. DOI: 1002/anie.201705641

山口 研究室

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