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島津製作所、純利益325億円 過去最高、4年連続で更新

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島津製作所が10日発表した2019年3月期連結決算は、純利益が前期比9・0%増の325億円だった。液体クロマトグラフなど計測機器事業を中心に主力部門が国内外で伸び、売上高と利益の全てで過去最高を4年連続で更新した。 (引用:京都新聞5月10日)

分析機器で有名な島津製作所が2019年3月期連結決算(2018年4月~2019年3月)を発表し、売上高が3912億1300万円(前期比3.9%増)、経常利益が454億6200万円(前期比8.6%増)と4期連続で過去最高の業績となったそうです。製品別に状況を見ると、

  • 計測機器:多くの地域で液体クロマトグラフと質量分析システムが好調に推移。日本では、液体クロマトグラフと質量分析システムが減収となったものの輸送機関連分野で非破壊検査システム(X線検査装置)が好調であったため売り上げは微増となった。この結果増収増益となった。
  • 医用機器:欧州・東南アジアではX線撮影システムや血管撮影システムが好調に推移。北米・中国では売り上げが減少。日本では診療所向けのX線撮影システムなどが好調に推移。この結果増収減益となった。
  • その他:航空機器は減収減益、ターボ分子ポンプ、その他は、増収増益となった。

という結果になったとしています。

液クロと質量分析システムに関して、中国と東南アジアでの環境対策の用途で売り上げを伸ばしたそうで、環境に関連した分析の需要が増え続け、今までになかった地域でも分析機器の導入が進むかもしれません。一方のX線撮影システムに関しては、中国が自国の製品を優遇したことによって売り上げが減少したとしています。自国の製品を援助する戦略は理解できますが、優遇の差によって自由な企業間競争が阻害されることは残念なことです。

航空機器として島津製作所では、ギヤボックスや油圧モータを制御するバルブモジュール、航空機の揚力や機体姿勢などを制御するためにフラップや昇降舵などの操縦舵面をコントロールするシステムなどを製造しています。航空機の発注が世界的に増加しているため、これに関連する部品の売り上げも伸びていると考えられます。ターボ分子ポンプは、真空ポンプの一種で、半導体を製造する際には低圧力下での成膜やエッチングプロセスを行う必要があり、その圧力コントロールにこのターボ分子ポンプは使われます。5Gの普及が始まりさらに半導体の需要は高まると多くのアナリストが予測しているため、今後も需要が続きそうです。

全体としてどの製品も好調になりそうですが、どの地域でも政治がらみの不安材料はあり、全体として今後の見通しは不透明としています。特に米中の貿易摩擦の問題は刻々と変化していて多くの企業が注目しているのではないでしょうか。

最後に、地域別と製品別利益の割合をみると、日本からの利益は約半分で、その他は中国から多く利益が出ているようです。また製品別にみると液クロや質量分析をはじめとする計測機器が60%以上ですが、ターボ分子ポンプをはじめとする産業機器も10%近い利益を出しています。

島津製作所2019年3月期の地域別と製品別利益の割合

化学に関連していえば、日本の分析機器メーカーとして今後も世界中のラボで使われる素晴らしい分析機器を開発・販売し続けてほしいです。また分析機器だけでなく様々な産業で使われる機器・部品を作り続けてほしいと思います。

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ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

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