[スポンサーリンク]

ケムステニュース

三菱化学が有機太陽電池事業に参入

[スポンサーリンク]

 化学や繊維など素材大手が、再生可能エネルギーの本命として世界規模で導入が進む太陽電池事業を重点強化する姿勢を鮮明にし始めた。化学最大手の三菱化学が太陽電池事業の専門組織を4月1日付で立ち上げ、コスト効率に優れる有機太陽電池に新規参入するほか、日清紡は北米で太陽電池製造装置を販売する。化学素材の需要不振が続くなか、成長分野に軸足を移し、新たな牽引(けんいん)役として育成する(引用:フジサンケイビジネスアイ 出典:産業総合研究所))。

三菱化学はそれまで、1プロジェクトであった太陽電池プロジェクトを、拡大させOPV(有機太陽電池)推進室を立ち上げるそうです。本格化が始まった有機太陽電池事業。もちろんクリーンなエネルギーであることは間違いないですが、どうしてここにきて太陽電池の開発が急務となっているのでしょうか。


その理由の一つとして、太陽電池事業の爆発的な売上げの増加が挙げられます。現在世界の太陽電池市場はなんと1兆2008億円(2007年)。さらに2012年には4兆6751億円と5年で4倍近くの拡大が見込まれています。

??また、その他の理由として、つい最近、日本政府が太陽光発電に関する新たな買取制度の新設について具体的に述べました。その内容としては「電気を使っている人の太陽光発電導入が促進できるようにする。また、これまで努力をしてきた人にも評価をしてもらえるような、電気事業者が10年程度にわたり、現在の2倍程度の価格で買い取る仕組みを考えている。」ということでした。

つまり、これから太陽電池発電に関しての超優遇制度がつくられる可能性があるわけです。そこで、現在いまだ発展途上ではありますが、次世代の太陽電池として製法や拡張性などの有利な点が多い、有機薄膜太陽電池に注目が集まっているのです。有機薄膜太陽電池とは導電性ポリマーやフラーレンなどを組み合わせた有機薄膜半導体を用いる太陽電池のことです。例えば、2005年に産総研において、n型有機半導体としてフラーレン(C60)、p型有機半導体として亜鉛フタロシアニン(ZnPc)を用いることで、エネルギー変換効率が約4%の有機薄膜太陽電池の開発に成功しています。


C60ZnPc.gif

 そういうわけで、以下の表のように現在太陽電池を製造供給を行う化学系、材料系の企業が加速して開発研究を行う事業計画を発表しています。

sodzaicell.jpg

(出典:フジサンケイビジネスアイ2009.3.4.[太陽電池「輝き」先取り 三菱化学、事業化へ新組織より])

 現在は、最高レベルで4~6%というエネルギー変換率であり、これをかなり向上させなければならないという課題が残っています。10年後、さらに近い将来、有機薄膜太陽電池はそこら中で見られるようになるのでしょうか。注目です。

 

関連書籍

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 女優・吉岡里帆さんが、化学大好きキャラ「DIC岡里帆(ディーアイ…
  2. 高脂血症薬がウイルス抑制/C型肝炎で厚労省研究班
  3. 【速報】新元素4つの名称が発表:日本発113番元素は「ニホニウム…
  4. 自転車泥棒を臭いで撃退!?「スカンクロック」を考案
  5. サンケイ化学、フェロモン剤を自社生産
  6. 印民間で初の17億ドル突破、リライアンスの前3月期純益
  7. ミツバチの活動を抑えるスプレー 高知大発の企業が開発
  8. モンサント、住友化学 雑草防除で協力強化

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 化学エネルギーを使って自律歩行するゲル
  2. 1と2の中間のハナシ
  3. 東日本大震災から1年
  4. 現代の錬金術?―ウンコからグラフェンをつくった話―
  5. 再生医療ーChemical Times特集より
  6. シロアリに強い基礎用断熱材が登場
  7. 葉緑素だけが集積したナノシート
  8. 最新の産学コラボ研究論文
  9. ダイセルによる化学を活用した新規デバイス開発
  10. 可視光によるC–Sクロスカップリング

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年3月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

光と水で還元的環化反応をリノベーション

第609回のスポットライトリサーチは、北海道大学 大学院薬学研究院(精密合成化学研究室)の中村顕斗 …

ブーゲ-ランベルト-ベールの法則(Bouguer-Lambert-Beer’s law)

概要分子が溶けた溶液に光を通したとき,そこから出てくる光の強さは,入る前の強さと比べて小さくなる…

活性酸素種はどれでしょう? 〜三重項酸素と一重項酸素、そのほか〜

第109回薬剤師国家試験 (2024年実施) にて、以下のような問題が出題されま…

産総研がすごい!〜修士卒研究職の新育成制度を開始〜

2023年より全研究領域で修士卒研究職の採用を開始した産業技術総合研究所(以下 産総研)ですが、20…

有機合成化学協会誌2024年4月号:ミロガバリン・クロロププケアナニン・メロテルペノイド・サリチル酸誘導体・光励起ホウ素アート錯体

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年4月号がオンライン公開されています。…

日本薬学会第144年会 (横浜) に参加してきました

3月28日から31日にかけて開催された,日本薬学会第144年会 (横浜) に参加してきました.筆者自…

キシリトールのはなし

Tshozoです。 35年くらい前、ある食品メーカが「虫歯になりにくい糖分」を使ったお菓子を…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP