[スポンサーリンク]

ケムステニュース

ひらめききらめく:/1 「創」のとき、夢の鼓動 /北海道

[スポンサーリンク]

◇ノーベル賞候補、ゆかりの3人--すぐれた研究生かし自立探る

 北海道にも多くの、優れた発明や発見がある。ノーベル賞級の成果を挙げている研究者がおり、寒さや地域の特性を生かし、最先端の技術開発を進めている企業がある。だが、それらが道内で生かし切れているとはいえない。鈴木章・北海道大名誉教授ら、世界が注目するゆかりの3人の研究者を紹介するとともに、大学や企業などの取り組みから、北海道が自立するための方策を探る。【田中泰義】

 ◇海外で注目、有機合成化学--北大名誉教授・鈴木章氏

 「スズキ・カップリングに利用される試薬を発売中」

 米国の大手化学メーカー「シグマ・オルドリッチ」(本社・ウィスコンシン州)の製品案内の表紙にこう書かれている。同社は30カ国以上に拠点を持ち、年間売り上げは12億ドル(約1200億円)。その企業が、鈴木章・北海道大名誉教授(74)が発見した化学反応「スズキ・カップリング」に注目している。

 この反応により、炭素同士を効率よく思い通りに結合させることができる。炭素でできた有機化合物は抗がん剤などの医薬品、化学繊維や液晶などの材料になる。国際競争に勝ち残るため多くの海外企業が関心を寄せる。

 鈴木さんは1930年、自然豊かな胆振管内鵡川町で生まれた。両親に「勉強しろ」と言われることもなく、伸び伸びと育った。複数の正解がある国語より、論理的に一つの答えが導かれる算数が好きな少年だった。

 北大2年のとき、英語で書かれた有機化学の本に魅了され有機化学を専攻した。北大助教授就任後の63年から2年間、ブラウン米パデュー大教授(79年にノーベル化学賞を受賞、故人)のもとに留学。30人以上の留学生と切磋琢磨(せっさたくま)しながら、ホウ素を含んだ有機化合物の研究に着手した。

 有機ホウ素化合物は、水やアルコールと混ぜてもほとんど変化しない。このため、多くの研究者は新物質の合成には役立たないと考えた。しかし、鈴木さんは壊れにくいからこそ安全に扱うことができると発想を逆転した。帰国後の79年、パラジウムを触媒として用い、塩基を加えると有機ホウ素化合物から、目的としている有機化合物が効率よく得られることを発見した。(引用:毎日新聞

鈴木カップリングは天然物合成でも多用される重要な人名反応です。例えば同様の形式の反応で有機スズ化合物を用いるStilleカップリングがありますが、微量の有機スズ化合物が分離しにくく天然物合成の最終段階では生物活性試験等の際、細胞毒性を示す可能性があります。それに対して、鈴木カップリングは比較的無害に近いであるホウ素化合物であり取り扱いも有機スズ化合物よりも容易なため安心して使用することができます。

関連書籍

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 武田、フリードライヒ失調症薬をスイス社と開発
  2. 窒化ガリウムの低コスト結晶製造装置を開発
  3. つり革に つかまりアセる ワキ汗の夏
  4. 国際化学オリンピック2023が開催:代表チームへの特別インタビュ…
  5. ガンマ線によるpHイメージングに成功 -スピンを用いて化学状態を…
  6. 肥満防止の「ワクチン」を開発 米研究チーム
  7. 浄水場から検出されたホルムアルデヒドの原因物質を特定
  8. 有機・高分子関連技術が一堂に会す「オルガテクノ2005」開催へ

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 化学コミュニケーション賞2023、候補者募集中!
  2. 臭いの少ない1,3-プロパンジチオール等価体
  3. 第九回 タンパク質に新たな付加価値を-Tom Muir教授
  4. フルオラス向山試薬 (Fluorous Mukaiyama reagent)
  5. ルステム・イズマジロフ Rustem F. Ismagilov
  6. バーゼル Basel:製薬・農薬・化学が集まる街
  7. トシルヒドラゾンとボロン酸の還元的カップリング反応とその応用展開
  8. 有機銅アート試薬 Organocuprate
  9. リアル『ドライ・ライト』? ナノチューブを用いた新しい蓄熱分子の設計-前編
  10. トリフルオロメタンスルホン酸ランタン(III):Lanthanum(III) Trifluoromethanesulfonate

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2005年1月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

5/15(水)Zoom開催 【旭化成 人事担当者が語る!】2026年卒 化学系学生向け就活スタート講座

化学系の就職活動を支援する『化学系学生のための就活』からのご案内です。化学業界・研究職でのキャリ…

フローマイクロリアクターを活用した多置換アルケンの効率的な合成

第610回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院理学研究科(依光研究室)に在籍されていた江 迤源…

マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-

概要親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.…

【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

<求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

大正製薬ってどんな会社?

大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP