[スポンサーリンク]

ケムステニュース

ユネスコ女性科学賞:小林教授を表彰

[スポンサーリンク]

(小林昭子教授と小林速男名誉教授)

 すぐれた女性科学者をたたえる09年度「ロレアル-ユネスコ女性科学賞」の授賞式が5日、パリのユネスコ本部で開かれ、小林昭子・日大教授・東京大名誉教授(65)=写真・ロレアル社提供=ら5人に賞金各10万ドル(約1000万円)が贈られた。同賞の日本人受賞は00年度の岡崎恒子・名古屋大名誉教授、05年度の米沢富美子・慶応大名誉教授に次いで3人目(引用:毎日新聞)。

?すでに半年以上前に決まり、報道もされていたようですが、3月5日にパリで授賞式があり再び報道されていました。小林昭子教授は2001年に一種類の分子から出来た最初の金属結晶(単一分子性金属)を実現させた研究者として知られています。

それまでは単一中性分子では絶縁体であると考えられてきました。電気を流すパスを形成する分子が、そのパスの中に電子あるいはホールというキャリアーを発生させるためには、パスを形成している分子との間で電子のやりとりを行う分子種が必用だからです。しかし、小林教授ら分子性金属に関する長年の研究から、硫黄原子を沢山含むπ電子の広がった配位子を持つニッケル錯体Ni(tmdt)2では、分子のHOMO-LUMO ギャップが小さく、結晶中での分子間の強い相互作用によって近接したHOMOバンドとLUMOバンドが重なり合うことによって、銅のような金属元素のように、一種類の分子が集合しただけで金属結晶となることを予測し、見事に一種類の分子から出来た最初の金属結晶を実現させました(参考:東京大学理学研究科受賞表照覧)

 

Nitmdt2-1.gif

 

 

この拡張TTF型ジチオレン錯体であるNi(tmdt)2は0.6Kまで金属的な伝導性を示すことが明らかになり、さらに後の研究によって金属特有のフェルミ面も確認されています。

Nitmdt2.gif

(出典:日本大学文理学部化学科小林研究室)

 ちなみに、2006年に日本化学会賞を受賞した分子科学研究所小林速男名誉教授が夫であり、夫婦で二人三脚で研究をやってきたそうです。夫婦で研究をやれるなんてすばらしいと思います。家庭と研究を両立し、21年間助手時代をつとめ、それでも1つの大きな結果をだした小林教授は女性化学者の手本ではないでしょうか。

ところでこのロレアルーユネスコ女性科学賞の「学生版」があるのはご存知であったでしょうか。ちなみに筆者も知らず、調べていたところ、ロレアル-ユネスコ女性科学者日本奨励賞というものがあるのを知りました。覗いてみると、なにやら見たことある名前が。。。 いやはや驚きました。現在第4回目で今年の応募は1週間ほど前に終わってしまったようですけれども、化学の分野でもかなり受賞しているようですので、女性化学者の卵の皆さんぜひ応募してみてください。

 

関連論文

Tanaka, H.; Okano, Y; Kobayashi, H.;Suzuki, W.; Kobayashi, A. Science, 2001, 291, 285.

 

関連リンク

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 【10周年記念】Chem-Stationの歩み
  2. 三菱化学の4‐6月期営業利益は前年比+16.1%
  3. 阪大で2億7千万円超の研究費不正経理が発覚
  4. 化学者のランキング指標「h-index」 廃止へ
  5. 新たな要求に応えるために発展するフッ素樹脂の接着・接合技術
  6. 総合化学大手5社の前期、4社が経常減益
  7. 2010年日本化学会各賞発表-学術賞-
  8. ヤンセン 新たな抗HIV薬の製造販売承認を取得

注目情報

ピックアップ記事

  1. その置換基、パラジウムと交換しませんか?
  2. ゼムラー・ウォルフ反応 Semmeler-Wolff Reaction
  3. 中高生・高専生でも研究が学べる!サイエンスメンタープログラム
  4. マクマリーを超えてゆけ!”カルボニルクロスメタセシス反応”
  5. クロム(η6-アレーン)カルボニル錯体 Cr(η6-arene)(CO)3 Complex
  6. 【金はなぜ金色なの?】 相対論効果 Relativistic Effects
  7. ボリルメタン~メタンの触媒的ホウ素化反応
  8. 文具に凝るといふことを化学者もしてみむとてするなり⑥:実験室でも長持ち「ステンレス定規」の巻
  9. Undruggable Target と PROTAC
  10. ヘリウム (helium; He)

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年3月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

ジョセップ・コルネラ Josep Cornella

ジョセップ・コルネラ(Josep Cornella、1985年2月2日–)はスペイン出身の有機・無機…

電気化学と数理モデルを活用して、複雑な酵素反応の解析に成功

第658回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院 農学研究科(生体機能化学研究室)修士2年の市川…

ティム ニューハウス Timothy R. Newhouse

ティモシー・ニューハウス(Timothy R. Newhouse、19xx年xx月x日–)はアメリカ…

熊谷 直哉 Naoya Kumagai

熊谷 直哉 (くまがいなおや、1978年1月11日–)は日本の有機化学者である。慶應義塾大学教授…

マシンラーニングを用いて光スイッチング分子をデザイン!

第657 回のスポットライトリサーチは、北海道大学 化学反応創成研究拠点 (IC…

分子分光学の基礎

こんにちは、Spectol21です!分子分光学研究室出身の筆者としては今回の本を見逃…

ファンデルワールス力で分子を接着して三次元の構造体を組み上げる

第 656 回のスポットライトリサーチは、京都大学 物質-細胞統合システム拠点 (iCeMS) 古川…

第54回複素環化学討論会 @ 東京大学

開催概要第54回複素環化学討論会日時:2025年10月9日(木)~10月11日(土)会場…

クソニンジンのはなし ~草餅の邪魔者~

Tshozoです。昔住んでいた社宅近くの空き地の斜面に結構な数の野草があって、中でもヨモギは春に…

ジアリールエテン縮環二量体の二閉環体の合成に成功

第 655回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院松田研究室の 佐竹 来実さ…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP