[スポンサーリンク]

ケムステニュース

パッションフルーツに「体内時計」遅らせる働き?

[スポンサーリンク]

パッションフルーツなどから抽出した物質に、体の機能を調整する「体内時計」の周期を遅らせる働きがあることが、産業技術総合研究所の大西芳秋主任研究員らの研究で分かった。

食物から抽出した物質とあって、安全性の高い時差ボケの治療薬の研究につながる成果として注目されている。英国の科学誌「バイオサイエンス・レポート」(電子版)に掲載された。

体内時計を遅らせる効果が見つかったのは、ハルミンという有機化合物。これが豊富に含まれるパッションフルーツやパッションフラワーには古くから鎮静、睡眠導入効果があると言われていた。

大西さんらは、マウスの細胞に蛍の発光遺伝子などを組み込み、体内時計によって約24時間周期で光り方が変わる細胞を作製。これにハルミンを加えて観察したところ、体内時計をつかさどる遺伝子の効果が増強され、約30時間周期へと遅らせる効果が分かった。大西さんは「体内時計を制御するメカニズムはかなり解明されつつあり、ハルミンをさらに調べて時差ボケ予防に役立てたい」と話している(引用:読売新聞)。

化合物名が書いてあったので記事にしてみました。ハルミン(Harmine)はβカルボリンの一種。他のβカルボリンではどうなんだろう?分野外なので判断が難しいですが、出版された科学誌のinpact factorは2.2ほど。この分野が引用されることが少ないのかもしれません。体内時計を遅らせることがパッションフルーツでできるならいざというとき食べてみようかな(どんなときだ)。

産業創業研究所に具体的な研究内容が示されていました(睡眠障害改善に効果が期待されるハルミン)記事によると、体内時計の遺伝子であるBmal1遺伝子の転写リズムの周期を延長させることを発券したそうです。対照実験が25.8時間に比べて、ハルミンを摂取した場合は30.9時間(図参照)。

harmine2.png

今後の研究に期待したいと思います。しかしなぜ、ハルミンをスクリーニングで選んだんだろうな?と気になるところです。

話はちょっとずれますが、先日ある人にワインを勧められ、「ワインは体にいいんだよ!」って言っていました。なんで?ときいたら「ポリフェノールがいいんだよ」と。もちろんポリフェノールもなにがいいかもわかっていません。わかっていなくてもいいですが、思ったのはメディアの効果は絶大だと。そういう意味では気を付けなければならない点がたくさんありますね。研究は研究で真面目にやっている方がほとんどですし、これから実証していく段階にあるわけです。体にいいというより「おいしい」でいいのではないでしょうか。もちろん「おいしい」のでいただきましたが。

 

  • 関連書籍

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. やせ薬「塩酸フェンフルラミン」サヨウナラ
  2. トムソン・ロイターのIP & Science事業売却へ…
  3. 国際シンポジウム;創薬・天然物―有機合成化学の展望―
  4. 【第一三共】抗血小板薬「プラスグレル」が初承認‐欧州で販売へ
  5. 白血病治療新薬の候補物質 京大研究グループと日本新薬が開発
  6. 青色発光ダイオードの赤﨑勇氏らに京都賞
  7. 塩野義製薬、抗インフル治療薬を年内に申請
  8. 三井化学、DXによる企業変革の成果を動画で公開

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 2008年10大化学ニュース
  2. クロスカップリングはどうやって進行しているのか?
  3. アルカロイドの科学 生物活性を生みだす物質の探索から創薬の実際まで
  4. 堀場雅夫 Masao Horiba  
  5. Carl Boschの人生 その10
  6. 英会話イメージリンク習得法―英会話教室に行く前に身につけておきたいネイティブ発想
  7. 化学者のためのエレクトロニクス講座~次世代の通信技術編~
  8. ヘテロカンシラノール
  9. ニール・K・ガーグ Neil K. Garg
  10. 学振申請書を磨き上げる11のポイント [文章編・後編]

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2011年8月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

5/15(水)Zoom開催 【旭化成 人事担当者が語る!】2026年卒 化学系学生向け就活スタート講座

化学系の就職活動を支援する『化学系学生のための就活』からのご案内です。化学業界・研究職でのキャリ…

フローマイクロリアクターを活用した多置換アルケンの効率的な合成

第610回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院理学研究科(依光研究室)に在籍されていた江 迤源…

マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-

概要親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.…

【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

<求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

大正製薬ってどんな会社?

大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP