[スポンサーリンク]

医薬品

塩化ラジウム223

[スポンサーリンク]

塩化ラジウム223(Radium-223 chloride)は、ラジウム223の塩化物でα崩壊を起こす。α線を用いた癌治療薬となっていて商品名は、ゾーフィゴ(Xofigo)である。

分子特性

ラジウムは第二族元素でありその塩化物、塩化ラジウムは白色固体で、加熱すると青緑色の蛍光を発する。水には溶解しにくく濃塩酸にはほとんど解けない。半減期11.43日で崩壊しラドン219となる。

img_checked01

崩壊エネルギーの95%をα線として放出することがこの化合物の最大の特徴であり、存在していたβ線を放出する薬(ヨウ化ナトリウム131)とは異なる点である。α線は、透過力が弱く体内では、0.1ミリ未満しか飛ばないため、正常な細胞へのダメージが少ないとされる。カルシウムのように骨に集まりやすい性質があり一種の前立腺がんに対して効果が認めれている。実際の治療では、一か月ごと6回の注射によって体内に入れられる。

合成方法

ラジウム223が作られるには、2ルート存在し、一つは天然に存在するであるRa226に中性子を照射し、Ra227を生成させる。Ra227は半減期42.2分でRn223になり、Rn223は半減期23.2分でFr223になる。そしてFr223は、半減期22分でRa223になる。もう一方のルートは、天然に存在するAt227は半減期21.7年でTh227になり、Th227は、18.72日でRa223となる。このようにして生成したRa223を抽出などの操作によって精製し薬にする。材料の輸出入の規制が厳しく日本では製造することができないため、ゾーフィゴは輸入製剤である。価格も一回684,930 円と非常に高価である。

関連書籍

[amazonjs asin=”4765313530″ locale=”JP” title=”癌治療における放射線診療の展開―放射線治療・IVR・RI内用療法”]

関連リンク

Avatar photo

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. プラテンシマイシン /platensimycin
  2. スピノシン Spinosyn
  3. ITO 酸化インジウム・スズ
  4. ジフェニルオクタテトラエン (1,8-diphenyl-1,3,…
  5. Sulfane sulfur が生み出す超硫黄分子
  6. チエナマイシン /thienamycin
  7. オリンピセン (olympicene)
  8. ヒノキチオール (hinokitiol)

注目情報

ピックアップ記事

  1. 酸素 Oxygen -空気や水を構成する身近な元素
  2. 有機反応を俯瞰する ー挿入的 [1,2] 転位
  3. 科学部をもっと増やそうよ
  4. チャンパック・チャッタージー Champak Chatterjee
  5. SchultzとKay: 米スクリプス研究所のトップへ
  6. 生物に打ち勝つ人工合成?アルカロイド骨格多様化合成法の開発
  7. ケーニッヒ・クノール グリコシド化反応 Koenigs-Knorr Glycosidation
  8. 光学活性なα-アミノホスホン酸類の環境に優しい新規合成法を開発
  9. ベンゼン環をつないで 8 員環をつくる! 【夢の三次元ナノカーボンの創製に向けて】
  10. 円偏光スピンLEDの創製

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年11月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP