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化学者のつぶやき

恋する創薬研究室

 

 

ノーベル賞ウィークに湧いている科学界隈ですが、明日のノーベル化学賞を控えて、化学分野は1年に一度の”お祭”気分。通常の記事なんてなかなか手に付かないところですが、ノーベル化学賞発表の次の日、10月10日に上記の書籍が発売されるのです。そう、化学小説家の第一人者、喜多喜久さんによる、新刊が発売されるという情報を得ました!そこで、いつもどおり喜多さんにケムステ読者に書籍の見どころを聞いてみました1それでは喜多さんどうぞ!

 

 

『化学者のつぶやき』をご覧の皆様、いつもお世話になっております。喜多喜久です。

つい先日も、『化学探偵Mr.キュリー』(おかげさまで現在三刷と好調です!)の書籍紹介させていただきましたが、10月10日に新刊が出ることになりましたので、書籍の宣伝もかねまして、読者のみなさまに見どころを紹介したいと思います。お時間のある方は、本稿にお付き合いいただけると幸いです。

 

さて、新作のタイトルは、

恋する創薬研究室 片思い、ウイルス、ときどき密室

です。(幻冬舎)

いささか長いタイトルですが、メインタイトルは『恋する創薬研究室』で、後半部分はサブタイトルです。「密室」というフレーズから連想される通り、内容としてはミステリーに分類するのが妥当かと思います。

 

本書の帯にはこんな見出しが書かれています。

 

『恋愛、オシャレ、実験、謎解き――全部苦手。』

冴えない理系女子が、イケメン理系男子に恋をした。ライバルの出現、差出人不明の脅迫状、意外な三角関係、新薬開発の失敗……。不本意だらけのヘタレ女子、反撃開始!

 

この見出しにある通り、本作の主人公、伊野瀬花奈(いのせ かな)は理系女子。有機化学を専攻している、れっきとした研究者です。しかし、彼女は非常に実験がへたくそです。簡単な反応も失敗しますし、しょっちゅうガラス器具を壊しています。しかも、ただ下手なだけではなく、とんでもないトラブルを起こすこともあります。彼女は最初の登場シーンで、誤って実験台に水素化アルミニウムリチウムをこぼしてしまった上に、それに水を振りかけて不活化しようとします。これがどれほど危険な行為かは、日々化学実験に勤しんでいる方なら、よくお分かりいただけると思います。

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とまあ、花奈は典型的なダメ学生なのですが、同じ研究室の助教で、薬理グループを指導している北条智輝(ほうじょう ともき)というイケメン男子に恋心を抱いています。(表紙の左側の男性です)しかし、臆病者の花奈は、ただ思いを募らせるばかりで、何のアプローチもできないまま、毎日を過ごしていました。

 

そんなある日、花奈のもとに、「恋愛相談事務局」なる学内の部署からメールが届きます。恋愛相談事務局は、少子化対策のために実験的に設立された部署で、学生の恋愛をサポートし、カップルを成立させることを活動目的としています。

事務局を訪れた花奈は、彼女自身の片思いではなく、なぜか智輝についての質問を受けることになります。疑問を抱いた花奈は、早凪(はやなぎ)という名の担当相談員から、「智輝が誰かに片思いをしており、その解決依頼が事務局に寄せられている」ことを知らされます。早凪によると、片思い相手は不明なままで、その調査が現在行われているとのこと。そこで花奈は一念発起し、誰かに智輝をとられる前に自分の片思いを叶えてほしいと、恋愛相談事務局に依頼をします。

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こうして、花奈は早凪と協力しながら、片思いを叶えるための行動を始めるわけですが、時を同じくして、花奈のもとに差出人不明の脅迫状が届くようになります。やがて不可解な事件が頻発し始め、彼女の周囲が騒がしくなっていく――というストーリーになっています。

 

恋愛問題がストーリーの中心に据えられていますが、花奈は創薬系の研究室に所属しており、インフルエンザ治療薬の探索研究を行っています。そのため、彼女がふだん行っている合成実験については、本作のあちこちで描写がありますし、薬理実験や、コンピューターを使った薬物設計(CADD)についても触れています。本作を読んでいただければ、創薬の現場の雰囲気がなんとなく掴めるのではないかと思います。

CADD.png

僕は製薬会社に勤務する研究者として、10年以上創薬に携わっています。創薬の話はずっと前から書きたいと思っていましたが、今回、ようやく一冊の本に仕上げることができました。

創薬は難しく、楽しく、やりがいがあるものだと思っています。そういった、創薬に対する熱意のようなものが少しでも伝われば幸いです。

皆様、書店でお見かけの際は、どうぞよろしくお願いいたします!

 

PS 本作には、僕のデビュー作『ラブ・ケミストリー』との繋がりを匂わせる描写がいくつかあります。『ラブケミ』を既読の方は、より一層物語を楽しめるのではないかと思います。

 

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院准教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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  • コメント (1)

  1. 化合物が、酵素のポケットにうまくハマって、両思いになるといいなぁ。

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