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有機合成化学協会誌2022年3月号:トリフリル基・固相多点担持ホスフィン・触媒的アリル化・スルホニル基・荷電π電子系/ 菅 敏幸 先生追悼

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有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2022年3月号がオンライン公開されました。

もうすぐ日本化学会年会ですね。対面でできないのがもどかしいですが、オンラインでも良い議論ができるよう鋭意実験・プレゼン作りに励んでいるところです。

今月号は、超 特別号です。今月号は絶対最初から最後まで読んでください。

キーワードは、「トリフリル基・固相多点担持ホスフィン・触媒的アリル化・スルホニル基・荷電π電子系です。

今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。

巻頭言:個性を表現する

今月号の巻頭言は、筑波大学数理物質系化学域市川淳士教授の寄稿記事です。
研究にどう個性を色付けていくかは、研究者全員に共通する重要な考えごとではないでしょうか。必読です。

(トリフルオロメチル)スルホニル基で安定化されたカルボアニオンの化学

矢内 光*

*東京薬科大学薬学部

極めて電気陰性なトリフリル(Tf)基を活用することによって、極端に安定なカルボアニオンをつくり出すことができる。このような超安定カルボアニオンを用いれば、反応性中間体ベタインや高極性オレフィン類の分子構造について新しい知識を得ることができる。さらに、親油性・親水性ともに高い蛍光分子を開発することも可能になる。

固相多点担持ホスフィンによる高活性不均一系遷移金属触媒の開発

岩井智弘*

2020年有機合成化学奨励賞受賞

*東京大学大学院総合文化研究科

多くの触媒屋は、固相担持金属錯体の触媒活性は“そこそこ”で、均一系金属錯体には及ばないと考えている。新しい概念で設計された固相担持ホスフィン配位子は、この固定観念を打ち破る。本配位子は簡便に調製でき、様々な金属前駆体と錯形成して、均一系金属錯体を凌駕する触媒活性を示す。全ての触媒屋に読んでほしい、お勧めの論文。

末端アルケンを求核剤とするカルボニル化合物の触媒的アリル化反応

道上健一1、美多 剛2*、佐藤美洋3*

1  大阪府立大学大学院理学系研究科分子科学専攻

2* 北海道大学化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)

3* 北海道大学大学院薬学研究院

コバルト/Xantphos触媒を用いた、アルケンのアリル位C(sp3)–H結合を切断によるアリル金属種の発生と、二酸化炭素による官能基化反応の開発に端を発する著者らのアルケンのアリル位官能基化反応の開発秘話がまとめられています。C–H結合の官能基化の新たな潮流になると期待される内容です。ぜひ、ご一読ください。

スルホニル基の特性を活かした逐次的分子構築法の開発と応用

南保正和1*、Cathleen M. Crudden 1,2*

1 2020年有機合成化学奨励賞受賞

1*名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所

2*クイーンズ大学化学科

“古くて新しい”スルホンの分子変換の新展開です。化学的に安定なスルホニル基に潜在する電子求引性や脱離能を合理的に活用して、ハロゲン化物では困難な逐次的カップリング反応等が開拓されています。スルホニル基の分子設計や様々な金属触媒 (Pd, Ni, Cu, Sc) による多彩な活性化が展開されており、スルホンの特性を駆使した有機合成化学の魅力が伝わってきます。

荷電π電子系を構成ユニットとした集合体の創製

山角和久、杉浦慎哉、田中宏樹、前田大光*

*立命館大学生命科学部応用化学科

Π電子系の超分子化学で過去10年ほど構造有機化学・基礎有機化学会を引っ張ってこられた立命館大学 前田大光先生の全てが詰まってます。初学者も構造有機玄人も必見の渾身のご一作です。

Review de Debut

今月号のReview de Debutは1件です。open accessですのでぜひ。

・アクリジニウムを光触媒に用いた有機合成反応 (岡山理科大学工学部バイオ・応用化学科)奥田靖浩

ラウンジ

本号のラウンジは、故 菅 敏幸 先生 (静岡県立大学 薬学部 教授)の追悼ラウンジです。
ケムステ読者はご存知の方が多いと思いますが、菅先生は、2021年7月24日に57歳の若さで亡くなられました。
多くの人が尊敬する化学者で有られたとともに、明るく情熱的なお人柄で多くの人を魅了する先生でした。
筆者も、学生時代から学会などでお会いするたびに激励していただきました。すぐに名前を覚えていただいて、先生からお声がけくださることもあり、、、嬉しく、楽しく、感動する思い出ばかりです。
ご逝去の知らせに言葉が無くなりました。今でも気持ちの整理がつきません。
有機合成化学協会誌にもとても関わりの深い先生です。
福山透先生の「菅先生の愛した協会誌でぜひ企画を」という声かけに、なんと8名もの先生方が寄稿くださりました。
これも、菅先生の素晴らしいお人柄とご功績によるものと思います。オープンアクセスですので、ぜひ全てご覧ください。

・菅敏幸君の北大時代 (北海道大学名誉教授)白濱晴久

・高校~北大時代の菅さんを偲んで (横浜市立大学)及川雅人

・菅敏幸博士を偲んで:サントリー生物有機科学研究所での3年間 (公益財団法人サントリー生命科学財団)堀川学

・菅敏幸先生を偲んで: 無骨さと繊細さのはざまで ‐ 東京大学福山研究室時代 (Moderna, Inc.)遠藤篤史

・「花となるより根となろう」菅先生の静岡県立大でのご活躍 (東海大学海洋学部)浅川倫宏

・菅さんとの2冊の本の思い出 (東北大学大学院理学研究科)林雄二郎

・静岡を天然物化学のメッカに! (静岡大学グリーン科学技術研究所)河岸洋和

・稀代の傑物、菅敏幸氏を偲んで (東京大学名誉教授)福山透

 

感動の瞬間:研究は面白い! そして人との出会いを大切に 

今月号の感動の瞬間は、慶應義塾大学理工学部 千田 憲孝 教授の寄稿記事です。
「研究は面白い」だけでなく、「この人と出会えてよかった」と思えることが感動の瞬間ということに深く共感します。
また、一緒に研究をしているメンバーにそう思ってもらえるような研究活動をしたいと思いました。必読です。

これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズを参照してください。

関連書籍

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博士(理学)。大学教員。娘の育児に奮闘しつつも、分子の世界に思いを馳せる日々。

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