[スポンサーリンク]

世界の化学者データベース

ジョージ・オラー George Andrew Olah

[スポンサーリンク]

ジョージ・アンドリュー・オラー(George Andrew Olah、1927年5月27日-2017年3月8日)は、アメリカの有機化学者である。南カリフォルニア大学名誉教授。ローカー炭化水素研究所所長。1994年に「カルボカチオン化学への貢献」にてノーベル化学賞を単独受賞。 2005年プリーストリーメダル受賞(画像出典:Los Angeles Times )。

 経歴

1927年5月27日、ハンガリーのブダペストに生まれる。ブダペスト工業大学に学ぶが、1956年のハンガリー動乱により家族とともにイギリス、カナダへと逃亡。そこでダウ・ケミカル社に入社し、カルボカチオン化学の研究を始める。その後、1965年にウェスタンリザーブ大学、1977年に南カリフォルニア大学へと移る。

1949 ブダペスト工業大学 博士号取得
1949 ブダペスト工業大学 助教
1954 ハンガリー科学アカデミー中央研究所 副所長
1956 ダウ・ケミカルカンパニー入社
1965 ウェスタンリザーブ大学 教授
1977 南カリフォルニア大学 教授
1991 ローカー炭化水素研究所所長

 

受賞歴

1967 Leo Hendrick Baekeland Award
1979 Alexander von Humbolt Fellowship
1989 ロジャー・アダムス賞
1994  ノーベル化学賞
1996 Cotton Medal
2001  アーサー・C・コープ賞
2005 プリーストリーメダル
2013 Eric and Sheila Samson’s Prime Minister’s Prize
2013 Semmelweis Budapest Award

 

研究

マジック酸(Magic Acid):五フッ化アンチモン(SbF5)とフルオロスルホン酸(FSO3H)を混合して得られる超強酸。その酸性度は硫酸(H2SO4)のおよそ1000倍以上と見積もられる。通常プロトン化を受けない炭化水素系化合物すらプロトン化させる能力を持つ。オラーはこの酸を利用し、様々なカルボカチオン種を系統的に発生させ、かつ実験的に観測する手法を確立した。また、その過程で様々な有機合成手法の開発にも成功している[1]

 

非古典的カルボカチオン(Non-Classical Carbocation): シグマ結合を介して非局在化した、三中心二電子型カルボカチオンを指してこう呼ぶ。ノルボルニルカチオンがその代表的な例としてあげられる。その実在・非実在を巡り、1960年代から70年代にかけて激しい論争が巻き起こった。実在派はS・ウィンシュタイン、否定派はハーバート・ブラウンがその代表格であった。オラーは、ノルボルニルカチオンを実験的に生成させてNMR測定を行うこと[2]で非古典的カチオンの存在を実証し、論争に終止符を打った。

 

メタノールエコノミー(Methanol Economy):Olahは既存のエネルギー問題に統合的な解決を与えるべく、「化石燃料の代わりにメタノールをエネルギー媒体として用いる」という社会構想を提案している。これは環境問題に対する有効な進歩を与えるばかりか、資源偏在問題やエネルギーインフラ刷新コストの低減など、様々な分野に幅広いインパクトを与え、かつ現実的な優れた提案と鳴っている。このような社会構想をOlahは「Methanol Economy(メタノール経済社会)」[3]と呼称している。

GAOlah_5.gif

関連動画

関連論文

  1. Research Review: Olah, G. A. J. Org. Chem. 2005, 70, 2418. DOI:10.1021/jo040285o
  2. (a) Olah, G. A.; Tolgyesi, W. S. J Am Chem Soc 1961, 83, 5031. DOI: 10.1021/ja01485a037 (b)Schleyer, P. v. R.; Watts, W. E.; Fort, R. C.; Comisarow, M. B.; Olah, G. A. J. Am. Chem. Soc. 196486, 5679. DOI:10.1021/ja01078a056
  3. (a) Olah, G. A. Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 2636. doi:10.1002/anie.200462121 (b) Olah, G. A.; Prakash G. K. S.; Goeppert, A. J. Org. Chem. 2009, 74, 487. doi:10.1021/jo801260f (c) Methanol Economy – Wikipedia (d) Olah, G. A. Angew. Chem. Int. Ed. 2013, 52 , 104. DOI: 10.1002/anie.201204995

名言集

「21世紀が近づいている。国の将来は若者の教育にどれほどのものを提供できるかにかかっている。教育は未来への最高の投資だ。非常に競争的な時代に突入しているからこそ、これが重要になっている。人は読むことから学ぶだけでなく、コンピュータを使って学ばなければならない。科学は国際的な事業で、一国だけでは発展させられるようなものではない。しかし、自然資源に恵まれていない国では、もっとも重要な資源が人間そのものなのだ」(引用:「異星人伝説 20世紀を創ったハンガリー人」マルクス・ジョルジュ著、日本評論社、2001年)

コメント & その他

  1. 彼はハンガリー人である。ハンガリーからはここ50年ほどで非常に多くのノーベル賞受賞者が輩出されている。その理由としては、高校教育の充実があげられる。1人の生徒に対する教員の割合が多く、さらに高校教師といえども博士を有している教師がたくさんいるという。そのためOlahも、特に自分の国に関する将来は気遣って上記のような発言を残している。
  2. かなり大柄な方で、写真をみればわかるように彫りの深い顔、常に紳士的な対応の化学者であるようだ。
  3. フッ化水素(HF)ーピリジン試薬は彼が開発したため、「オラー試薬」とも呼ばれている。

関連書籍

[amazonjs asin=”475981275X” locale=”JP” title=”メタノールエコノミー”]

(書評:【書籍】「メタノールエコノミー」~CO2をエネルギーに変える逆転の発想~

[amazonjs asin=”3319044346″ locale=”JP” title=”Fluorine in Heterocyclic Chemistry Volume 2: 6-Membered Heterocycles (Springer International Publish)”][amazonjs asin=”0471543705″ locale=”JP” title=”Synthetic Fluorine Chemistry”][amazonjs asin=”0470049618″ locale=”JP” title=”Superelectrophiles and Their Chemistry”][amazonjs asin=”0471148776″ locale=”JP” title=”Onium Ions”][amazonjs asin=”0471186953″ locale=”JP” title=”Nitration: Methods and Mechanisms (Organic Nitro Chemistry)”][amazonjs asin=”0470935685″ locale=”JP” title=”Hypercarbon Chemistry”][amazonjs asin=”B014T25JIM” locale=”JP” title=”A Life of Magic Chemistry: Autobiographical Reflections Including Post-Nobel Prize Years and the Methanol Economy”][amazonjs asin=”B0063CWCJQ” locale=”JP” title=”Beyond Oil and Gas: The Methanol Economy”]

関連リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 楊井 伸浩 Nobuhiro Yanai
  2. 永木愛一郎 Aiichiro Nagaki
  3. 村井 眞二 Shinji Murai
  4. 名古屋メダル―受賞者一覧
  5. クゥイリン・ディン Kui-Ling Ding
  6. 福住 俊一 Shunichi Fukuzumi
  7. ドナルド・トマリア Donald Tomalia
  8. 山本嘉則 Yoshinori Yamamoto

注目情報

ピックアップ記事

  1. 巧みに骨格構築!Daphgracilineの全合成
  2. 温度値をどう判断するか【プロセス化学者のつぶやき】
  3. 米国へ講演旅行へ行ってきました:Part IV
  4. 近況報告PartIV
  5. 第113回―「量子コンピューティング・人工知能・実験自動化で材料開発を革新する」Alán Aspuru-Guzik教授
  6. アカデミアケミストがパパ育休を取得しました!
  7. フィッツナー・モファット酸化 Pfitzner-Moffatt Oxidation
  8. 三井物と保土谷 多層カーボンナノチューブを量産
  9. 硤合 憲三 Kenso Soai
  10. オルガネラ選択的な薬物送達法:②小胞体・ゴルジ体・エンドソーム・リソソームへの送達

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2007年8月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

CIPイノベーション共創プログラム「有機電解合成の今:最新技術動向と化学品製造への応用の可能性」

日本化学会第106春季年会(2026)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「有機電解合…

CIPイノベーション共創プログラム「世界を変えるバイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第106春季年会(2026)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「世界を変え…

年会特別企画「XAFSと化学:錯体, 触媒からリュウグウまで –放射光ことはじめ」

放射光施設を利用したX線吸収分光法(XAFS)は、物質の電子状態や局所構造を元素選択的に明らかにでき…

超公聴会 2026 で発表します!!【YouTube 配信】

超公聴会は、今年度博士号を取得する大学院生が公聴会の内容を持ち寄ってオンライン上で発表する会です。主…

日本化学会 第104春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part II

さて、Part Iに引き続きPart II!年会をさらに盛り上げる企画として、2011年より…

凍結乾燥の常識を覆す!マイクロ波導入による乾燥時間短縮と効率化

「凍結乾燥は時間がかかるもの」と諦めていませんか?医薬品や食品、新素材開発において、品質を維…

日本化学会 第104春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part I

まだ寒い日が続いておりますが、あっという間に3月になりました。今年も日本化学会春季年会の季節です。…

アムホテリシンBのはなし 70年前に開発された奇跡の抗真菌薬

Tshozoです。以前から自身の体調不良を記事にしているのですが、昨今流行りのAIには産み出せな…

反応操作をしなくても、化合物は変化する【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか温度を測ること…

ジチオカーバメートラジカル触媒のデザイン〜三重項ビラジカルの新たな触媒機能を発見〜

第698回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院工学研究科(大井研究室)博士後期課程1年の川口…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP