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秋田英万 Akita Hidetaka

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秋田 英万(あきた ひでたか)は、日本の有機化学者である。千葉大学薬学研究院および東北大学薬学研究院・教授(兼任)。第22回ケムステVシンポ講師

経歴

1997年 東京大学 薬学部卒業
1999年 東京大学大学院薬学系研究科 修士課程修了
(指導教員:杉山雄一 教授)
2001年4月~2002年3月 日本学術振興会特別研究員(DC2
2002年 東京大学大学院薬学系研究科 博士課程修了
(指導教員:杉山雄一 教授)
2002年(4月~6月) 日本学術振興会特別研究員(PD
2002年(7月)~2006年 北海道大学大学院薬学研究科 助手
2007年~201011月  北海道大学大学院薬学研究院 助教
2010 12月~平成27年 北海道大学大学院薬学研究院 准教授
2016年 4月 千葉大学大学院薬学研究院 教授
2021年 4月 東北大学大学院薬学研究科 教授 (兼任)

受賞歴

・第13回コニカミノルタ画像科学奨励賞 (2007年)
・日本薬学会北海道支部例会奨励賞 (2007)
・日本薬剤学会第25年会 奨励賞 (2010)
・日本薬学会 奨励賞 (2011)
・日本DDS学会 奨励賞 (2013)
・第24回インテリジェント材料・システムシンポジウム 高木賞 (2015)
・平成26年度 北海道大学 研究総長賞 (2015年)
・平成27年度 北海道大学 研究総長賞 (2016年)
・日本薬学会 学術振興賞 (2020年)
・日本DDS学会 第13回水島賞 (2020年) 

研究業績

核酸を送達するための脂質様材料ssPalmの開発

近年、新たな遺伝子治療用モダリティーとして、mRNAに注目があつまっている。家族性アミロイドポリニューロパチーに対する、世界初となる RNAi 治療薬「オンパットロ点滴静注 2mg/mL」や、新型コロナウイルスに対するRNAワクチン「コミナティ筋注(ファイザーワクチン)」、「COVID-19ワクチンモデルナ筋注」(2020年)の承認もあり、今後、益々、脂質ナノ粒子を基盤としたRNA創薬研究は加速すると考えられる。我々は、国産の核酸医薬の開発に向け、これら分子を細胞質内に送達するための脂質材料として、SS-cleavable and pH-activated Lipid-like Material (ssPalm)を開発した。本材料は2本の疎水性足場を有し、脂質のように水中において自己組織化し、生理的pH環境では電荷的に中性なナノ粒子を形成する。さらに本材料には細胞内環境に応答する2種のユニットとして、第三級アミン構造とジスルフィド結合を搭載しており、それぞれエンドソームからの脱出と、細胞質内における自己崩壊(内封核酸の放出)に寄与する。

最近我々は、脂質の足場構造が免疫活性化能に影響することを見いだしている。特に、ビタミンEを足場としたssPalmEシリーズは、免疫活性化能が高い結果が様々な検討により得られており、DNAワクチンへと応用した。また、最近では、本知見をもとに、ビタミンEを足場とし、第三級アミン構造を環状骨格に固定したssPalmE-P4C2 (COATSOME® SS-EC)をRNAワクチン技術へと応用している(Nanomedicine. 14(8) :2587-2597 (2018)、Mol Pharm. 17(4):1237-1247 (2020))。一方、脂質の足場構造としてオレイン酸を足場としたssPalmOに関しては、静脈内投与や局所投与による核酸導入用脂質として推奨している。特に、還元環境に応答して分解産物として生成する還元型グルタチオンが、さらに自らの脂質構造を求核攻撃することで脂質を分解するような設計を施すため、自己分解性リンカーを挿入したssPalmO-Phe(COATSOME® SS-OP)を開発した。本分子は、静脈内投与により、mRNAだけでなく、siRNAやアンチセンス核酸を効率的に肝臓に送達させることができることを見いだしている (Adv Funct Mater. 30: 1910575 (2020))。

これら材料においては国内の材料メーカーより販売を開始している。様々な用途で利用され、新規核酸医薬の実現に少しでも貢献できれば幸いである。

ssPalmのラインアップ

 

リンパシステム内動態の解析

皮下組織に投与されたナノ粒子は血管壁を透過しにくいことから、血管系よりも、リンパ系へとより選択的に吸収される。このため、リンパ節のイメージングプローブやワクチンの技術開発に繋がる基盤技術としてナノ粒子の利用が有用であると考えられる。これまで、200 nm以下の、特に負電荷のナノ粒子が皮下からリンパ節に移行しやすいという報告がなされてきたが、リンパ節からそれに繋がる次のリンパ節への移行性に関しては評価が不十分であった。

そこで我々は、ナノ粒子のリンパ節とリンパ節間の動態を解析することとした。一方、皮下投与として汎用されている後脚への皮下投与においては、ナノ粒子は膝窩から腸骨リンパ節へと繋がる、体深部へと向かうリンパ流へ流れるため、リンパ節からリンパ節への輸送について、その動態を経時的に追うことは困難であった。そこで我々は、予め膝窩リンパ節を血管・リンパ管結紮下で除去することで、足裏皮下から鼠経リンパ節、さらには腋窩リンパ節という体表付近を流れるリンパ流を誘導したリンパ流改変モデルマウスを確立した。その結果、アニオン性の130 nmのリポソームが一次のリンパ節に留まることを明らかとした。リンパ節のフローサイトメトリー解析をした結果、アニオン性リポソームは辺縁洞および髄洞マクロファージによく取り込まれていることが明らかとなった。以上のことから、アニオン性粒子についてはマクロファージに取り込まれることによって一次リンパ節に滞留していることが示唆された。さらに我々は、皮下から所属リンパ節に蓄積しやすいという特性を、センチネルリンパ節の可視化技術として応用することとした。腫瘍組織内のヒアルロン酸がリポソームのリンパシステムへの移行を阻害していると考え、ヒアルロン酸分解酵素(HAase)とアニオン性リポソームを組み合わせた結果、センチネルリンパ節の可視化が可能となった。本知見は今後、癌免疫療法として応用できると期待している(Mol Ther. 29(1) :225-235 (2021))。

リンパ流改変モデルを用いたナノ粒子のリンパシステム内動態解析法

関連文献

  1. Tanaka H, Takata N, Sakurai Y, Yoshida T, Inoue T, Tamagawa S, Nakai Y, Tange K, Yoshioka H, Maeki M, Tokeshi M, Akita H. Delivery of Oligonucleotides Using a Self-Degradable Lipid-Like Material.  Pharmaceutics. 13(4):544 (2021)
  2. Tanaka H, Takata N, Sakurai Y, Yoshida T, Inoue T, Tamagawa S, Nakai Y, Tange K, Yoshioka H, Maeki M, Tokeshi M, Akita H. Cho R, Sakurai Y, Jones HS, Akita H, Hisaka A, Hatakeyama H. Silencing of VEGFR2 by RGD-modified lipid nanoparticles enhanced the efficacy of anti-PD-1 antibody by accelerating vascular normalization and infiltration of T cells in tumors Cancers. 12(12):3630 (2020)
  3. Gomi M, Sakurai Y, Okada T, Miura N, Tanaka H, Akita H. Development of sentinel lymph node imaging with a combination of hyaluronidase based on a comprehensive analysis of the intra-lymphatic kinetics of liposomes Mol Ther. 29(1) :225-235 (2021).
  4. Tanaka H, Takahashi T, Konishi M, Takata N, Gomi M, Shirane D, Miyama R, Hagiwara S, Yamasaki Y, Sakurai Y, Ueda K, Higashi K, Moribe K, Shinsho E, Nishida R, Fukuzawa K, Yonemochi E, Okuwaki K, Mochizuki Y, Nakai Y, Tange K, Yoshioka H, Tamagawa S, Akita H* Self-degradable Lipid-like Materials based on “Hydrolysis accelerated by the intraParticle Enrichment of Reactant (HyPER)” for Messenger RNA Delivery. Adv Funct Mater. 30: 1910575 (2020)
  5. Maeta M, Miura N, Tanaka H, Nakamura T, Kawanishi R, Nishikawa Y, Asano K, Tanaka M, Tamagawa S, Nakai Y, Tange K, Yoshioka H, Harashima H, Akita H* Vitamin E Scaffolds of pH-Responsive Lipid Nanoparticles as DNA Vaccines in Cancer and Protozoan Infection. Mol Pharm 17(4):1237-1247 (2020)
  6. Tateshita N, Miura N, Tanaka H, Masuda T, Ohtsuki S, Tange K, Nakai Y, Yoshioka H, Akita H*. Development of a lipoplex-type mRNA carrier composed of an ionizable lipid with a vitamin E scaffold and the KALA peptide for use as an ex vivo dendritic cell-based cancer vaccine. J Control Release.310: 36-46 (2019)
  7. Kawai M, Nakamura T, Miura N, Maeta M, Tanaka H, Ueda K, Higashi K, Moribe K, Tange K, Nakai Y, Yoshioka H, Harashima H, Akita H*. DNA-loaded nano-adjuvant formed with a vitamin E-scaffold intracellular environmentally-responsive lipid-like material for cancer immunotherapy. Nanomedicine. 14(8) :2587-2597 (2018)

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為せば成る。成るように成る

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関連リンク

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有機合成を専門とする教員。将来取り組む研究分野を探し求める「なんでも屋」。若いうちに色々なケミストリーに触れようと邁進中。

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